人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立て続けに粛清した「本当の理由」(ニューズウィーク日本版)

中国政界に激震が走った。 中国人民解放軍の制服組トップである張又侠(チャン・ヨウシア)中央軍事委員会副主席と、劉振立(リュウ・チェンリー)連合参謀部参謀長が、当局の調査対象となり、職務から外されたのだ。 【動画】元CIA高官が語る、習近平による人民解放軍最高幹部粛清の「真相」 これは、習近平(シー・チンピン)国家主席による、強力なライバルへの反クーデターなのか?それとも、15年にわたる反腐敗キャンペーンの一環として、汚職を一掃し、台湾への武力行使の可能性を排除しない中で、人民解放軍を強化するための動きだったのか? 今回の粛清により、現在の中央軍事委員会の構成員は、習と、その「執行者」である規律検査部門トップの張昇民(チャン・シェンミン)のわずか2人となった。 軍の最高権力機関である中央軍事委員会に、たった2人しかいなくなったというのは、習による極度の権力集中の証左だ。 毛沢東でさえ、軍事委員会には5人のメンバーを置いていた。人民解放軍は中国共産党の軍隊ではあるが、伝統的に一定の自律性も与えられてきた。中央軍事委員会は、共産党と人民解放軍の橋渡し役だ。 また、中央軍事委員会は共産党が政治的統制を貫く場でもある。習近平は中央軍事委員会の主席であり、張又侠はその筆頭副主席、事実上のナンバー2だった。

中国国防部は24日、張又侠と劉振立が「重大な規律違反および法律違反」により調査対象となったと述べた。 その後、人民解放軍の機関紙『解放軍報』が、両名の「重大な」汚職を非難する社説を掲載した。この社説は、習近平自身の承認を得たとみられる。両名の失脚の背景には、政治的な要素が見え隠れする。 同紙は中央軍事委員会内での権限の配分に言及。両名が「中央軍事委員会主席責任制を深刻に踏みにじり、破壊した」と述べた。 他にも、「全軍将兵の団結と前進の政治的・思想的基盤を深刻に損ない、攻撃した」とされ、その調査は「政治的基盤の是正をさらに進め、思想上の毒素と邪悪を一掃する」ためのものだという。 習は、かつて国家防衛相だった李尚福(リー・シャンフー)など、数多くの高官に対して繰り返し粛清を行ってきた。そのため、「習が圧力を受けているのではないか」との憶測が長年にわたり飛び交っていた。 「中国のシステムは非常に硬直的だ」と語るのは、ローマ拠点のシンクタンク、アッピア研究所所長であり、30年間中国に滞在したフランチェスコ・シスチだ。この硬直性ゆえに、「暗黙のルール」が破られると目立つという。 「将軍数十人が降格または調査対象となるような大規模粛清が行われている場合、それは捨て置ける話ではない。極めて重大なことがあったに違いない。だから私は、クーデター未遂があったのではないかと推測した」 あくまで解釈の1つではあるが、シスチの推測が正しければ、習近平の行動は「反クーデター」ともいえる。

ニューズウィーク日本版
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