米下院、トランプ税制法案の修正案を僅差で可決-上院に送付
米下院は22日朝、トランプ大統領が推進する大型の税制・歳出法案の修正案を可決した。共和党内の激しい対立を乗り越え、年末の増税を回避する数兆ドル規模のパッケージが成立に向けて前進したが、米政府の債務負担は増加する。
法案はこれで上院に送付される。上院では共和党の一部議員が広範な修正を要求しており、採決は8月までに行われる見通し。
修正案には米国の債務上限を4兆ドル(約574兆円)引き上げる条項も盛り込まれている。それがなければ、8月か9月にもデフォルト(債務不履行)を強いられる恐れもあると財務省は予測しており、悠長な時間はない。
下院での採決は賛成215票に対し、反対が214票と僅差だった。トランプ氏は米議会を訪れ、深夜まで電話して議員らを説得し、それでも賛成を渋る議員をホワイトハウスに呼び出すなど可決に向けて働き掛けていた。ホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)は、法案に不支持を貫く共和党議員を「究極の裏切り」と非難する文書を発表していた。
ジョンソン下院議長とその側近は議場の外で協議を繰り返し、州・地方税(SALT)控除の上限引き上げを求める高税率州選出議員の調整を図ろうとした。一方、保守強硬派は大幅な歳出削減を主張し、支持基盤の弱い激戦州出身の議員はメディケイド(低所得者向け医療保険)削減に懸念を表明した。
ほぼ100年ぶりの大幅な関税引き上げの影響に米経済が苦しむ中で、今回の法案が成立すれば、経済成長への打撃の緩和にはなる。ただ、米国の財政赤字は毎年数千億ドル増える見通しだ。
今回の法案では、今年末に期限が切れる予定のトランプ政権1期目の減税を延長。また、SALT控除の上限を4万ドル(約575万円)に引き上げ、チップと残業手当を一時的に非課税とする。
一方、メディケイドやフードスタンプ(食料費補助措置)など低所得者向けプログラムは削られる。減税の最大の恩恵を受けるのは富裕層で、経済格差は一段と拡大する恐れがある。
減税による財政悪化は、投資家が抱く米国の債務膨張懸念を強める危険性もはらむ。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は22日、FOXビジネスに対し、「市場はもう幾ばくかの財政規律を求めている」と発言。下院での可決を受けて米30年債利回りは5.15%と、2023年10月以来の高水準を付けた。
原題:Trump Tax Bill Narrowly Passes House, Overcoming GOP Infighting(抜粋)
*US 30-YEAR YIELD RISES TO 5.15%, HIGHEST SINCE OCTOBER 2023