宇宙の多様性を手に取るよう「ルービン天文台」の初画像
女性天文学者と聞いていつも思い浮かべるのは米国のベラ・ルービンさん(1928~2016年)だ。有名な天文台が女性研究者を門前払いするような時代に道を切り開き、アンドロメダ星雲の回転速度を観測し、宇宙に謎の暗黒物質(ダークマター)が満ちていることを1970年代に最初に確認した。
何度か取材依頼をしたが、体調を崩していて、かなわなかったのが今も残念だ。
そのルービンさんの名前を冠した「ベラ・C・ルービン天文台」が今年6月、最初の画像を公開した。
さまざまな画像は、以下のリンクからみることができる。一般市民が画像を楽しめる「スカイビューワー」も公開している。日本語版も公開予定だ。
天文台は天体観測の好地である南米チリのセロ・パチョン山頂、標高約2700メートルの高地に20年かけて建設された。今後10年かけて、「LSST(Legacy Survey of Space and Time、宇宙と時間の遺産調査)」と名付けられたビッグプロジェクトを進める。
公開された初画像は、一見、ハッブルやウェッブなどの宇宙望遠鏡が撮像した美しい天体画像のようにもみえるが、それだけではない。実は、ルービン天文台の特徴は、これらの宇宙望遠鏡とは大きく異なっているのだ。
ハッブルやウェッブ望遠鏡より大きな視野
宇宙望遠鏡は絞り込んだ天体を詳細に撮像するのが得意だが、ルービン天文台の得意技は、「超広視野」の撮像と、天体の時間的変化をみる「時間領域天文学」だ。
口径8.4メートルの光学赤外線望遠鏡と32億画素を誇る世界最大のデジタルカメラを組み合わせ、満月45個分に相当する空を一度に観測できる。ハッブルやウェッブ宇宙望遠鏡の視野よりはるかに大きい。
ひとつの視野の撮像にかかる時間はわずか30秒。望遠鏡は5秒で次の視野へ移動できるので、およそ3日間で天文台から見える全天の画像を撮ることができる。
これを繰り返すことで…