韓国の前大統領夫人、ブランドバッグ授受など16事件巡り初の聴取…保守派反発「政治報復だ」
【ソウル=小池和樹】韓国の 尹錫悦(ユンソンニョル) 前大統領の妻、 金建希(キムゴンヒ) 氏(52)を巡る不正疑惑を捜査している特別検察官は6日、金氏に対する初めての事情聴取を行った。
6日、ソウルの特別検察官の事務所に出頭する金建希氏=AP特別検察官は金氏が尹氏の大統領権限を利用して様々な不正に関与したとみており、捜査は今後拡大する見込みだ。保守派は、左派の 李在明(イジェミョン) 政権による前政権に対する政治報復との見方を強めている。
金氏は6日、ソウル市内の特別検察官の事務所に出頭し、「国民に心配をかけて申し訳ない。捜査をしっかり受けてくる」と硬い表情で話した。金氏はこれまで健康問題などを理由に聴取に応じていなかった。
特別検察官は、金氏を巡って16の事件について捜査を進めている。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側からカンボジアでの事業に便宜を図るよう依頼され、見返りに高級ブランドバッグなどを受け取ったとされる事件については、すでに旧統一教会の元幹部が逮捕されている。
尹錫悦氏と金建希夫人(2023年)=伊藤紘二撮影金氏が大統領夫人だった2022年と24年に当時の保守系与党「国民の力」の国政選挙での公認候補選びに不当に介入した疑惑や、過去に輸入車販売会社の株価操作に関与した疑惑もある。韓国メディアは、金氏がいずれも主導的な役割を果たしたとの見方を示す。金氏は全ての容疑を否認する方針という。
金氏の事件は政界にも波及している。特別検察官は7月、「国民の力」の公認候補選び介入事件などで、「国民の力」に所属する複数の国会議員の国会事務所や自宅の捜索を行い、議員らの事件への関与を調べている。特別検察官は政府から独立した立場で捜査を進めるとされるが、李在明氏が6月の大統領就任直後に任命を決めたことから、「国民の力」は「李在明政権は『国民の力』を倒すことだけに没頭している。政治報復だ」と反発している。
別の特別検察官は尹氏による戒厳令宣布の捜査を進めており、7月には内乱を首謀した罪で公判中の尹氏について、職権乱用・権利行使妨害などの罪で逮捕、追起訴した。