「AI精神症」とは何なのか? 専門家が語る新たな“心の危機”の実態
『WIRED』が話を聞いた精神科医・研究者たち全員が、臨床家たちはAI精神症に関しては実際のところ、当て推量で対処しているところだと語っていた。この問題を理解するための研究と、ユーザーを守るための防御措置が切実に必要だと彼らは話す。「精神科医たちは深く憂慮しており、助けになりたいと思っています」とトーラスは言う。「ですが、目下のところはデータもファクトもあまりに少ないため、実際に何が、なぜ、どれほど多くの人に起きているかを完全に理解するのは困難なままです」
AI精神症という分類の行方については、大部分の専門家が既存のカテゴリーに統合されるものと予想している。それはおそらく、妄想のリスク因子もしくは増幅因子としてであり、独立の疾患とされることはないだろうという。
だが、チャットボットの利用がますます広まるなか、AIが関与する精神疾患と従来の精神疾患の境界は曖昧になるだろうと感じる専門家もいる。「AIがどこにでも存在するようになれば、精神病性障害を発症しつつある時にAIを頼る人々もどんどん増えていくでしょう」とマッケーブは話す。「すると、妄想を抱えた人々の大多数がその妄想について(精神科医よりも先に)AIに相談してしまい、その結果、なかには妄想が増幅されてしまう人も出てくる。そんな状況が生じることでしょう」
「ですから、こういう問いが生まれます──『妄想』と『AI妄想』の境界はどこにあるか、と」
(Originally published on wired.com, translated by Satomi Tsuboko, edited by Mamiko Nakano)
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