ひろゆき×進化生態学者・鈴木紀之のシン・進化論②「ビッグダディは進化生物学的に見て優れている⁉ 『適者生存』や『進化』から考える少子化問題」【この件について】
ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。進化生態学者の鈴木紀之先生をゲストに迎えた2回目です。 「『適者生存』は、実は進化論の父といわれるダーウィンが作った言葉ではありません」と語る進化生態学者の鈴木紀之氏 生物は〝適者生存〟によって進化してきた......だけではないようです。そして、人間は文化の影響が遺伝的な影響を上回ってしまうかもしれないという話です。 *** ひろゆき(以下、ひろ) 早速ですが、人類は「後天的に獲得した〝文化〟を次の世代に伝えていく」ということを繰り返していますよね。これは〝遺伝〟とは違う面白い現象だと思うんですよ。 鈴木紀之(以下、鈴木) はい。人間の場合は「親から子へ」あるいは「社会全体で次世代へ」という文化の伝達が多く見られます。すると、ある習慣が遺伝子によって伝わったのか、それとも文化として伝わったのかの区別が難しいケースがあります。 それに文化は生物学的な現象ではありませんが、生物と同じように〝進化〟します。例えば、ある地域で発明された土器の作り方が改良されては、交易や移住によってほかの地域に広まっていく。これは遺伝子とは関係ない進化と言えます。 ひろ 例えば、サルのグループで道具を使うことを覚えたグループと覚えなかったグループがいたとします。そして、そのふたつのグループは、まったく同じDNAを持っていた。親が道具を使うのを見た子供がそれをまねすれば、そのグループ全体の生存能力は高まりますよね。DNAとは別の要因で生存に有利なグループができるということです。 もし、その道具を使うグループが、たまたまみんなブサイクだったら、後世の人は「ブサイクという形質が生存に有利だったんじゃないか!?」と誤解する可能性があるわけです。 鈴木 そうですね。遺伝子の進化と文化の進化は別のレイヤーで起きています。そして、文化的な要因が遺伝的な性質に影響を与えているように見えることはあります。 事実、私たちホモ・サピエンスが今、地球上で繁栄している理由もそうかもしれません。身体能力ではなく、文化的な能力に長けていたからという可能性があるんです。もしかしたら身体能力だけ見れば、滅びていった別の人類のほうが強かったかもしれません。一般に〝進化〟というと、強い者が生き残るというイメージですが、現実はもっと複雑です。 ひろ 地球上には、かつてネアンデルタール人がいたけれども、ホモ・サピエンスが生き残った。「ホモ・サピエンスは能力が高いから生き残った」と言われれば〝適者生存〟で納得できますが、実際は「そんなに能力は変わらなかった」と言われると「それって適者生存じゃなくね?」と感じてしまいます。 鈴木 〝適者生存〟という言葉は進化を表現する上でわかりやすいんですが、実は進化論の父といわれるチャールズ・ダーウィン自身が作った言葉ではありません。同時代の哲学者ハーバート・スペンサーが名づけたもので、進化の複雑なプロセスを正確に反映しているとは言えないんですよ。