アルコール依存症の治療補助アプリ 来月から医療機関で処方開始 早期治療に期待
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厚生労働省は、日本でアルコール依存症が疑われる人は303万人に上ると推計している。そのアルコール依存症の治療を補助するスマホのアプリが来月から保険適用になる。どのようなアプリなのだろうか。
来月から医療機関で処方開始
来月から医療機関で処方される「アルコール依存症の治療を補助する」アプリ。アプリの利用には医師の処方が必要となる。
生活習慣の見直しなどが必要と診断されると、アプリ登録に必要なIDが“処方”されるのだ。保健適用され、3割負担で2400円の自己負担となる。
お酒を飲みながらアプリに飲酒量や種類を登録していくと、アプリがアルコール量を計算し、『長時間の飲酒にはノンアルコールをはさむ』をやってみませんか?」などとアドバイスをしてくれる。
さらに、ストレスに対処する睡眠前のリラックス法なども動画で教えてくれる。
このアプリは患者にアドバイスをし、生活習慣の見直しを促すだけではなく、治療の際に大きな役割があるという。
患者が毎日の体調や睡眠の状態、飲酒量などを登録すると、その情報が処方した医師に共有される。そのため…。
アプリがアルコール依存症の治療を始めるきっかけになることが期待されている。
厚生労働省によると、一日の適正アルコール摂取量は男性でおよそ20グラム。具体的にはビールだと500ミリリットル、日本酒だと1合、焼酎では100ミリリットルが目安となるそうだ。
アルコール依存症の専門医、さくらの木クリニック秋葉原の倉持穣院長は、こうした適正アルコール量の飲酒でも、週3日以上飲酒する人はアルコール依存症予備軍の可能性が高いと指摘する。
また厚労省によると、アルコール依存症は「否認の病」と言われ、患者自身が病気であることを認めたがらない傾向があり、治療を始めるのが遅れることが少なくないという。
過度なアルコール摂取が続くと、アルコール依存症だけでなく、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)、食道がん、胃がん、大腸がんなどを発症するリスクが高くなるという。
しかし、アルコール依存症の専門的な治療が受けられる医療機関は、多くないというのが現状のようだ。
去年9月の時点で、アルコール依存症の治療を専門的に行う医療機関は全国に230カ所。例えば東京都では9カ所あるが、高知県は専門の医療機関は1カ所だけ。こうしたこともあり、アルコール依存症の症状が悪化してから、ようやく病院を受診するという事例も少なくないという。
そうしたなか、アプリの活用で治療開始を早める効果も期待できるということだ。
倉持院長は「アルコール依存症の患者は内科の受診をきっかけに治療を始めるのがほとんど。アプリを活用した診療は専門医でなくても研修を受ければ行うことができるので、依存症治療の裾野が広がることが期待できる」と話している。
では、アプリを活用した治療とは、どのようなものなのか。高血圧の分野ではすでに行われている。
みなみ野循環器病院では、診療に高血圧治療補助アプリを導入している。
2022年に保険適用された高血圧治療補助アプリ。実際にどのように使われているのか。
日々の血圧や睡眠時間、食生活などの情報をアプリに患者自身が入力。医師はそのデータを見ながら治療に生かしていく。
「(Q.アドバイスをアプリが出してくれる?)アプリで頂いている感じですね。食生活がすごく変わりました」
アプリを開発した会社の治験によると、アプリによる生活習慣の指導を受けた場合、何も使用していなかった人と比べ、12週間後の血圧がより下がったという。
生活改善を続けられたのはアプリのアドバイスの仕方にあるようだ。
具体的なアドバイスをしてくれるということだが、治療にアプリを活用することで、国の財政にも効果があるようだ。
高血圧はさまざまな疾患の要因になることで知られているが、その一つに腎臓の機能が低下する慢性腎臓病がある。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状が出にくく、症状が悪化すると透析治療が必要となる場合があるという。
全国腎臓病協議会によると、透析治療の1カ月の治療費は、およそ40万円に上るという。患者の自己負担額は高額療養費制度が適用され、2万円程度以下に抑えられるということだが、こうした患者が将来的に増加すれば、税金で賄われている社会保障費を圧迫することになってしまう。
過去2年間で200人以上に高血圧アプリを処方した実績を持つみなみ野循環器病院の幡芳樹理事長は、「アプリはあくまで治療の補助的役割だが、生活習慣の見直しや血圧管理の習慣化につながり、薬の量を減らすことにつながることもある。さらに、将来的には日本の医療費全体の削減につながるのではないか」と話している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年8月12日放送分より)