米民主党内に不満広がる-政府閉鎖解除に向けた妥協で
41日間に及ぶ米連邦政府機関閉鎖の解除に向けた上院の表決で、民主党議員の一部がトランプ大統領から実質的な譲歩を得られないまま合意案に賛成したことを受け、党内で強い反発が広がっている。
カリフォルニア州のニューサム知事はこの決定を「降伏だ」と非難し、イリノイ州のプリツカー知事も「空約束だ」と切り捨てた。こうした不満の表明は議会内外の民主党関係者や活動家の間でも相次いでいる。
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進歩派非営利団体「ラン・フォー・サムシング」の共同創設者で、全米で数千人の候補者擁立を支援してきたアマンダ・リットマン氏は「彼らが何を考えているのか全く分からない」とし、「上から下まで本当に愚かだ」と語った。
一部の民主党議員は今回の合意内容への批判を超え、党を結束できなかったとしてシューマー上院院内総務への非難も強めている。進歩派のカンナ下院議員は「シューマー氏はもはや指導力を失っており、交代させるべきだ」とX(旧ツイッター)に投稿。「国民の医療保険料の高騰を止める闘いを主導できないのなら、一体何のために闘うのか」とコメントした。
シューマー氏は、民主党穏健派議員が共和党多数派とまとめた今回の合意案に反対すると表明したものの、穏健派のシャヒーン上院議員は、交渉過程でシューマー氏にも随時報告していたと説明した。
与野党対立が長期化する中、世論調査では政府閉鎖の責任を共和党にあるとする有権者が多数を占め、民主党は一時的に優勢に立っていた。ダフィー運輸長官の指示で全米で航空便の欠航が相次ぐなど、米史上最長となった政府閉鎖の影響は広がっている。トランプ政権が食料支援を巡る争いを連邦最高裁まで持ち込む決定を下したことも、政治的にリスクの高い賭けとみられていた。
民主党関係者の一部は、ニュージャージー、バージニア両州知事選やニューヨーク市長選など先週の選挙での民主党勝利について、政府閉鎖継続を巡る党の主張を有権者が支持した証拠だと指摘。トランプ氏自身も、政府閉鎖が共和党に選挙で不利に働いたことを認めていた。
しかし、医療保険補助金の延長を求める民主党の要求にトランプ政権が応じる気配はなく、民主党側が先週末に提案の一部を緩和しても進展はなかった。閉鎖長期化で民主党の主要支持層にも負担が広がっており、党内の穏健派が譲歩に転じたことで、議会指導部は難しい立場に追い込まれている。
下院民主党のジェフリーズ院内総務は、医療保険制度改革法(オバマケア)の補助金延長を引き続き求める方針を示した。ジェフリーズ氏は10日、「われわれは闘いを続ける」と発言。シューマー氏が指導力を発揮し、職にとどまるべきかとの記者団の質問には、「その通りだ」と短く答えた。
一方、上院民主党内では明らかに不満もくすぶっている。マーフィー議員はSNSへの投稿で、「忠誠や服従を強いるために痛みを利用する独裁者に立ち向かうのは難しい」と指摘。「屈すれば痛みが止まり『正常』に戻ると自分に言い聞かせることもできる。しかし、もはや『正常』など存在しない」と投稿した。
こうした状況にあって、シャヒーン氏は自身の家族からの異論にも直面した。同氏の娘で下院議員選への出馬を表明しているステファニー・シャヒーン氏は、今回の合意案が医療保険補助金を延長しない内容だとして、SNSで反対を表明した。
シューマー氏は10日、医療保険補助金が延長されないことで多数の米国民の保険料が急上昇する事態になれば、責任は大統領にあると強調し、焦点をトランプ氏に戻そうと努めた。
だが、こうした主張も民主党議員や活動家、左派系のコメンテーターからの批判を沈静化させることはできず、シューマー氏の指導力に限界があるとの見方を一層強める結果となっている。
米誌「アメリカン・プロスペクト」の共同創設者ロバート・カットナー氏はポーカーに例え、「シューマー氏や穏健派民主党議員は強い手札を持っていても、彼らはロイヤルフラッシュ(最高の手)を捨てるようなプレーヤーだ」と論じた。
原題:Democrats Trade Election Euphoria for Angst Over Shutdown Deal(抜粋)