大阪万博:大阪メトロ中央線トラブルで万博会場周辺に3・8万人足止め、1・1万人は一夜明かす…多数が夢洲から徒歩で脱出 : 読売新聞

 大阪・関西万博の来場者が13日夜、大阪メトロ中央線のトラブルで帰宅困難となった問題で、会場の人工島・ 夢洲(ゆめしま) (大阪市此花区)から徒歩で橋を渡り、島外に移動する人たちが多数いたことが、スマートフォンの位置情報の分析でわかった。通常は徒歩での帰宅は想定されていないが、交通手段についての日本国際博覧会協会(万博協会)の情報発信が遅れたため、徒歩移動を選んだ人が多かったとみられる。

 会場に直結する大阪メトロ中央線では13日午後9時半頃、電気系統のトラブルで全線が運行を停止した。万博協会は22日、この時点で会場内や周辺で約3万8000人が足止めされ、約1万1000人が一夜を明かしたと推定されると発表した。

 中央線は13日午後10時10分に最寄りの夢洲駅と、隣にあるコスモスクエア駅との間で運転を再開した。同駅から別の路線を経由して大阪市中心部までの 迂回(うかい) ルートが確保されたが、万博協会が中央線の運行情報を公式アプリなどで周知したのは翌14日午前1時を回ってからだった。万博協会は、夢洲駅に人が殺到するのを懸念したとしている。

 読売新聞は、ソフトバンク系情報サービス会社「Agoop(アグープ)」(東京)からスマホアプリの位置情報に基づく13~14日の会場や周辺の滞在人口のデータ、移動状況の動画の提供を受けた。個人情報は含まれていない。

 動画では人の動きが移動速度別に色分けして表示されるため、徒歩や車などの移動手段を推測できる。万博協会は、周辺はコンビニなど飲料を買える施設が少なく、夜間で事故の危険性もあるとして、徒歩での帰宅は推奨していない。夢洲から徒歩で移動できるのは、橋でつながっている人工島の 舞洲(まいしま) だけだ。

 13日午後10時以降は夢洲から舞洲に向かう夢舞大橋を徒歩で渡る人が増えていき、14日午前1時台まで目立った。気象庁によると、大阪市の13日午後11時の気温は29・1度だった。

 13日夜に舞洲で取材した記者は、夢舞大橋で数十人が列をなして歩いている様子を目撃した。タクシーを探してもつかまらず途方に暮れ、終夜運転をしていたJR大阪環状線の西九条駅方面に向かう人もいた。夢洲から同駅までは約10キロ・メートルあり、徒歩で2時間程度かかる。

 東京都の男性(49)は夢洲駅周辺で待っていたが、人混みに疲れ、家族とともに橋を渡ったという。「周りの人から『歩いて夢洲から出られるルートがある』と聞き、方向がよく分からないまま人の流れに沿って歩いてきた。夜でも暑く、歩くのは地獄だった」と話した。

  防災・危機管理に詳しい永松伸吾・関西大教授の話 「万博協会はもっと早く情報を発信し、対応している姿を見せることで来場者に安心してもらうべきだ。不安になった群衆が勝手に動き出すことが最も雑踏事故につながる危険性がある。鉄道の輸送障害は災害時と異なり、道路や橋の安全性が確保されているため、徒歩で帰ってもらうという運用も考えられる。その場合、ルートや所要時間などの情報を提供し、水や食料を配布すべきだろう」

マイカー出迎え解禁へ、協会が改善策

 万博協会は22日、多くの帰宅困難者が出た13日夜~14日の対応に課題があったとして、改善策を発表した。交通トラブルで帰宅困難者が発生した場合、原則として会場にとどまるよう呼びかけ、情報発信や会場での受け入れ態勢を強化するとしている。

 今回のトラブルでは、徒歩帰宅などのルールが定まっておらずに混乱を招いた。それを踏まえ、深夜に足止めが発生した際は、原則的に会場にとどまることを推奨。一方で、舞洲のパークアンドライドなどの駐車場に場所を限定し、徒歩で移動した上でマイカーでの出迎えを解禁する。

 遅れが目立った交通手段などの情報発信について、万博協会は「来場者目線で欲しい情報をタイムリーに発信できなかった」とし、責任者を決めた上で、公式アプリやSNSなど複数の方法で最新情報を発信するとしている。

 会場での来場者の受け入れを巡っては、どのパビリオンや施設を開放するかが事前に決まっておらず、開放施設の情報提供にも時間を要した。その反省から、受け入れに適した施設と事前協議した上で待機場所を確保する。

 帰宅困難者のための備蓄物資は、朝になって飲料水のペットボトルが配布されただけだった。今後はモバイルバッテリーやおむつなども含め、迅速な提供を目指す。

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