使うほど賢くなるオープンソースのAIエージェント「Hermes Agent」の設定は超簡単! ブラウザー操作だけで働かせてみた

 本連載「柳谷智宣のAI ウォッチ!」では、いま話題のAI(生成AI)を活用したサービスを中心に取り上げていく。今回はオープンソースの自己改善型AIエージェント「Hermes Agent」を取り上げる。
24時間働くAIエージェント「Hermes Agent」を使ってみよう

 2026年1月にリリースされたAIエージェント「OpenClaw」はその自由度の高さから瞬く間に話題をさらった。チャットツールから指示を出すだけで、AIが調査や通知、ファイル操作、外部サービス連携をこなしてくれる感覚は多くのユーザーを引きつけた。その一方で、自律的に動くからこそのリスクも指摘された。

 そうした流れの中、OpenClawとは異なる方向性の選択肢として注目を集めているのが、Nous Researchが公開したオープンソースのAIエージェント「Hermes Agent」だ。

 OpenClawが広げた常駐型AIエージェントの世界を受け継ぎつつ、Hermes Agentはまた違う思想で開発されている。今回は、このHermes Agentについて、どのようなAIエージェントなのかを解説するとともに、Webブラウザー上で完結するAIプラットフォーム「ロリポップ!AIエージェントクラウド」上で実際に試したレビューとあわせて紹介する。

 OpenClawが支持を集めた理由はわかりやすい。SlackやDiscordなどをAIエージェントに接続し、自然な言葉で作業を頼めるのはとても便利だからだ。自分のPCやサーバーで常時動かしておけば、情報収集、資料作成、通知、コード制作、予定確認といった作業をいつでも自由に任せられる。

 ただし、常駐型エージェントは従来のチャットAIよりも扱いが難しい。ファイルを読み書きし、外部サービスと連携し、時にはコマンドを実行する。能力が高いほど、渡す権限も重くなる。人気が急拡大したOpenClawでは、プラグインやスキル、設定まわりの安全性について議論が起こった。AIが自律的に動く環境を作るには、サーバーの知識が必要になるし、権限管理、アップデート、ログ確認といった運用のための地味な作業も避けられない。

あまりの自由度の高さで物議を醸した「OpenClaw」

 Hermes Agentは、OpenClawと似ているものの、設計思想は異なる。OpenClawが多彩な連携や拡張性をウリにしたのに対し、Hermes AgentはAI自身が経験をためる仕組みに重心を置いている。例えるなら、OpenClawは多機能なリモコンに近く、Hermes Agentは少しずつ仕事を覚える助手といった感じだ。

 また、作業経験を次回へ持ち越す仕組みを備えているのも、Hermes Agentの特徴だ。複雑な作業を終えると、その手順を再利用可能な「スキル」にまとめ、次の作業で利用できるようにしてくれる。ユーザーとのやり取りや過去の会話も記憶として保存し、必要な場面で検索して呼び出す。単に「前に話したことを覚えている」だけではなく、記憶を手順に変え、その手順を改善し、使うほど個人の作業環境になじんでいくというのがポイントだ。

 OpenClawと同様、Hermes AgentもPCやサーバー上に常駐させる前提で作られている。TelegramやDiscord、Slackなどのチャットアプリから話しかけられるため、外出先からスマホで指示を出すことも可能だ。さらに、時刻を指定して自動処理させる定期実行機能を搭載しており、毎朝のレポート作成や夜間のバックアップのような作業も任せられる。

 とはいえ、Hermes Agentを自力で動かすのは簡単ではない。

 DockerやPython、サーバー、APIキー、権限設定の知識が必要になり、コマンド操作に慣れていない人にはかなり高い壁になる。OpenClawも同様で、常駐型AIエージェントは便利な反面、自分で環境を作り、安全に運用するところでつまずきやすい。

 そのハードルを下げるために登場したのが、GMOペパボの「ロリポップ!AIエージェントクラウド」だ。ロリポップ!レンタルサーバーは、2026年4月22日にOpenClawのマネージドサービスを開始し、4月28日からはHermes Agentにも対応した。GMOペパボによれば、Hermes Agent対応のマネージドサービスとしてはこれが国内初だという。料金は月額1,200円で、サーバー利用料も含まれる。

「ロリポップ!AIエージェントクラウド」では、OpenClawとHermes Agentのマネージドサービスを提供している

 ポイントは、単なるインストール代行ではないことだ。ユーザーごとに独立したサーバーを割り当て、脆弱性対応やフレームワークの更新をサービス側が管理する。利用者はブラウザーから環境を作成し、AIエージェントを使い始められる。ターミナルで黒い画面にコマンドを打ち込む必要はない。これがマネージドサービスの大きなメリットとなる。

 Hermes Agentを利用するには、LLMを設定する必要がある。しかし、まずはAIエージェントを日本語で動かす体験をしてほしい、という考えのもと、無料枠で一定量のLLMが利用できるようになっている。もちろん、本格運用の前には自分のアカウントやAPIキーを設定する必要はある。

 一方で、自由に動くAIエージェントである以上、何でも無制限に許すわけにはいかない。ロリポップ!AIエージェントクラウドでは、OSの根に近い部分にはガードレールを設け、危険なコマンドの実行などには制限がかけられている。

 ちなみに、GMOペパボ ロリポップ・ムームードメイン事業部の濱田璃空氏に、サービスを開始した背景についてお話を伺ったところ、濱田氏は「自由度の高い自律型のAIエージェントは、弊社でも業務用パソコンにインストールすることはセキュリティの観点から禁止されています。そうしたHermesやOpenClawを試したいけど試せない人たちに向けて、懸念を考えずに安心して利用できる環境を提供するのが、いまの時代に沿ったサービスだと考えて提供を開始しました」と説明してくれた。

GMOペパボ ロリポップ・ムームードメイン事業部 第一事業開発チーム サブマネジャー 濱田璃空氏

 では、実際にロリポップ!AIエージェントクラウドのマネージドサービスでHermes Agentをセットアップしてみよう。

 まずはアカウントを作成してAIエージェントを選択する。「Hermes Agent」の[選択する]をクリックすると、AIエージェントクラウドのWebページが開き、エージェントが表示される。

利用したいAIエージェントを選択する

 無料のLLMが用意されているため、この時点でHermes Agentと会話が可能だ。あまりに簡単というか、何もしていないのにインストールが完了しているのには驚いた。

あっという間にHermes Agentが起動した

 次は、指示を出すチャットツールの設定を行う。ここは面倒だが、ユーザーが自分で作業するしかない部分なので頑張ろう。

 現在は、Discord、Slack、Telegramの3種類が選択できる。今回はDiscordを使ってみよう。

 [チャネル連携]で[Discord]を選択して[トークンの取得方法を見る]をクリックすると、手順紹介の画面がポップアップする。

 そうしたら、Discord Developer Portalを開き、アプリを作成。[Bot]の設定で「Message Content Intent」「Server Members Intent」をONにし、[インストール]の設定で「Bot」と「applications.commands」の2つのスコープを追加。権限を選択して「インストールリンク」のリンク先を開いてBotをサーバーに招待すればよい。今回は、Discordに「Hermes作業部屋」というサーバーを作成した。

マニュアルに従ってDiscordの設定を行う
Discordとの連携が完了

 最後に、利用するLLMの設定だ。GeminiやClaudeのAPIキーを取得して設定するのだが、おすすめはOpenAIのCodexとの連携だ。ChatGPTの有料プランを契約していれば、APIキーを使わずにサブスク範囲で利用できる。

 利用するAIモデルは目的に合わせて選べばよい。例えば、Codexなら選択肢には最新のgpt-5.5やgpt-5.4-miniなどが並んでいる。最高峰の賢さを求めるならgpt-5.5、安さとレスポンスの速さを重視するならgpt-5.4-miniといった具合だ。

利用するLLMを設定する

 これで準備完了だ。DiscordでHermes Agentに指示を出してみよう。

 まずは、毎朝自動でニュースをまとめてもらうタスクを作成してみた。領域はAIで、細かい条件や除外する要素などを指定。要約とソースを付けて報告してもらうようにした。

Hermes AgentにDiscord経由で指示を出してみた

 すると、たった1行のプロンプトであっけなく自動実行タスクが登録された。このタスクは、ロリポップ!AIエージェントクラウドの[定期実行]画面でも確認・編集できるようになっている。

 試しにテスト実行をさせたところ、指示通りにしっかりと調査してサマリーを報告してくれた。これで毎朝欲しい情報がすでに集まっている状態で仕事を開始できる。この自動で処理してくれる、というのがAIエージェントの便利なところなのだ。

自動実行タスクが作成された(画面はロリポップ!AIエージェントクラウド)
テスト実行の画面

 次は、Hermes AgentにGoogle Workspaceとの連携を設定し、Google カレンダーの予定を把握してもらうことにした。

 単に要約を報告させるのもありなのだが、今回は秘書のように進捗を管理し、リマインドしてくれるようにお願いしてみた。要は、自分がさぼらないための監視役になってもらうのだ。

 すると、定期的に「あの予定は終わったのか」「本日締め切りの原稿は後回しにせずにすぐ着手せよ」「ビデオ会議まで2時間。論点を確認せよ。Teamsリンクは予定にあり」などと報告してくれるようになった。タスクの処理漏れを防ぐにはとても役に立ちそうだ。

秘書として筆者の進捗を管理してもらう

 Hermes Agentは使い込むごとに成長する。どうせなら自分好みの設定にしておくと楽しく活用できるのでおすすめだ。

 この個性を決める重要な設定ファイルが「SOUL.md」だ。これはエージェントの口調や判断基準、ユーザーとの向き合い方を記述するMarkdownファイルで、システムプロンプトとして最初に読み込まれる。

 例を挙げると「結論から話す」「不確かなことは断定しない」「危険な操作は事前に確認する」といった基本方針を書いておけば、エージェントの振る舞いに反映される。「語尾に“にゃ”を付けて話す」「ツンデレ敏腕秘書のように対応して」などと設定してもよい。使い込むほど記憶やスキルが増えていくHermes Agentにとって、SOUL.mdは「どう育てるか」の出発点になるのだ。

 この設定はチャットで確認・変更することもできるし、ロリポップ!AIエージェントクラウドの[設定ファイル]メニューから開くこともできる。Hermes Agentの性格設定である「SOUL.md」を自分好みにカスタマイズしてみよう。

ロリポップ!AIエージェントクラウドの[設定ファイル]から「SOUL.md」の確認・編集が行える

 Hermes Agentは、時間をかけて育てるAIエージェントなので、使い込むほど自分の仕事や趣味に寄ってくる感覚が生まれるのが楽しい。もちろん、自己改善といっても学習内容が常に正しいとは限らない、という課題は残る。誤った手順を覚える可能性もあるし、外部サービス連携では権限管理への注意も欠かせない。

 それでも、AIエージェントの入口がブラウザー操作だけで開く意味は大きい。これまでHermes Agentのような常駐型AIは、興味があっても技術的な準備が面倒で躊躇していた人も多いはず。月額1,200円のロリポップ!AIエージェントクラウドで手軽に試せるなら、開発者だけでなく、ライターや配信者、個人事業主、趣味のコミュニティ運営者にも利用シーンが広がるだろう。

 現在は、チャットAIを呼び出して使う時代から、常駐するAIと日々やり取りして仕事の流れを覚えさせるという過渡期にある。ぜひ一足早くAIエージェントとの協働体験をしてみてほしい。

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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