これまでで最も詳細な「宇宙塵の3Dマップ」
マックス・プランク天文学研究所の天文学者たちは、天の川銀河系内の宇宙塵の詳細な3Dマップを作成しました。
1億3000万の星を調査
この3Dマップは、欧州宇宙機関(ESA)のガイア計画から得た1億3000万のスペクトルを利用して、塵が最も宇宙の視界を濁らせている場所を示し、“減光”が粒子状物質による影響をあまり受けない領域を図表化したものです。この研究成果は、2025年3月13日に科学誌『サイエンス』にて発表されました。
宇宙塵は、星やその他の天体の見え方をゆがめ、実際よりも赤く暗く見える原因となります。暗く見える効果は「減光(extinction)」と呼ばれ、塵粒子などによる背景光の吸収と散乱によるものです。
2022年6月、研究チームはガイア計画で公開された2億2000万のスペクトルの中から、塵の調査に役立つと判断した1億3000万の星を選びました。 次に研究者らは、ニューラルネットワーク(脳内の神経細胞の働きを模倣して結論を導き出す機械学習システム)を訓練し、塵そのものの特性とより小さな星のグループの特性を基にスペクトルを生成しました。
Graphic: X. Zhang/G. Green, MPIA上の図は、塵によって引き起こされる減光曲線が、太陽を中心に最大8,000光年の範囲でどのように現れるかを示したものです。グラフ内の赤く色付けされた領域は、減光が光の波長に大きく依存していることを示し、青い領域は減光が波長に依存しない場所を示しています。 グレーで引かれた等高線は、塵の密度が高いエリアを示しています。
マックス・プランク天文学研究所の発表によると、この3Dマップは塵の密度が高い地域(地球の半径ほどの球体で約10kgの塵に相当)の減光曲線は予想よりも急であることも明らかにしました。研究者らは、この急な曲線は宇宙に豊富に存在する炭化水素によって生じているのではないかと考えており、さらなる観測を通じてその理由を明らかにしたいと考えています。
ブラックホールの探索にも有用
ガイア計画は、2014年7月24日から2025年1月15日まで、天の川銀河の観測データを3兆回以上収集し、その後活動を終えました。ガイア計画が収集したデータは、銀河系の再構築された視界を最も優れたかたちで提供し、科学者が再構成画像を作成するのにも役立ちましたが、その目的はマッピングだけではありません。
2022年には地球に最も近い既知のブラックホールを発見し、2024年4月に最も重い恒星質量ブラックホールを特定しました。 ブラックホールの観測にも貢献しているとは。