中国の軍事研究者がOpenAIやAnthropicのAIモデルを抽出して国内の軍事システム開発に利用していたことが判明
中国の軍事研究者らが、OpenAIとAnthropicが開発したアメリカの主要なAIモデルの出力を利用して、中国の防衛能力を向上させるための国内AIシステムをトレーニングしていることが中国の学術論文および特許の調査から明らかになりました。アメリカ政府は中国への高度なチップ輸出規制やその他の戦略技術へのアクセスを制限していますが、中国のAI研究者らは「知識蒸留」と呼ばれる手法により、高性能なアメリカ製AIモデルの能力をより小型で安価な中国産モデルへ移し替えていたとみられています。
Chinese Research Details Distillation for Military Use - Jamestown
https://jamestown.org/chinese-research-details-distillation-for-military-use/EXCLUSIVE: Chinese military researchers tap US AI models to train defence systems | Reuters https://www.reuters.com/world/asia-pacific/chinese-military-researchers-tap-us-ai-models-train-defence-systems-2026-07-31/
ワシントンD.C.に拠点を置くジェームズタウン財団が報道機関に独占的に提供した資料では、中国の人民解放軍やその他の軍事機関に関係する研究者らは、OpenAIやAnthropicのAIモデルの出力を利用して、中国国内で利用できるAIモデルの開発・訓練に利用していたことが示されました。ジェームズタウン財団は「蒸留は、中国のAIモデルの発展に不可欠な要素となっています。2024年から2026年にかけて発表された中国の学術論文や産業界の論文では、敵対的蒸留を含む蒸留の実施方法が詳細に説明されており、世界最高水準のモデルに匹敵する能力を構築するために、どのような組織が蒸留に関与しているかも明らかになります」と指摘しました。
蒸留によって構築された中国国内のモデルは、監視システムなどの公共安全用途、および軍事作戦やサイバー作戦において既に利用されているか利用が提案されているとのこと。蒸留が用いられた具体的なモデルとして、ジェームズタウン財団は中国のAI企業・Moonshot AIが2026年7月にリリースした「Kimi K3」を挙げています。Kimi K3はAnthropicのClaude Fable 5やOpenAIのGPT-5.6 Solに匹敵する性能を持つとされ、新規サブスク加入を一時停止する事態になるほど人気を集めました。しかし、ホワイトハウス科学技術政策局のマイケル・クラツィオス局長は「Kimi K3は、AnthropicのClaude Fableを蒸留したという情報をつかんだ」と発表しています。
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中国の研究者らが利用したとされる「蒸留」とは、大規模な「教師」モデルの出力を利用して、より小規模で安価な「生徒」モデルをトレーニングする手法を指します。教師モデルが生成した回答や推論結果を学習データとして利用することで、高性能なAIの能力の一部を比較的少ない計算資源で再現できるため、開発コストを大きく削減できます。しかし、OpenAIやAnthropicは自社のクローズドAIモデルを無断で蒸留に利用することを利用規約で禁止しているほか、アメリカのモデルが蒸留によって中国の軍事および公共安全分野で使用されている可能性があり、こうした蒸留の悪用は「敵対的蒸留」と呼ばれます。また、敵対的蒸留では、元のモデルに組み込まれていた安全対策が維持されていない可能性も懸念されています。
ジェームズタウン財団がレビューした学術論文および産業論文は、中国の組織が蒸留技術に問題のあるアプローチをとっていることを示す強力な証拠を提供しているとのこと。さらに、中国の学術誌や軍事誌は欧米の学術出版と同様に内部審査と出版のサイクルで1~2年かかることから、確認できる敵対的蒸留の証拠は2023年~2024年の最先端モデルに対して実施されたものであり、「氷山の一角に過ぎず、現在進行中の実態ではなく公開された研究から確認できた過去の事例にすぎない」とジェームズタウン財団は述べています。
例えば、中国科学院の研究者らが率いる研究チームは、さまざまな中国のモデルに対して「自身をどのようなモデルと認識しているか問う実験」を実施しています。実験の結果、Alibabaの「Qwen-Max」は「Anthropicによって作成されたAIアシスタント・Claude」と自己認識し、DeepSeekの「DeepSeek-V3」は「OpenAIによって作成された」と回答したことが報告されています。
さらに、ジェームズタウン財団の提供したデータからロイターが特定した事例研究では、北京にある軍事情報・サイバー戦争部隊である中国人民解放軍第96941部隊の研究者らが発表した論文において、機密性の高い軍事ソースコードを処理するためにOpenAIのGPT-3.5を使用したと記されています。論文によると、サードパーティ製のモデルは機密情報の取り扱いには不向きであることから、研究者らはGPT-3.5を用いてソフトウェアコードを要約し、その要約に基づいて中国軍のネットワーク内で完全に動作する国内モデルをトレーニングしたとのこと。一方で中国の開発者たちは、自国のAI技術の進歩が外国のモデルに依存しているという主張に反論しています。「AnthropicのClaude Fableを蒸留した」と指摘されたKimi K3を開発したMoonshot AIは疑惑を否定し、蒸留法ではなく独自技術によって開発したと主張しました。
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