ビットコイン最高値で資産急増、バイナンス創業者らに強力な追い風

今から２年前、サム・バンクマンフリード被告が創業したＦＴＸの突然の経営破綻を受け、暗号資産（仮想通貨）で巨額の富を築いた世界有数の資産家は、予想される規制の強化から資産を守ろうと必死になっていた。

　　12日にビットコインが急伸し最高値を更新したことは、彼らの運命がいかに急速に変化してきたかを示している。そうした超富豪の資産は2022年末以降に約700億ドル（約10兆8000億円）増加。資産の伸びは、ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利にも後押しされた。ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、資産の回復が最も大きいのは暗号資産交換業者バイナンス・ホールディングスの趙長鵬最高経営責任者（ＣＥＯ）で、資産額は約490億ドル膨らんだ。

　　ＦＴＸ破綻の際にこのような劇的な展開を予測できた人はほとんどいなかっただろう。趙氏はサイバー犯罪者やテロ組織による取引を容認した罪で起訴され、今年４カ月の禁錮刑に服した。

　　米大統領選以降、ビットコインは最高値を更新し続け、12日には８万9000ドルを突破した。トランプ次期大統領の下でのデジタル資産ブームに期待が広がった。

　　トランプ氏のビットコイン支持のスタンスは、厳しい姿勢で臨んでいるバイデン現政権とは対照的だ。米証券取引委員会（ＳＥＣ）のゲンスラー委員長は、仮想通貨業界では詐欺や不正行為が横行していると繰り返し批判してきた。トランプ氏は７月、自身が再び大統領に就任した場合はゲンスラー氏を解任し、仮想通貨に理解のある規制当局者を選ぶと公約していた。

　　仮想通貨で資産が特に大幅に増加した資産家は以下の通り。資産の増加幅はブルームバーグ・ビリオネア指数に基づく。

趙長鵬氏

　　バイナンスの共同創業者でもある趙氏の資産額は11日時点で616億ドル。22年以降に490億ドル増加した。世界の長者番付は23位。

　　趙氏は、ビットコインの最高値更新について今週Ｘ（旧ツイッター）で「ようやくキャズム（溝）を乗り越えつつある」と記した。

マイケル・ノボグラーツ氏

　　ギャラクシー・デジタル・ホールディングスの創業者であるノボグラーツ氏は今週、純資産が56億ドルに増加。22年末から38億ドルの増加となる。

　　同氏は先週、「われわれは多くの仮想通貨を所有しているが、当社のフランチャイズはフル稼働で運営していた。米国内外の相手との取引や融資、デリバティブデスクだ」とし、「われわれがこれまで取り組んできたことが全て肯定されたような気分だった」と述べた。ノボグラーツ氏は、大統領選では民主党候補のハリス副大統領を支持していた。

ブライアン・アームストロング氏

　　コインベース・グローバルの共同創業者であるアームストロング氏の純資産は22年末以降に10倍近く増え、今週140億ドルに達した。

　　同氏は11日、Ｘに「コインベースの使命は考えられているより広範だ。それは世界における経済的自由の拡大だ」としつつ、「大半の場合において、これは仮想通貨を利用し金融システムをアップデートすることを意味する。だが時として、悪い政府を押しのけることも意味する」と記した。

ウィンクルボス兄弟

　　双子の兄弟であるキャメロン・ウィンクルボス、タイラー・ウィンクルボス両氏は米大統領選に多額の資金を投じた。キャメロン氏は６月、ビットコインで100万ドル相当をトランプ氏に献金したと明かした。またトランプ氏がゲンスラー氏解任の意向を示したことについて、ソーシャルメディアに投稿した。

　　現在の純資産額は兄弟それぞれ50億ドル。22年以降、資産はほぼ倍増している。

　　タイラー氏は11日にＸで、ビットコインの見通しについて「足かせは外れた。もうすぐ10万（ドル）だ」と記した。

原題：Novogratz, Winklevoss Twins See Wealth Surge on Bitcoin Revival（抜粋）