約85万年前のヒト属が幼児の首を切断して共食いしていたことを示す証拠が見つかる
by Maria D. Guillén / IPHES-CERCA
2025年7月、スペインのアタプエルカにあるグラン・ドリーナ洞窟で、ヒト属の一種であるホモ・アンテセッサーの幼児の骨が発見されました。この骨には、意図的に首が切断された痕跡が残っており、ホモ・アンテセッサーが幼児を共食いしていたことを示す証拠だと報告されています。
A Child Decapitated 850,000 Years Ago: New Evidence of Prehistoric Cannibalism at Atapuerca
http://comunicacio.iphes.cat/eng/news/new/879.htmAncient human relative cannibalized toddlers, 850,000-year-old neck bone reveals | Live Science https://www.livescience.com/archaeology/human-evolution/ancient-human-relative-cannibalized-toddlers-850-000-year-old-neck-bone-reveals ホモ・アンテセッサーはグラン・ドリーナ洞窟で発掘された化石群に対し、1997年に新種のヒト属として命名された種です。グラン・ドリーナ洞窟以外では発見されておらず、専門家の間ではネアンデルタール人や現生人類(ホモ・サピエンス)の祖先なのか、それとも別のヒト属から分岐したのかが議論されているとのこと。
グラン・ドリーナ洞窟での発掘調査を主導するカタルーニャ人類古生態・社会進化研究所(IPHES-CERCA)の研究チームは7月に、85万年前~77万年前の地層から10体のホモ・アンテセッサーの骨を発掘しました。
これらの骨の多くには、食用にされた動物の骨に典型的な肉をそぎ落とした痕跡や、意図的な骨折がみられました。中には2~5歳程度の幼児の骨もあり、その首が切断されたことを示す明確な痕跡があったと報告されています。
以下の写真は、実際にグラン・ドリーナ洞窟で発掘された幼児の椎骨。他のヒト属による食人行為を示す切り傷がいくつも確認できます。グラン・ドリーナ洞窟の発掘調査の共同責任者を務めるパルミラ・サラディエ氏は、「この事例は子どもの年齢だけでなく、切り傷の精密さからも特に印象的です。椎骨の中でも頭部を分離する上で解剖学的に重要な箇所に、明確な切断痕がみられました。これは、子どもが他の獲物と同様に処理されたことを示す直接的な証拠です」と述べています。
サラディエ氏は科学系メディアのLive Scienceへのメールで、「化石の表面の保存状態は驚異的です。骨の切り傷は単独で現れたものではありません。骨には人間がかんだ痕も確認されており、これは現場で発見された遺体が実際に食べられていたという最も信頼できる証拠です」と述べています。 30年以上にわたる発掘調査により、グラン・ドリーナ洞窟では20体以上の食人行為を示す人骨が発見されてきました。サラディエ氏は、「私たちが今記録しているのは、食人行為の継続性です。死者への扱いは例外的なものではなく、繰り返されてきたのです」とコメントしました。
これらの証拠は、ホモ・アンテセッサーが食料の資源として、そしておそらく縄張りを管理するための方法として、食人を行っていたという仮説を強固なものにしています。サラディエ氏は、「毎年、新たな証拠が発見され、約100万年前の人々がどのように暮らし、どのように亡くなり、そして死者がどのように扱われていたのかを改めて考えさせられます」と述べました。
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