宮城4区の勝敗は「SNS選挙」で決まったのか 自民・森下氏vs中道・安住氏の衆院選12日間を検証<かほQチェック>

支持者から花束を受け取り笑顔で握手をする森下氏=8日午後8時10分ごろ、宮城県石巻市中里の事務所(庄子徳通撮影)

 8日投開票の衆院選宮城4区は、自民党前議員の森下千里氏(44)が圧勝した。1996年から連続10期を重ねた中道改革連合前議員の安住淳氏(64)に4万5000票余りの大差を付けた背景に、交流サイト(SNS)上の攻防は影響したのだろうか。ユーザーローカル社の分析ツール「ソーシャルインサイト」を使って12日間の選挙戦を検証した。

 森下、安住両氏と4区に立った参政党新人の佐野誠氏(41)のXアカウントについて、公示日の1月27日から2月7日までの状況は表の通り。公示前から10万人超のフォロワーを擁した森下氏は、期間中に新規で1万2403人を獲得した。公示2週間前からXの運用を始めた安住氏は7日時点で2万6003人のフォロワーを集めたが、期間中の増加は3295人にとどまった。

 投稿の表示数は森下氏が2393万4474回で、安住氏は1569万2426回。森下氏は「宮城が大好き」「私はあきらめない」などと支持を訴えるビデオメッセージ6本をアップし、150万回以上再生された話題作もあった。

 安住氏は序盤、足を組んでクリームパンを食べたりポケットに手を入れて演説したりする動画が「態度が悪い」などと批判され、終盤まで尾を引いた。終盤にかけて演説の様子や地元への思いを語る内容を増やしたが、森下氏ほどの反響はなかった。

 安住氏は過去に発覚した政治資金収支報告書の不記載額を「数百万」と発言した元テレビ記者のユーチューブ動画の切り抜きが拡散。事実は30万円の不記載で訂正後も収入総額は変わらない書類の抜け落ちが原因の不記載だったが、安住氏を「裏金議員」と冷やかす投稿が散見された。

 森下氏も終盤にかけ、過去に出演したユーチューブ番組の切り抜き動画がX上で広がった。出演者から食料自給率の意味を尋ねられた森下氏が回答に窮した場面が取り上げられ、「無能だ」などとバッシングする投稿が急増した。与野党の支持者が互いにX上でののしり合う大荒れ状態となった。

安住氏のXフォロワーは「立民少なめ」

 森下氏のXフォロワーがどの政党の公式Xをフォローしているか傾向を調べると、8日時点の最多は日本保守党の27・6%で、自民の19・5%を上回った。次いで多いのは参政党の10・8%で、フォローなしは20・0%だった。

 安住氏はトップが中道の33・2%で、公明党15・6%、立憲民主党9・5%と続いた。フォローなしは27・9%。安住氏のXの運用開始は1月14日で、まだ日が浅い事情を踏まえると、元々の立民フォローのXユーザーは中道結党後の安住氏のSNS上の動向にあまり関心を示さなかったとみられる。

安住氏の支持基盤にトレンド変化

 安住氏は落選が決まった8日夜、中継を結んだ石巻市内のホテルに集まった支持者に「SNSの誹謗中傷を含め大変な状況になってしまった。認識が甘かった」と釈明した。

 直近の国政選挙のデータからは別の側面も浮かび上がる。

 宮城県の小選挙区が6から5に減り、区割りも変更された2024年衆院選は、自民派閥による政治資金収支報告書の不記載問題が焦点となり、安住氏が所属する立憲民主党は4議席を奪取した。県内の比例代表は自民がトップだったが、立民の得票率は自民に3・1㌽差まで肉薄。全国平均の5・5㌽差よりも詰め寄り、変わらぬ「民主王国」の支持の分厚さを示したかにみえた。

 ところが、25年参院選でトレンドが変わる。宮城選挙区では立民現職が自民新人を大差で退けたが、4区内の立民の比例票は落ち込み、自民との差は8・9㌽に拡大した。今回の衆院選ではさらに広がり、17・2㌽に達した。

 安住氏の支持基盤の弱体化が、中道の結党前から始まっていた可能性がある。

「孫や子どもを見る目で森下氏を応援」

 森下氏は旧宮城5区に初めて立候補した21年の衆院選以降、石巻市を拠点に「つじ立ち」を日課にした。安住氏への支持が厚かったはずの高齢世代が「孫や子どもを見る目で森下氏を応援している」(立民県議)状況が各地で生まれていた。

 選挙戦終盤の今月4日、塩釜市であった森下氏の集会に出向いた80代女性は「こんなに熱意、努力を感じる人は初めて。私も県外出身だから知らない土地で頑張る大変さが分かる」と評価した。森下氏を知ったきっかけを尋ねると「20代の孫が熱心に応援していて、関心を持った。出先で森下さんの『つじ立ち』を見かけて一緒に写真を撮ったこともある」と話した。

 こうした現状に安住氏の陣営が気付き、危機感が広がったのは投開票日の5日前だった。最終盤は本人が選挙区に張り付いて支持を訴えて回ったが、形勢逆転とはならなかった。

 陣営を支えた公明幹部は「期数を重ねて後援会が高齢化し、自分は党務で地元に戻れなくなる悪循環。ベテランによくある負けパターンでもある」と振り返った。

街頭でドライバーに手を振る森下氏=9日午前7時35分ごろ、石巻市恵み野3丁目

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