世界中からオファーが続く“超リアル”な恐竜ショー 発想から20年超 諦めなかった2人の執念
世界初の超リアルな自立歩行恐竜という、恐竜型メカニカルスーツ「DINO-TECHNE」を生み出したON-ARTの金丸賀也氏と小塚明美氏。世界中から恐竜ショーにオファーが続出するまでの軌跡を2人に聞いた。AERA 2026年1月19日号より。
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リアリティーを追求し、まるで“生きているかのような恐竜”を創り出し、経済産業省内閣総理大臣表彰など数々の賞を受賞しているON-ART。博物館の仕事を受注する中、思いついたアイデアから成功まで20年以上かかっても諦めなかった思いとは?
金丸氏(以下、金丸):一番大きな恐竜はブラキオサウルス(全長13メートル)、次にスコミムスやティラノサウルス、トリケラトプスなど、現在37頭を製作し活動中です。
20年前に初めて作った恐竜はアロサウルスで全長6メートル、重さはバッテリーなど含めて約50キロ。技術改良を重ね、今は同サイズで1頭25キロほどにできました。恐竜の中でパイロットが操縦を行っているのですが、本体の重量を減らし操作機構を改新したことで、機敏な動きができるようになりました。そのおかげでリアリティーが上がり演出内容にも広がりが持てるようになり、幅広い年齢層に向けたライブイベントが数多く行えるようになったのです。
リアリティーを追求
金丸:東京芸術大学のデザイン学科を卒業して、NHKの美術部に採用されて大河ドラマなどを担当していました。けれど、当時大学の仲間と組んでいたバンドが海外で評価され、本腰を入れるために3年で退職。1989年、ベルリンの壁が崩壊する年に、カナダやニューヨークでライブを行い、デンマークでは北欧最大の音楽フェス、「ロスキレフェスティバル」にも呼ばれ、数千人が集まる大舞台で演奏したこともあります。この経験から、挑戦することの面白さや、言葉が通じなくても音楽は国境を超えて人々と共感できることを学び、世界で通用するエンターテインメントを作ることを常に意識し始めました。
小塚氏(以下、小塚):金丸と同じ大学で、バンドに誘われて付き合うようになりました。音楽だけでは食べていけないので、造形や壁画製作の技術を生かし、博物館の展示物を作る仕事などをしていました。ある時、キノコを作ってほしいと依頼されました。2人とも山や野の花が大好きなのですが、当時の博物館の展示品は映像が多くて面白みがなく、来館者に興味を持ってもらうには実体のあるリアリティーが大事だと提案して、キノコの傘やひだの質感から色までこだわり、かつ丈夫で軽い素材や物を作るための製作の技法から考え作らせてもらい、それがとても好評でした。
自然や科学に興味を持ってもらうきっかけになってほしいという思いから、本物近くまで表現を追求し体験していただく。これが、恐竜作りの原点です。
金丸:2000年初頭にコンピューターによる出力が台頭して、壁画などの仕事が激減しました。持っている技術を生かせる策はないかと探していたとき、博物館に展示してある巨大な恐竜が動き出し、映画「ジュラシック・パーク」の世界に入ったような、スリリングな体験ができたら面白いのではないかと思いついたんです。リアルとエンタメの両方を実現できれば、博物館にもっとお客が来てくれる。この閃きに可能性を感じ独学で恐竜を研究し、仕事の合間にコツコツと作り始め、稼いだお金はほぼ開発費にあてて、足かけ5年かけて1頭目を完成させました。
東京国立博物館の敷地を“生きているかのような恐竜”が練り歩く「恐竜大夜行」。百鬼夜行絵巻から構想を得て誕生した(撮影:写真映像部・東川哲也)Page 2
金丸:単にリアルに作るだけでなく、「どう見せるか」まで考え抜く発想力が大事でした。それに気付くまでが長かったです。
05年に会社にしましたが、仕事は全くなかった。小塚が新聞社に飛び込み営業をし、ようやく、07年に開催された「恐竜大陸」の展覧会のオープニングに採用され、200人の学者の前で披露することになったのですが、初めは非難されるかもしれないと冷や汗ものでした。しかし、リアルに恐竜が動くのを見るのは初めての人ばかりで、一気に注目されました。
小塚:それからも山あり谷ありが続いて、この仕事で食べていけるようになるまで10年以上かかりました。製品は良くても発注してくれるところがない。死の谷を3回は見ました(笑)。
金丸:17年に初めて本格的なショー「DINO SAFARI」を開催。少しずつメディアにも取り上げてもらい、ショーも大きくなっていきました。徐々に博物館の学芸員や専門家から学術的な監修も受けるようになり、質感や皮膚のシワ、骨格、筋肉の動きに至るまで徹底的にこだわることで、恐竜が次第に自然な動きになり、生物として必然性のある姿に近づいていきました。
最新の研究を参考に、トリケラトプスは化石の知見をもとに棘や鱗を再現、ティラノサウルスも、羽毛の有無で複数頭作っています。想像やデフォルメしている部分も多くありますが、咆哮は喉の太さなどからある程度推測して、ライオンとか、ゾウとか、猛獣系の動物の啼き声を、何種類も混ぜ合わせて加工して生き物らしさを表現しています。
世界に通用する前に
金丸:国内外のお客から「食べられるかと思った」と感想をいただくことが多いのですが、言葉や情報、知識ではなく、私たちのショーには、「生きている存在」を目の当たりにし、体感することでしか生まれない感動があります。
最初は恐竜でショーを作ることの目的が漠然としたものでしたが、深く感動する力が、このショーにはあると思います。この力は、人の心を豊かにしてくれると信じ、今後は世界で挑戦していきます。
(構成/ライター・米澤伸子)
ON-ART金丸賀也氏(左)と小塚明美氏が生み出した、リアル恐竜ライブショー「DINO-A-LIVE」(撮影:写真映像部・東川哲也)※AERA 2026年1月19日号
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