【米国市況】S&P500が最高値、堅調決算や通商合意期待が押し上げ

25日の米国株相場は上昇。S&P500種株価指数は5日続伸となり、過去最高値を再び更新した。堅調な企業決算や通商合意への期待が背景にある。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6388.64 25.29 0.40% ダウ工業株30種平均 44901.92 208.01 0.47% ナスダック総合指数 21108.32 50.36 0.24%

  S&P500種は6400に迫った。相場の急伸により、割高感や「ミーム株」熱の再来などに対する懸念が一部で広がっているが、現時点ではこの上昇トレンドに逆らうのは難しいとみるトレーダーも多い。

  ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏は「構造的に弱気な投資家であれば、ここ数週間はまるで1世紀のようにも感じられたはずだ」と指摘。「大半の株価指数が永遠に続くかのように上昇しているのみならず、世界的に現在のバリュエーションは年初時点を上回っている」と述べた。

  通商協議の進展や堅調な経済データ、企業業績の底堅さが、株式市場の過熱感に対する懸念を打ち消している。ブルームバーグ・インテリジェンスのデータによれば、これまでのところS&P500種構成企業のうち80%超は利益が予想を上回っている。この割合はこのままいけば、2021年4-6月(第2四半期)以来で最大となる。

  ベスポーク・インベストメント・グループは、「今月これまでの決算は順調で、経済指標も持ちこたえている。また関税についても見通しがやや明確になり始めている」と分析。「投資家が楽観的になるのも無理はないだろう」と指摘した。

  来週は米雇用統計や米連邦公開市場委員会(FOMC)会合、上乗せ関税を巡る期限が控えている。欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、今週末にスコットランドを訪れ、トランプ米大統領と会談することを明らかにした。米国が8月1日に予定している30%の対EU関税発動を前に、米国とEUは期限内の合意成立を目指して協議を進めている。

関連記事:欧州委員長、27日にトランプ大統領と会談へ-米・EU貿易合意目指す

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「投資家が抱いていた懸念の多くが実現しなかったことから、相場は着実な上昇を続けている」と分析。「絶対的ないし相対的にショートポジションを取っていた機関投資家の多くは降参した一方、ポジショニングは依然として行き過ぎの兆候をほとんど示していない」と述べた。

  その上で、これはマクロ環境が改善、ないし安定するだけでも、市場のモメンタムが強まる余地があることを示唆していると付け加えた。

  パブリックのブローカレッジ部門ゼネラルマネジャー、サム・ノフジンガー氏は「今年はリテール投資家にとって非常に活発な年になっているが、特にここ1カ月はわれわれが経験してきた中でも最も目まぐるしい月と言えそうだ。ミーム株の上昇、つまり「レディット』などで話題になった超小型株が急伸する現象が再び見られている」と述べた。

関連記事:21年のミーム株相場再来の様相、百貨店コールズが一時2倍余りに急騰

  28日からの週は決算シーズンが本格化し、S&P500種構成企業の40%超が発表する。アップルやアマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズといった大手テクノロジー企業の決算発表も控えている。

  ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「業績には一部ばらつきが見られるものの、おおむね予想を上回っており、株式相場の上昇を維持する原動力になっている」と指摘。「通商政策や関税による逆風が限定的である限り、相場は上昇を続けられるだろう」と語った。

国債

  米国債相場は長期債が小幅高(利回り低下)。長期債利回りは一時3-4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上げていたが、午後に下げに転じた。この日は明確な材料に乏しく、現物市場で出来高が少なかったため、大口取引の影響を受けやすかった。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.93% -0.7 -0.14% 米10年債利回り 4.39% -1.0 -0.23% 米2年債利回り 3.92% 0.5 0.13%     米東部時間 16時53分

為替

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が上昇。ただ週間では3週ぶりの下落となった。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1198.57 3.37 0.28% ドル/円 ¥147.66 ¥0.65 0.44% ユーロ/ドル $1.1741 -$0.0008 -0.07%     米東部時間 16時53分

  為替市場ではこの日、トランプ大統領の発言が意識された。トランプ氏は前日、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任は「必要だとは思わない」と発言。これを受け、FRBの独立性を巡る懸念は後退した。25日には、強いドルを好むとしつつ、製造業におけるドル安の経済的利点も指摘。為替政策に関して相反するメッセージを送った。

  市場では引き続き、来週の重要イベントに注目が集まっている。29-30日には連邦公開市場委員会(FOMC)会合、8月1日には上乗せ関税を巡る期限と米雇用統計の発表が控えている。

  円は対ドルで値下がり。ニューヨーク時間は総じて1ドル=147円台後半で推移した。日本銀行は、日米関税協議の合意を受けて、企業行動次第では年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみている。複数の関係者への取材で分かった。

関連記事:日銀が年内に利上げできる環境整う可能性、日米関税合意で-関係者

原油

  ニューヨーク原油先物は反落。ドル高に加え、米国が主要貿易相手国・地域と来週の交渉期限までに合意に達するとの期待が低下したことが重しとなった。

  トランプ大統領は欧州連合(EU)との通商合意の可能性について「五分五分」と発言。合意に向け前進していると楽観的な見方を示していたEU外交筋との温度差が浮き彫りとなり、投資家心理を冷やした。トランプ氏はまた、大半の関税率は「実質的にすでに決まっている」とも述べた。一部試算では、米国の実効関税率は100年ぶりの高水準に達しており、これはエネルギー需要の下押し要因となり得る。

  トランプ氏がパウエル議長を解任する考えがないことを示唆したことでドルが上昇したことも、相場の重しとなった。ドル建てで取引されるコモディティー(商品)はドル高局面では割高となり、妙味が薄れる。

  ビカス・ドウィベディ氏らマッコーリーのアナリストは「今秋にかけて原油は徐々に売りが優勢になる」と予想。「在庫積み増しの加速や現物市場の軟化に加え、精製マージンの低下や地政学リスク絡みの供給リスク後退が背景にある」とリポートで記した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は前日比87セント(1.3%)安の1バレル=65.16ドル。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1.1%下げて68.44ドルで引けた。

  金相場は3日続落。トランプ大統領の発言でFRBの独立を巡る懸念が和らいだことでドルが買われ、ドル建てで取引される金の割高感が意識された。

  24日にFRB本部改修現場を視察したトランプ氏はパウエル議長との間に「緊張はない」と述べたほか、改修工事に伴う予算超過問題も、議長解任の十分な理由にはならないとの考えを示唆した。

  バーバラ・ランブレヒト氏らコメルツ銀行のアナリストはリポートで「金相場は方向感を欠いている」と指摘。「投資需要の動向を見る限り、金価格は当面の天井を打った可能性がある」とし、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げが見込まれていない状況ではなおさらだと述べた。

  今年の値上がりをけん引してきた金連動の上場投資信託(ETF)への資金流入ペースが4-6月(第2四半期)に鈍化した点にも言及した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時26分現在、前日比30.49ドル安の1オンス=3338.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は38.60ドル(1.1%)下げて3392.50ドルで引けた。

原題:S&P 500 Hits New Highs Before ‘Peak’ Earnings Week: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Log Small Gains; Curve Flattens Ahead of Auctions

Dollar to Post Weekly Loss, Euro Outlook Bullish: Inside G-10

Oil Falls as US Trade Deal Optimism Wanes, Dollar Strengthens

Gold Eases After Trump Downplays Clash With Fed Chair Powell

関連記事: