接触を拒む部族に近づいたインフルエンサー、実刑判決を受ける可能性
またか…。
アメリカのソーシャルメディアで影響力を持ついわゆるインフルエンサーが、またしても海外で愚かな上に、とんでもなく無礼なことをやらかしたようです。
違法接触を試みる
先住民族や部族民の権利を擁護する団体Survival International(サバイバル・インターナショナル)の声明によると、去る3月にNeo-Orientalist(ネオ・オリエンタリスト)という名前で活動しているユーチューバーのミハイロ・ビクトロビッチ・ポリャコフ容疑者が、センチネル族と呼ばれる保護対象の先住民族と違法に接触しようとしたそうです。
同団体によると、センチネル族は世界で最も孤立した先住民族の1つであり、外部の人間との接触は、彼らのコミュニティに壊滅的な病気の蔓延を招く恐れがあるとのことです。
北センチネル島の現状と過去の接触の試み
センチネル族は、インド洋に浮かぶマンハッタンほどの大きさの森林に覆われた北センチネル島に住んでおり、すべての外国人との接触を激しく拒否しています。
サバイバル・インターナショナルによると、インド政府は1970年代から90年代にかけて、センチネル族との接触を繰り返し試みたものの、暴力事件や時には死者も出たため、彼らと友好関係を築くことを諦めたとのことです。現在、北センチネル島への訪問は明確に違法とされています。
しかし、そんなのどこ吹く風とばかりに、北センチネル島に上陸したポリャコフ容疑者は、ココナッツの実とコーラの缶を残せるだけの時間を同島で過ごしましたが、ラッキーなことにセンチネル族と遭遇せずに済んだのだとか。
でも、アンラッキーなことに、インド当局に逮捕されてしまったポリャコフ容疑者は、現在実刑判決を受ける可能性に直面しています。
無謀な行動が招いたかもしれない最悪の事態
サバイバル・インターナショナルは、次のような声明を発表しています。
「ソーシャルメディアで注目を集めようとする身勝手な彼の違法行為によって、センチネル族が免疫を持たないインフルエンザのような新たな病気がまん延し、センチネル族を全滅させる可能性がありました」
実のところ、孤立した先住民族コミュニティが、外部との接触によって壊滅的な打撃を受けた例は過去にもあるといいます。
サバイバル・インターナショナルによれば、小アンダマン島近隣に住むオンゲ族の人口は、イギリスの植民地主義者とインドからの入植者がやってきた後に85%減少。
大アンダマン人にいたってはさらに悲惨で、強制的な接触によって人口が99%も減少したそうです。なぜそんなに入植したがるのかちょっと理解不能です。
ポリャコフ容疑者自身も、命を落とす可能性がありました。たとえ実刑判決を受けたとしても、2018年に伝道目的で北センチネル島に不法上陸して、最終的にセンチネル族に殺害されたアメリカ人宣教師のジョン・アレン・チャウ氏に比べればハッピーエンドといえるでしょう。
謎に包まれたセンチネル族の生活
センチネル族についてはほとんど何も知られていないんですよね。私たちにわかっているのは、センチネル族の弓矢の射程距離外から観察したことや、暴力に発展しなかったほんのわずかな交流(1991年にはインド当局からの贈り物をセンチネル族が受け取ったことがあったそう)から得られた情報くらいと、サバイバル・インターナショナルは声明で説明しています。
センチネル族は熱帯雨林の中で狩りをしたり、木の実を集めたり、アウトリガーカヌーのような小舟を使って漁をしたりして生計を立てており、大きめの共同小屋か、少し小さめの仮設避難施設のような住居で暮らしているそうです。
また、弓や矢、槍などの道具も自分たちで作っているといいます。子どもや妊娠中の女性の姿も確認されており、人口は150人程度と推定されています。
しかし、センチネル族が自分たちのことや北センチネル島をどう呼んでいるのかについてはわかっていません。日本人も自分たちをジャパニーズとも、自国をジャパンとも呼びませんものね。ジャパンと呼ぶのはヒロミ・ゴーくらいです。
19世紀に起こった誘拐の傷跡
19世紀にはイギリスの軍人が部隊を率いてこの島を訪れ、高齢者2人と子どもを4人誘拐する事件がありました。高齢の2人は亡くなり、そのあとで子どもたちは贈り物と一緒に島へ帰されました。この事件がもたらした影響については不明ですが、子どもたちが外部から病気を持ち込んだ可能性は高いと考えられています。
こうした経験の積み重ねが、外部の人間への強い拒絶や、世代を超えたトラウマ(心的外傷)につながっているのかもしれません。トラウマにもなるよね。先住民にとっては侵略されてるようなものだろうから。
いまさらセンチネル族がどう思っているかなんて、言わずもがなではありますが、サバイバル・インターナショナルは声明でキッパリとこう言い切っています。
「センチネル族は、接触を望んでいないという意志を明確に示しています。賢明な選択です」
センチネル族以外の人たちが、島を訪れるという賢明じゃない選択をしませんように。
Reference: Wikipedia