米国の追加関税は145から30%、中国は125から10%に…米財務長官「米中は切り離し望まず」

 【ワシントン=田中宏幸、北京=照沼亮介】米中両国は12日、追加関税を相互に115%引き下げる内容の共同声明を発表した。米国の対中追加関税は145%から30%に、中国の対米追加関税は125%から10%となる。両国は14日からの90日間、閣僚級や事務レベルの協議を継続するが、貿易を巡る米中の溝は深く、3か月の猶予期間で抜本的な解決が可能かどうかは見通しにくい。

記者会見するベッセント米財務長官(右)と米通商代表部(USTR)のグリア代表(12日、ジュネーブで)=ロイター

 10、11日にスイス・ジュネーブで開いた貿易協議で合意した。トランプ米大統領は9日、自身のSNSで「中国への80%の関税は妥当だ」と投稿していたが、これを大幅に下回る結果となった。

 共同声明によると、両国が4月以降に互いに課した追加関税34%のうち、24%分を90日間停止し、さらに上乗せした報復関税91%分は、互いに撤廃する。引き下げ幅は計115%分となる。ただ、米国が合成麻薬フェンタニルの流入対策として発動している20%の対中関税は維持する。

関税を巡る米中合意の概要

 両国は、今回の協議に参加したベッセント米財務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表、中国の 何立峰(フォーリーフォン) 副首相による継続的な協議の枠組みを設けた。必要に応じて事務レベルの協議も進める。


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 中国が米国に講じた「関税以外の対抗策」について、共同声明には「一時停止するか撤廃する」と記された。中国が4月に始めた、7種類のレアアース(希土類)の輸出規制などが念頭に置かれている模様だ。一方で、自動車、鉄鋼・アルミニウム製品など品目ごとの関税について言及はなかった。

 ベッセント氏とグリア氏は12日、ジュネーブで記者会見を開いた。ベッセント氏は「(米中)どちらも経済のデカップリング(切り離し)を望んでいないという点で意見が一致した」と述べた。100%超の関税の応酬について、グリア氏は「実質的な禁輸措置に相当し、持続可能ではなかった」と指摘した。

 中国側代表の何氏は、12日には記者会見を開かなかった。中国商務省の報道官は12日、「共同声明は相違点の解決と協力の深化に向けた基盤を築くための重要な一歩となった」と評価するコメントを発表した。

 今回の協議ではフェンタニル対策についても議論し、グリア氏は「非常に活発で実りある議論ができた」と評価した。

 今回の関税引き下げは暫定的な措置で、今後90日かけても貿易協議が最終合意しなかった場合は、再び関税の応酬が繰り返される恐れもある。

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