【コラム】任天堂は百も承知、ゲームソフトこそ全て-リーディー
何年も期待され、さまざまなうわさが流れていた任天堂の次世代ゲーム機が、16日にようやく発表された。「スイッチ2」だ。
2017年に発売された「スイッチ」の後継機が同じブランド名だったため、新鮮味がないと不満を口にする人もいるかもしれない。新型ゲーム機に関するうわさが数週間前からオンラインで広がり、待ちに待った発表で意外感はほとんどなかった。
ネット上にリークされた情報には、新型ゲーム機の名称だけでなく、ロゴやカラーパレットに関するものも含まれており、機密保持に非常に厳しい任天堂にとっては腹立たしいことだろう。しかし、大局的に見れば、そんなことは取るに足らない。重要なのは、次にどんな情報が来るかだ。
任天堂は発売日について「2025年」としか言っていない。「25年春」でも「25年夏」でもない。なぜ、と思わずにはいられない。詳細の発表は4月2日で、体験会も順次開いていくというが、ゲームタイトルのラインアップを秘密にしておくのは同社の得意技だ。
任天堂がこれまで発売してきた据え置き型ゲーム機のブランド名を振り返ってみても、「2」という数字は見当たらない(念のため言うが、もちろん私は「スーパーゲームボーイ2」は知っている)。
「ファミリーコンピュータ」は「スーパーファミコン」に、「ゲームボーイ」は「ゲームボーイアドバンス」になった。「ニンテンドー64」から「ゲームキューブ」、「Wii U」からスイッチへと完全な方向転換もあった。私は昨年、スイッチの後継機について、「スイッチ2」「スイッチPro」「Superスイッチ」、あるいは全く別のブランド名が選ばれるのではと考えていた。
「2」となった理由は理解できる。投資家はゲーム機のライフサイクルを円滑にするため、米アップルが毎年アップグレードするスマートフォン「iPhone」に倣い、任天堂もユーザーを囲い込み、買い替えを促すようにすべきだとずっと主張してきた。
手札
任天堂のライバル、ソニーグループの「プレイステーション(PS)」は最近、初代PSの発売から30周年を迎えたが、「PS1」から「PS5」に進化する中で、消費者がブランド名やゲーム機が変わるかもしれないと気にすることはなかった。
任天堂は対照的だ。しばしばこうしたやり方に強く抵抗し、驚きを追求。コントローラーにこだわり、必要とは思えない3D映像機能まで加えた。社長だった故・岩田聡氏はスイッチ発売前、すでにあるハードウエアに甘んじず、ゲーマーを驚かせる必要があると語っていた。
スイッチは任天堂にとって特筆すべき成功例だ。だからこそ、単に「2」を付ければ十分なのだろうかという疑問が生じる。予告映像を見る限り、初代スイッチと後継機のハードウエアに大きな違いはなく、コントローラーにも目新しさはないように見える。
もちろん、公平を期すために言えば、任天堂はこの問題を誰より深く認識している。なぜなら、大ヒットした「Wii」を引き継いだ「Wii U」が同社最大の失敗作となったからだ。後継機を前機種と差別化できず、新しいユーザーを呼び込めなかった。ゲーマーが他社製品に流れ、長い間苦境に立たされた。任天堂はこの失敗から教訓を得たはずだ。
16日の発表では、最も重要なものが欠けていた。つまりゲームソフトだ。この点において、任天堂はあらゆる手札を備えている。スイッチ2で遊べるゲームタイトルのラインアップは、何年も戦略的に計画されてきた。
スイッチのユーザー基盤を生かし、ヒット作を当てにせず、マイナーゲームを押し上げる。だからこそ、新しい「マリオカート」や新しい3Dマリオが何年も出ていないのだ。
任天堂がこの2つのタイトルに加え、「メトロイドプライム4」や「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」のリマスター版、そして幾つかのマイナータイトルをそろえ、クラシックタイトルを再発売できれば、スイッチ2の需要が供給を上回るのは確実な1年になるだろう。
そうすれば、任天堂はゲーマーと投資家を喜ばせ、時間を稼ぐことができる。しかし、あまり長い間、現状維持を続けるべきではない。
初代スイッチは「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」がその独創性でゲーマーを驚嘆させ、魅了したことで知られるようになった。同じ名前の後継機が生き残るためには、同じように魅力的な何かが必要になる。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Nintendo’s Switch 2 Will Be All About the Games: Gearoid Reidy (抜粋)