中〜高強度の身体活動量が多いほどアルブミン尿リスク減
身体活動の少なさは2型糖尿病患者におけるアルブミン尿や慢性腎臓病(CKD)のリスクと関連するとされるが、既報の多くは自己申告データに基づくものであり、診断初期の患者を対象に客観的指標で検討した前向き研究は限られていた。デンマーク・Odense University HospitalのThomas Norlén氏らは、2型糖尿病の新規診断例を対象に加速度計を用いて身体活動を評価し、その後のアルブミン尿の出現および進展との関連を4年間にわたり追跡。その結果、ベースラインにおける中〜高強度の身体活動(MVPA)量が多いほどアルブミン尿の有病率と新規発症率が低かったとJ Diabetes Complications(2025; 39: 109065)に報告した。(関連記事「CKD診断の尿アルブミン測定、非糖尿病でも高い費用対効果」)
客観的指標に基づく身体活動量とアルブミン尿との関連を検討
2型糖尿病はCKDの最大の危険因子の1つであり、アルブミン尿はその早期指標として位置付けられる。身体活動がCKDの予防因子であることはこれまでの研究で示唆されてきたが、多くは非糖尿病集団や自己申告による活動評価に基づいており、因果関係の解明には限界があった。
そこでNorlén氏らは、デンマーク全国規模の登録研究であるThe Danish Centre for Strategic Research in Type 2 Diabetesのコホートのうち、2型糖尿病と新たに診断された成人患者832例を対象に、加速度計を用いて身体活動量を測定した。参加者は背部と大腿部に加速度計を装着し、10日間連続で24時間の活動量を記録。MVPAと坐位時間を測定し、ベースラインおよび4年後の尿検査結果〔尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)〕と照合した。
MVPA 10分増でアルブミン尿リスクが低下
年齢、性、血糖管理状況、BMI、血圧、心血管疾患歴、腎保護薬の使用状況などを調整したロジスティック回帰分析の結果、MVPAが10分/日増えるごとに、ベースライン時点でアルブミン尿(UACR 30mg/g以上)を有するリスクは有意に低下した〔オッズ比(OR)0.82、95%CI 0.69〜0.98〕。さらに、アルブミン尿を有さなかった患者における4年後の新規発症リスクも有意な低下が認められた(同0.74、0.59〜0.94)。この傾向は特に65歳以上でより顕著だった。
一方、坐位時間の増加については、アルブミン尿の保有・発症との有意な関連は確認されなかった。
以上から、Norlén氏らは「新たに2型糖尿病と診断された患者において、ベースライン時点でのMVPAの高さは、アルブミン尿の保有および新規発症と逆相関を示した」と結論。また、MVPAの影響が高齢者においてより顕著であった点に注目し「運動習慣の早期確立が腎予後の改善に寄与することが示唆された。今後は運動の有効性を検証するための介入研究が求められる」と述べている。
なお、同研究は2型糖尿病の診断初期にアルブミン尿を把握することがCKDリスクの早期評価に有用である可能性も示唆しており、今後の診療における測定の意義をあらためて認識させる知見といえる。
(編集部)