「学校が動かないから晒すしかない」いじめ動画の「拡散」は正義か暴力か…過去の被害者からは反対意見も(弁護士ドットコムニュース)

なぜ、名誉毀損などの法的リスクを冒してまで、ネット上に晒すという手段が選ばれるのでしょうか。その背景には「正規の手続きを踏んでも学校は動いてくれない」という不信感があるようです。 岡山県の40代男性は、中学生の娘が突然、同級生らに無視されるようになり、次第に学校を休みがちになりました。男性は娘にスマートフォンを持たせ、いじめてくる人の音声などの証拠を集めたそうです。 そのうえで、警察や弁護士に相談していることを娘の友人らが見ているSNSに投稿したところ、「それまでまったく動かなかった学校が動き、相手の親へもコンタクト。謝罪を受けて一件落着となりました」といいます。 この経験を踏まえて、男性はこう語ります。 「世間はいじめを甘く見てます。子どもや学校の力だけでは、絶対に鎮火しません。国や自治体の対応が不十分な以上、親や大人が強い姿勢で向き合うのが最善策です」

同様のエピソードは、ほかの読者からも寄せられました。 大分県の50代男性は、自身も高校時代にいじめを受けた経験があるといいます。「学校や教育委員会は被害者を守ることを基本しない。なぜか加害者側を擁護する場合が多い」と感じてきたといい、「助かるためには動画を公開する以外に道はない」とうったえます。 「拡散されて当然」という声は、女性からも上がりました。愛知県の50代女性は、中学生の頃、先輩の男子生徒から殴られた過去を明かし、こう語ります。 「昔は、今のようにSNSはなかった。今の時代なら、SNSで公開されても仕方がないと思う。それだけ教育機関がダメだからです」 もっとも、こうした動画の公開や拡散には、名誉毀損やプライバシー侵害といった法的リスクも伴います。本来は、被害を受けた子どもや保護者がネットに頼らなくても、学校や教育委員会、警察などの公的な窓口が適切に機能することが前提であるはずです。


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多くの読者の目には、学校や教育委員会が「事なかれ主義」に陥っていると映るようです。いじめ防止対策推進法が施行されたものの、現場では「喧嘩両成敗」や「いじり」として扱われ、被害が過小評価されるケースも少なくありません。 大阪府の50代女性は、公立中学校に通う中学2年生の息子が集団でいじめを受け、重大事態として扱われた際の学校対応に疑問を抱いたそうです。 「重大事態の報告書の途中経過で、内容を確認させていただいたところ、加害者たちが発した言葉を柔らかく変換した箇所が所々あったり、絶対に「集団」とは付けずにイジメと一括り。 重大事態の報告書ができても、相手の名前はただのイニシャルで、高校進学の内申にもイジメをした事実はまったく記載されない。これでは、教育の場はこれからもイジメが多発することは間違いないと思います」 北海道の40代女性も憤りをにじませます。自身の子どももいじめを受けた経験があるといい、「正直、いじめられた側が死なないと動かない」とまで主張します。

一方、教員からの意見も集まりました。 京都府の女性教員は、生徒が別の生徒に関する写真をSNSに投稿する事件があったと明かします。 「特にインスタをめぐる被害は多い。バズることが目的で後先を考えない生徒が増えている」 そのうえで学校の内側から見える現実について、こう指摘します。 「核家族化で両親とも忙しく、子どもと向き合えない。幼少期の関わりが不十分で精神が育っていない子どもが多い。保護者自体も未熟。そして、教師の世間知らず、隠蔽体質も加わり、現場は混乱し、今にいたると推測する」

ただし、動画の拡散が無条件に称賛されているわけではありません。 過去にいじめを受けていた当事者からは、拡散された映像を見ることで、トラウマがフラッシュバックする危険性を指摘する声も上がりました。 小学校から高校までいじめの対象にされたという40代の人は、動画をネットで拡散することについて「断固反対です」と述べ、次のようにうったえました。 「同じ体験をした人からすれば、思い出したくないことを思い出してしまう、傷に塩を塗るようなものです。現在いじめに遭っている若い子たちが見てしまうと、自殺につながりかねません」 また、大阪府の40代男性は「『他人に暴力を受ける私』の姿を不特定多数の目に晒されること自体が、その人の尊厳を深く傷つけるのではないか」と、別の角度から警鐘を鳴らします。 被害者を救うつもりで拡散した動画が、結果として「デジタルタトゥー」となり、将来にわたって被害者本人を苦しめる可能性もある。そのリスクを孕んでいることは、社会全体でも知っておく必要がありそうです。

弁護士ドットコムニュース編集部

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