ボッタクリ」の素顔 [韓国記者コラム](KOREA WAVE)
【10月25日 KOREA WAVE】ソウル・明洞の中心部。外国人観光客で賑わうK-POPグッズ専門店の店内には、アイドルのアルバムや応援スティック、フォトカード、フィギュアが所狭しと並んでいた。その一角で目を引いたのは、ネットフリックスのアニメ作品『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のサウンドトラックCDだった。 ケース裏の値札には「4万3000ウォン(約4502円)」。手に取った記者は思わず二度見した。通常のプラスチックケースにCDが1枚入っているだけで、ポスターやブックレットなどの特典は一切なかった。 「なぜこんなに高いのですか?」と店主に尋ねると、「正規品でロイヤルティが入っている。入手が難しいからです」と説明した。だが、その場でオンライン検索をしてみると、米国公式サイトでの価格は14.99ドル(約2198円)、韓国内オンライン最安値も2万6500ウォン(約2775円)ほど。しかもポスターやフォトカード付きの商品だった。 一般的なK-POPアイドルのアルバムは、フォトブックやポスター、ステッカーなどが付いて2〜3万ウォン台(約2094〜3141円)が相場だ。それに比べると、この「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズCD」は構成も乏しいまま倍近い値段で売られている計算になる。 近年、韓国の観光地では“ぼったくり価格”問題が繰り返し指摘されてきた。今年の夏には釜山・チャガルチ市場で「ナマコ1皿7万ウォン」騒動が起きたほか、江原道のイカや釜山花火大会の宿泊費、地方祭りの飲食物価格などでも不満が続出している。 こうした事態を受け、イ・ジェミョン(李在明)大統領は9月2日の国務会議(閣議)で「観光客を対象にした不当な料金請求は国家の信頼を損なう」として、関連省庁に取締り強化を指示した。 それでも“ぼったくり”は今や食べ物を超え、文化産業の象徴であるK-POPグッズにまで及んでいる。外国人観光客が「記念」として買う商品に、法外な値段がつけられる現実は韓国の観光イメージを損なう恐れがある。 2025年、韓国を訪れた外国人観光客は過去最多を更新しそうだ。政府は2030年までに年間3000万人誘致を目標に掲げ、「また行きたい国」を目指している。だが、こうした一つひとつの現場がその信頼を蝕む要因にもなりかねない。 明洞は“韓国観光の顔”であり、外国人が最初に足を踏み入れる象徴的な場所だ。そこでさえ価格の信頼が崩れれば、いくら「観光ハブ国家」を叫んでも土台は揺らぐ。 ぼったくりは単なる価格問題ではない。多く取るより、もう一度来てもらえる信頼を築くことこそが観光の基本だ。「水が入ったときこそ櫓を漕げ」と言うが、いま韓国観光の水を濁しているのは、この小さな“値札一枚”かもしれない。【news1 ユン・スルビン観光専門記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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