コラム:大統領選「出馬禁止」、ルペン氏判決で混迷深まる仏政治
[ベルリン 31日 ロイター Breakingviews] - フランスの裁判所は、極右政党、国民連合(RN)の指導者マリーヌ・ルペン氏の被選挙権を5年間停止し、2027年大統領選への出馬の道を閉ざした。この決定は、すでに膠着状態にある議会と、不人気な大統領を抱えるフランスの政治的混迷をさらに深めることになるだろう。そして、バイル首相率いる少数与党の政権が膨れ上がる公的債務を抑制するために必要な決定を下すことをさらに困難にするだろう。
ルペン氏は31日、欧州連合(EU)からの公金不正流用で有罪とされ、被選挙権を5年間停止された。裁判所は、同氏が欧州議会議員だった当時、偽装雇用契約システムを構築して欧州議会の資金400万ユーロ以上を不正にRNに流用していたと認定した。ルペン氏は判決を不服として控訴する構えだ。
次回の大統領選から、最有力視されている候補者が法的に排除されれば、今後2年間のフランスの政治論争には悪影響が出るだろう。ルペン氏とRN支持者らは、自分たちは、主流派の政党によって政治ゲームから排除されてきた「システム」の犠牲者だと長い間主張してきたが、この主張はより説得力を増すだろう。ルペン氏らはまた、バイル首相自身も昨年、証拠不十分で無罪になったとはいえ、同じような容疑をかけられていたことを指摘するだろう。
ルペン氏の政治的運命は、フランスの司法制度、控訴プロセスの迅速さにかかっているが、仏司法制度の動きは遅いことで知られている。控訴裁判所が判決を下すまでの数カ月間は不確実性が増し、その間、彼女には怒りを維持するのに十分な動機がある。
ルペン氏がバイル政権を倒す力には限界がある。フランス議会の577議席のうち、RNはわずか142議席を占めているだけだ。だが、右派がより敵対的になって法案成立を妨げ、バイル政権を左派の社会党にさらに依存させることは可能だ。そうなれば、年末までにGDPの120%に達すると見込まれる債務の削減や、軍事力増強に必要な年間400億ユーロ(約6兆5千億円)の追加予算の捻出は難しくなる。そして、政治的混乱により国債利回りは高止まりし、経済と財政に悪影響を与えるだろう。ドイツの大規模な景気刺激策を受け、10年物の国債はすでに3.4%と、2023年以来の水準に戻っている。
ルペン氏と党が抱く憤りは、今後2年間のフランス政治に悪影響を及ぼすだけではない。もし彼女が2027年の選挙に出馬できず、党の候補者が敗北するようなことがあれば、次のフランス大統領にはその任期中、政治的正当性への疑念が常につきまとうことになる。31日の判決がもたらす悪影響は、何年にもわたって続くかもしれない。
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
Pierre Briançon is a Breakingviews columnist, writing on European business and economics. He was previously a writer or editor at Barron’s, Politico, and Breakingviews for a first stint as Paris correspondent and European editor. For the first part of his career he was a foreign correspondent and editor at Libération, the French newspaper. He was also an economics columnist for Le Monde and for French public radio.