20カ所のナイフ傷、無数のあざ それでも「女性は自殺」の見解変えず 米フィラデルフィア

エレン・グリーンバーグさん(左)と両親の日付不詳の写真/Courtesy Greenberg Family

(CNN) 2011年に自宅のキッチンで遺体が発見され、全米で大きな論議を巻き起こした女性の死をめぐり、フィラデルフィア市検視局は13日、改めて自殺だったと断定する報告書を発表した。

当時27歳だったエレン・グリーンバーグさんは11年1月26日、自宅のキッチンで死亡しているのが見つかった。遺体には約20カ所のナイフ傷があり、全身に無数のあざがあった。両親は今も、娘は殺害されたと訴え続けている。

両親は真実を追求して複数の訴えを起こし、ネット上の嘆願運動では16万7000の署名が集まり、Hulu(フールー)配信のドキュメンタリー番組も制作された。グリーンバーグさんの検視を担当した病理学者は今年に入って自身の見解を覆し、自殺だったとは思えなくなったと述べていた。

しかしフィラデルフィア検視局は13日、証拠を検証した結果、先の結論を再確認したとする報告書を発表。リンゼイ・サイモン検視局長は「エレン・グリーンバーグが死亡した経緯は『自殺』と分類するのが最も適している」と結論付けた。

報告書によると、学校教員だったグリーンバーグさんは死亡した当時、特に生徒の成績の付け方をめぐって不安の症状に苦しんでおり、「不安思考に基づき行動するエネルギーが増大していた」とされる。

遺体に残された多数のナイフ傷のうち、少なくとも一つは首の後ろ側にあった。しかしサイモン氏は「確かに異常だった」としながらも、「エレン自らこうした傷を生じさせることは可能だったという事実は変わらない」と指摘。遺体に残された傷の多くは「ためらい傷」と一致すると判断した。

グリーンバーグさんの遺体は、同居していた婚約者のサム・ゴールドバーグさんが発見して通報した。ゴールドバーグさんにも疑いの目が向けられたが、グリーンバーグさんとの間に虐待関係はなかったと検視局は断定し、グリーンバーグさんを傷つけたナイフからゴールドバーグさんのDNAは検出されなかったと発表した。

その上で、ゴールドバーグさんの証言は、電話やメッセージの記録、防犯カメラの映像、警察の事情聴取などで裏付けられていると説明。グリーンバーグさんの遺体に身を守ろうとしてできた傷痕はなく、アパートで争った形跡もなかったと確認した。

エレン・グリーンバーグさんと婚約者だったサム・ゴールドバーグさん/Courtesy Greenberg Family

サイモン検視局長は、検視結果や警察の記録、写真、専門家(グリーンバーグさんの両親が雇った専門家を含む)の証言、さらにはフールーのドキュメンタリー番組を検証した結果、今回の結論に至ったとしている。

この見解に対してグリーンバーグさんの両親側の弁護士は、「最初から決まっていた結論を正当化しようとする試み」と位置付けて強く反発。「エレン自らが全ての傷を生じさせることはできないと証明した3Dフォトグラメトリー(複数の写真から3Dモデルを作成する技術)、説明のつかないあざ、欠落した防犯カメラの映像、手付かずだった鍵、有害な関係の証言など、自殺と矛盾する重要な証拠を無視することで、エレンの心の健康状態をゆがめて描写し、エレンが対処できていた不安をねじ曲げて、薄弱な主張を組み立てた」と非難している。

検視局は2月、両親がフィラデルフィア市を相手取って起こした裁判の和解の一環で、グリーンバーグさんの死因の再検証を行うことに同意した。この裁判では市が責任を認めないまま、両親が和解金を受け取ることになった。

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