まるで食虫植物! 9900万年前の寄生バチを初めて発見、琥珀中
ミャンマーの琥珀に閉じ込められていた9900万年前の新種の寄生バチSirenobethylus charybdis。(PHOTOGRAPH BY QIONG WU, COLLEGE OF LIFE SCIENCES AT CAPITAL NORMAL UNIVERSITY)
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驚くべきことに、食虫植物のハエトリグサのような装置を腹部に持つ寄生バチの化石が見つかった。研究チームが9900万年前の琥珀(こはく)に閉じ込められていた十数匹のハチを調べたところ、おそらくこの装置で捕らえた獲物に卵を産み付け、卵を育てさせていたという。
新種のこのハチは、大量の海水を吸い込んで吐き出し、船を引きずり込むほどの渦を巻き起こしたギリシャ神話の怪物カリブディスにちなみ、シレノベチルス・カリブディス(Sirenobethylus charybdis)と名付けられた。論文は3月27日付けで学術誌「BMC Biology」に発表された。
「この発見によって、古代の昆虫がすでに高度な獲物の捕獲戦略をつくり上げていたことが明らかになりました」と論文の筆頭著者で、中国、首都師範大学生命科学学院の博士課程に在籍するウー・チョン氏は述べている。「寄生バチの進化に関する私たちの常識を根底から覆す発見です」(参考記事:「新種の寄生バチを発見、宿主を操り頭を食い破る」)
Sirenobethylus charybdisの標本が閉じ込められている琥珀は、米国の硬貨で最も小さい10セント硬貨(約1.8センチ)より小さい。2015年、中国の化石コレクターがミャンマーのカチン州で購入し、首都師範大学に寄贈した。
肉眼で見ると、Sirenobethylus charybdisは腹部の大きな現代のハチに似ている。
「最初は変形だと思いました。化石化の過程で変形やゆがみが生じることは珍しくないためです」とウー氏は振り返る。
しかし、顕微鏡で観察し、CTスキャンを行った結果、驚くべき構造が明らかになった。
ハエトリグサのような装置の拡大写真。このハチはこれで卵を産み付ける獲物を捕まえていたようだ。(QIONG WU, COLLEGE OF LIFE SCIENCES AT CAPITAL NORMAL UNIVERSITY)
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ハチの腹部の先端に、ハエトリグサの葉とよく似た板状のフラップが3枚あったのだ。下部のフラップは化石によって違う角度で開いていて、ものをつかめることを示唆していた。また、下部のフラップの外側は、ハエトリグサのように、長く柔軟な毛で覆われており、動きを感知できたと推測される。(参考記事:「海洋生物の多様性:海のハエトリグサ」)
別の無防備な昆虫がこれらの毛を刺激すると、フラップが素早く閉じて捕獲していた可能性がある。
ハチは捕らえた獲物をすぐに殺すのではなく、自分の卵を育てさせていたのではないかと研究チームは考えている。(参考記事:「寄生? 共生? ハチってマニアック!」)