太陽系で最も火山活動が活発、木星の衛星「イオ」の姿
木星の衛星「イオ」は太陽系で最も活発な火山活動が存在していることで知られている。1610年1月にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイによって発見されたもので、いわゆる「ガレリオ衛星」(内側からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)のひとつだ。
その直径は3,640kmほどで、月よりもわずかに大きい。1日と18時間ほどの周期で木星の周りを公転している。
木星とイオ、エウロパの画像。右に見えているのがイオ。左に見えているのがエウロパだ。2017年9月にNASAの木星探査機「ジュノー」が撮影。
イオの軌道は、エウロパやガニメデの引力の影響によって楕円になっている。そのためイオは、木星の周りを公転しながら、木星に近づいたり離れたりしている。そして木星に近づいたときには木星の重力によって大きく変形し、離れたときには小さく変形する。こうして形が変わることで、イオの内部では摩擦により莫大な熱が発生する。この現象を「潮汐加熱」という。
この潮汐加熱によって、イオの地下ではマグマオーシャン(溶けた状態のマグマ)が形成され、その表面では太陽系で最も活発な火山活動が引き起こされている。
木星探査機「ガリレオ」が1999年7月に撮影したイオの火山活動によるガスとちりの噴出であるプルームの画像。人間の目で見た場合には、プルームはほぼこのように見える。
400以上の活火山が存在
イオで火山活動が初めて確認されたのは1979年のことだ。 米航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機「ボイジャー1号」によって確認された。地球以外で火山活動が確認されたのはこれが初めてだったが、これまでにイオでは400以上の活火山が発見されている。
NASAの宇宙探査機「ボイジャー1号」が撮影したイオの火山活動によるプルームの画像。
2000年12月から01年1月にかけてNASAの土星探査機「カッシーニ」とガリレオによって撮影された画像。上の4枚の画像はカッシーニ、下の2枚はガリレオの画像となる。なお、カッシーニは土星に向かう途中で木星に立ち寄った。
上の4枚の画像のうち右の2枚は紫外線で撮影されたものだ。北極と赤道の近くにそれぞれ火山活動によるガスとちりの噴出であるプルームを確認することができる。
このうち赤道の近くに見えるプルームは「ペレ火山」に由来するものだ。その高さは390kmほどにもなると推定されている。ペレ火山はこの画像が撮影された時点で、少なくとも4年間は活動を続けていた。
北極の近くに見えるプルームは「トヴァシュタル ・カテナ火山帯」に由来する。その高さは355~415kmほどと推定されている。イオの極地方でプルームが確認されたのはこれが初めてだった。
下の2つの画像は探査機ガリレオによって撮影されたものだが、それぞれひとつずつ巨大な茶色の輪っかを確認することができる。ペレ火山とトヴァシュタール ・カテナ火山帯のふたつのプルームの噴出物が堆積したもので、その直径はペレ火山のプルームのもので1,400kmほどにもなると推定されている。
イオの表面のクローズアップ画像。噴煙や火口などが見えている。
最新の研究によると、イオの火山活動は大気中における硫黄と塩素の同位体の存在比率から、太陽系が形成された初期から続いていることが示唆されている。このようなイオの活発な火山活動により噴出された火山ガスは、宇宙空間にまで広がり、木星の周りに木星の半径の1,000倍ほどにも及ぶことがある巨大なナトリウム雲などを形成している。
太陽系外惑星にも似た衛星が存在?
今年10月には、太陽系外惑星「WASP-49 b」にイオによく似た(活発な火山活動が存在する)衛星が存在する可能性があることを、NASAの研究チームが突き止めた。
WASP-49 bは地球から635光年に位置する木星と同じ巨大ガス惑星だ。2017年にその周りに巨大なナトリウム雲が発見された。
WASP-49 bとその主星の主成分は水素とヘリウムで、ナトリウムはごく微量しか含まれていない。そのためこのナトリウム雲をWASP-49 bやその主星に由来するものと説明することは難しい。
それでは、このナトリウム雲はどこからきたのだろうか?
実は、このナトリウム雲は奇妙な動きをする。例えば、WASP-49 bより速く進んだり、地球から遠ざかったりするのだ。もしナトリウム雲がWASP-49 bに由来するものならば、このような動きはしない。他にも、このナトリウム雲が一見して不規則な間隔でWASP-49 bや主星の陰に隠れたり、現れたりすることもある。
これらを踏まえながらコンピューターモデルを使って分析したところ、公転周期8時間ほどでWASP-49 bを公転しているイオによく似た衛星を想定すると、ナトリウム雲の奇妙な振る舞いをうまく説明することができることがわかった。NASAジェット推進研究所(JPL)の惑星地質学者で今回の論文の共著者であるロザリー・ロペスは、「太陽系外衛星の確認はとても異例なことです。しかし、イオの例があることで、わたしたちは活発な火山活動が存在する太陽系外衛星が存在しうることを知っているわけです」と説明している。
木星の前を通過するイオの画像。2000年12月にカッシーニが撮影した画像を基に合成されたものだ。イオの名称は、ギリシャ神話の最高神ゼウス(ローマ神話ではジュピター)に愛されたが、妻ヘラの怒りを怖れたゼウスによって牡牛に変えられたヘラの女官イオに由来する。
(Edited by Daisuke Takimoto)
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