「だから田口(真彩)でした」わたがしペアを解散した渡辺勇大が、19歳の新星と組んだ“決定打”とは?「田口は気遣い屋」「とんでもない成長力だな」(Number Web)

 渡辺勇大は、パリ五輪を五十嵐有紗(旧姓東野)との集大成と定め、2大会連続となる銅メダルを獲得。8月のジャパンオープンを最後に、東野とのペアを解消した。  その後の競技人生をどう描いていたのか。 「まずは何の種目をやるか。そして誰と組むか。どこを目指すか。その順番で考えました」  それまでの実績を考えれば、ミックスダブルス、そして東京五輪にも出場した男子ダブルスが浮かぶ。 「男子シングルスもありました。それは冗談ですけど」と笑って、渡辺は続けた。 「男子ダブルスとミックスダブルスとで迷った中で、男子ダブルスを勧められたりもしましたけど、オリンピック2大会でメダルを獲ったのはミックスダブルスです。自分が輝けるのはどっちかなって考えたときに、ミックスダブルスの方が可能性はあるかな、と思ったのが、正直なところです」

 種目を定めると、では誰と組むのがよいかを考えた。 「自分の中でリストアップしました。リストアップするときはいろいろな角度から考えました。若い選手だったり、自分と同じような年齢の選手だったり、同じような実力を持ち合わせた選手だったり、何人かいました」  候補を絞った上で、いちばん大切にしたのは「わくわくし続けたい」という思いだ。  そのとき渡辺の中で浮上したのが田口真彩だった。  田口は柳井商工高校時代、世界ジュニア選手権の女子ダブルスで優勝するなど将来を嘱望されていた選手だ。  2024年の春、西京銀行に入行し、同行の実業団チーム「ACT SAIKYO」に加入しプレーしていた。 「田口がいちばんわくわくしました。一緒に成長して、世界一になれるんじゃないかなと思ったのが大きな理由ですね」  ただ、それまで渡辺と田口との接点は限られていた。


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 その中で強く印象付けられる出来事があった。 「彼女が高校生のとき、学校に行って一回だけ一緒に練習したことがあるくらいです。映像とか成績とかいろいろなものも見ましたが、いちばん大きかったのはそのときに感じた、一生懸命なところです。その高校全体も一生懸命にやる選手が多くて、『すごいな、僕は高校生のとき、こんなに一生懸命だったかな』って思うくらい必死に頑張っていましたけど、田口と一回羽根を交えたときに、特に一生懸命であるのを感じました。  もちろん技術が高い選手はたくさんいるし、成績が出ている選手もたくさんいます。もしかしたらそういう選手と組んだ方が結果が出るのは早いかもしれないし、結果を残せるかもしれない。でも僕は一緒にわくわくして、一緒に成長して世界一を獲りたいと思っているので、自分自身の成長も含めて一緒に頑張れる選手がいちばんでした。だから田口でした」  まずは所属先のチームの監督に話をするところから始まった。 「僕の思いを伝えながら、彼女のチームでの役割もきっとあったと思うので、押しつけるのではなく選択肢の一つとして考えてくれませんかと話しました。相談したのはいつだろうな……。パリオリンピックの前ですね。たぶん、多くの人が(東野との)ペアを継続すると考えていたと思うので、監督も多少驚いたと思います」  その後、エントリー期限がパリ五輪前に設定されていた全日本社会人バドミントン選手権に、田口とともにエントリーするに至った。

 田口と直接話す機会は、パリ五輪の直後に訪れた。 「ミックスダブルスという新しいものに挑戦する難しさもあるし、きっと迷いはあったと思うし、僕は決めつけるのはあまり好きじゃないので、やってみて合わなかったらやめて全然いい。きっと田口の方が選手生命は長いし、これからなので、田口が思うように選手生活を生きればいいし、プレーをしていけばいい、そういうふうに言いました」  田口の返事は「頑張らせてください」だった。 「ほんとうの胸の内は分からないですよ。ただ、そう言ってくれたのは、僕自身はうれしかったですね」  デビュー戦となった全日本社会人バドミントン選手権では準決勝に進出、そこで敗れ大会を終えた。その成績以上に、渡辺にとって印象深い時間となった。 「感じたのは伸びしろばかりでした。2人で練習も積めていない中で、能力としては問題なかったし、もちろん緊張とかプレッシャーは大きく感じていたのかなと思いますけど、それはあって当然のことで、これからどうとでもなる話です。一生懸命にプレーする姿とか、ミックスダブルスの経験が浅くて思い通りいかない中、それでも勝ちに結びつけようという執念というのは感じて、僕としてはプレーできてよかったし、やっぱり一生懸命やる選手だなというふうに改めて再確認しました」

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