「分かり合えたという前例に」東条英機ひ孫、トルーマン孫と13日広島で面会へ 会見要旨

対米開戦時の日本の首相、東条英機(左)と終戦時の米国大統領、トルーマン

極東国際軍事裁判でA級戦犯として処刑された東条英機元首相のひ孫に当たる東条英利氏(52)らが10日、東京都内で記者会見し、広島、長崎への原爆投下を決めたトルーマン元米大統領の孫、ダニエル氏(68)と13日に広島市で面会を予定していることを明かした。英利氏は東条元首相の最期の様子を挙げて「恨みではなく、和解の思いで刑を受けた」と振り返り、「私がやるべきは、その和解を引き継ぐことではないか」と語った。東条氏の発言要旨は以下の通り。

〈会見はNPO法人アースキャラバンが主催し、マハトマ・ガンジーやナチス収容所の関係者、ホロコーストの生存者の子孫が同席した。当初、ダニエル氏も出席を予定したが、体調不良のため見送られた。東条氏らは13日に広島に移動し、そこでダニエル氏も合流するという〉

記者会見する東条英機元首相のひ孫に当たる東条英利氏=10日午後、東京都千代田区(奥原慎平撮影)

──トルーマンは戦争を終わらせるために、原爆投下を決めたというが

「歴史の検証がなければ、前に進めないというのは噓だと思っている。過去に執着し過ぎたが故に、何も進歩的なことが起きていない。まずは半歩でも前に進む議論も必要ではないか。象徴的な一歩、区切りをつけたい」

「原爆落とした部分については、(メールなどでやり取りする中)ダニエルさんも考えさせられるところが多いように感じた。お会いして(来日への)感謝を伝え、私たち2人で何かできないか、そういう話をしたい。第二次世界大戦の当事国の人々がわかり合えたという前例を作りたい」

〈東条元首相らは東京・巣鴨プリズンで処刑に臨む直前、そばの米兵に「ご苦労さん、今までどうもありがとう」と伝え、米兵の上官も手錠でくくられた東条元首相の手を握ったという〉

「曽祖父たちは恨みではなく、ある種、和解の思いで刑を受けたという事実を知った。では、私はその和解を引き継ぐべきではないか。私とダニエルさんで、和解するポーズを示すことが、自分なりにやることと結論に至った」

「安らぎの国」…靖国神社への思い

──東条氏は会見同席メンバーと靖国神社参拝も考えているという

「靖国神社というと、私もそれなりに思いはある。ただ、思うのが靖国は、本当は『安らぎの国』の意味で英訳すると『peaceful nation』。でも海外で訳されると『war shrine』(戦争神社)と、まったく違う意味の言葉が勝手に入ってしまい、ちょっと誤解を招いている」

「実際参拝する人に『次は負けません』とかの思いの人はいない。先人、昔の人に感謝すること自体は、日本人本来の考え方だと思う。そういう意味での誤解を、少しでも和らげることができたらうれしい」

東条英利氏(右から2人目)らが臨んだ記者会見=10日午後、東京都千代田区

──英利氏が会見に臨んだ思いは

「このような公の場で、東条の名をかたれるとは思いもよらなかった。もともと東条家は『一切語るなかれ』、曽祖父は『俺の自己弁護はするな』と言っており、家内はそれに従う者が大半だった」

「父は初孫としてかわいがられ、『おじいちゃまが何と言われようとも決して黙っています』という約束を交わした。ただ、父も亡くなる直前、実はいろいろ語りたい思いがあると知った」

──東条家についての思い

「過去を振り返る中で、曽祖父についても、決して米国と戦争したかったというニュアンスは受けていない。東条内閣自体が日米戦争回避の目的で組閣されたが、実際戦争を止められかった責任はある」

「私も東条という立場でどう振る舞うのか。今回、皆さんとの対話を通じて、少しでも分かり会えるということを伝えられればと思っている」(奥原慎平)

「昨日の敵は今日の友」ガンジー、東条英機らの子孫が訴え

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