Game*Sparkレビュー:『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』特徴を弱めてもなお特徴的すぎる、唯一無二の魅力を持つJRPGシリーズの新たな結実

『モンスターハンター』シリーズのモンスターを仲間にして、それに“ライド”して旅をする。そのコンセプトと、デフォルメされたアートから分かる通り、シリーズ1作目『モンスターハンターストーリーズ』はもともと主なターゲットに子ども達を見据えていました。戦闘システムも、じゃんけんを連想するプリミティブな「三すくみ」が主体のコマンドバトルとなっています。

しかし、2作目以降、シリーズはより高い年齢層を見据えたブランディングに変化していきます。シナリオのトーンはよりシリアスなものになり、キャラクターの頭身も『モンスターハンターストーリーズ3』ではついにリアル等身へと変更。「もっとRPGらしく」をコンセプトに、三すくみ以外のコマンドをより優位にするなど、戦闘の複雑化も図られています。

筆者はプレイ前、この変化について不安を感じていました。より大人向けに、より「RPGらしく」するということは、他の群雄割拠たるJRPGたちと同じ土俵に立ち、シリーズの特徴を薄くするということでもあるように思えたのです。

しかし、実際にプレイしてみると、それは杞憂であることがわかります。本作はたしかに既存のJRPGの形式にいくつかの面で接近しているものの、それでもシリーズの培ってきた独自性は強すぎたのです。『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』は、これまで、自身がターゲットでないと思っていたJRPGファンにこそ触れてほしい堅実かつ独創的な作品となっています。

『モンスターハンターストーリーズ』の戦闘

『モンスターハンターストーリーズ』シリーズは、モンスターを「オトモン」と呼んで共に戦う「ライダー」と呼ばれる人々が主人公となっています。そのため、戦闘はオトモンとライダーのペアで行うのが基本。

戦闘中に「絆ゲージ」を最大まで溜めて、オトモンに「ライド」し、強力な「絆技」を発動するといったシステムから分かる通り、さまざまな面で“モンスターとの絆”というテーマがゲームに落とし込まれています。

戦闘システムはターンベースのコマンドバトルですが、根幹となるのはじゃんけん的な「三すくみ」の仕組みです。モンスターとプレイヤーの攻撃は大きく「パワー」、「スピード」、「テクニック」の三種類に分かれており、それぞれ「パワーはテクニックに強い」、「スピードはパワーに強い」、「テクニックはスピードに強い」という有利不利を持っています。

攻撃の際、ターゲットがお互いに向き合っている状態をこのゲームでは「真っ向勝負」と呼ぶのですが、その際に三すくみに勝てるとダメージ量などに大きくボーナスがかかります。もちろん、完全にランダムなじゃんけんというわけではありません。敵モンスターごとに出しやすい手はことなっており、モンスターの行動をよく見ていけば真っ向勝負に勝利できるデザインになっています。

二作目『モンスターハンターストーリーズ2』は、この真っ向勝負の遊びをさらに戦術的かつ爽快なものに仕上げた作品でした。一作目の敵モンスターの「パワーとテクニックのどちらかを使う」というような二択の行動パターンを廃止し、そのターンに出してくる手を一種類に固定化したのです。そのため、三すくみの勝利にランダム要素がなくなりました。

モンスターがランダムに手を変えてくるということはなくなりましたが、じゃんけんの意味がなくなったわけではありません。敵モンスターは戦闘中、時折その“形態”を変化させます。怒り状態になったり、体に氷をまとったり、空を飛んだり、といった変化が起こると、そのモンスターは形態にあわせて出す手を変えてしまうのです。

当然、初見のモンスターがどの形態でどの手を使ってくるかはわかりません。なのでしっかりと敵モンスターの行動を観察することが大事。形態ごとの手をしっかりと覚えることで、試合中の真っ向勝負を「かならず勝てるじゃんけん」へと変えることができます。

そして、この三すくみの気持ちよさをさらに高めてくれるのが「ダブルアクション」というシステムです。オトモンと敵、もしくはプレイヤーと敵が向かい合っている時、オトモンと同じ手で真っ向勝負に勝利すると、ダブルアクションが発動。相手の攻撃を無効化する上、絆ゲージが大きく上昇するなど、多くのボーナスが得られます。

つまるところ、『モンスターハンターストーリーズ2』は、敵の行動を覚えて着実にじゃんけんに勝てるようにしつつ、ついでにダブルアクションも狙っていく―一方で、じゃんけんに負けたり敵の行動に対処できないと一気にピンチになる―というようなピンチとチャンスが表裏一体の戦闘システムになっていたのです。

『モンスターハンターストーリーズ3』もおおむね上述のようなシステムを引き継いでおり、コマンドバトルRPGとして独自性の強い戦闘は健在です。その上で本作は、それらの“三すくみの勝利だけが正解ではない”戦闘になるように変更が加えられています。

一番明確な変更は、さまざまな効果を持つ技「スキル」の使用に「絆ゲージ」を消費しなくなったことです。これまでのシリーズでは、ハンターとオトモンのスキル使用と、絆技の発動に必要なゲージが同一のリソースとなっていました。

今回はそれらのスキルを使用するための新たなリソースとして「スタミナ」が登場。ようはシンプルに『ドラゴンクエスト』シリーズでいうところの「MP」のようなシステムが追加された形です。このため、過去作のような「絆技も使いたいけど、スキルも使いたい」というようなコンフリクトはなくなり、スキルも戦闘中の選択肢としてバンバン使っていけるデザインになりました。

新武器種「太刀」の駆け引きが熱い

過去作にあった「絆技を使うべきか、スキルを使うべきか」というジレンマは、コンフリクトではなく、プレイヤーに選択を迫る戦術的な要素だったと捉えることもできます。『F-ZERO』で機体の体力とブーストゲージが同一のものになっているために常にリスクリターンに迫られるように、ジレンマがあるからこその戦闘の楽しさが『ストーリーズ2』にはあったのではないかとも思えるのです。スタミナの登場はそういった鋭い駆け引きを失わせ、緊張感の弛緩に繋がってしまっている部分もあると感じています。

一方で、より自由にスキルを使えるようになったからこそ際立つ魅力が生まれていることも間違いありません。

もともと、本編『モンスターハンター』シリーズは武器種ごとに大きくことなる遊びが楽しめることが魅力の一つですが、『モンスターハンターストーリーズ』シリーズも、その武器種ごとの遊びの多様さをコマンドバトルRPGにいかに落とし込むかには注力されてきました。

その遊びの多様さへのこだわりが、今回のスキル使用の優位性向上の施策とマッチしており、純粋に「得物をどのように使いこなすか」という『モンスターハンター』らしい戦闘の感覚を生むことに成功しています。

特に、今回からのあらたな武器種である「太刀」は、これ単体で旧来の三すくみの遊びと並ぶほどに爽快な仕様となっており、筆者は太刀をメイン武器としてメインストーリーを進めました。

太刀の最大の面白さは、「パリィ」です。といっても、敵の攻撃にあわせてタイミングよくボタンを押して弾くということではありません。あくまでターン制の戦闘の中にパリィ的な気持ちよさが落とし込まれているという意味で非常に面白い武器となっています。

その要となるスキルは「気刃解放斬り」。そのターン敵の攻撃を無効化しながら、カウンターをして相手に大ダメージを与える技です。

このスキルは最初から使用できるわけではなく、あらかじめいくつかの準備が必要となってきます。1つ目は、太刀の持つ専用ゲージ「練気ゲージ」を溜めること。練気ゲージは、「気刃斬り」などの特定のスキルで相手を攻撃するか、真っ向勝負で勝利した時、最大3段階まで溜めることができます。

2つ目は、練気ゲージが1つ以上ある際に発動できる「猛追の構え」などのスキルを使用して、「特殊納刀状態」に移行すること。この特殊納刀状態になった時、はじめて「気刃解放斬り」を放つことができます。

基本的に本作の敵モンスターは、特定の条件下で、こちらを一気に不利にするような大ダメージやデバフのある非常に強力な攻撃を放つような行動パターンを持っています。特にゲーム終盤はそれらをどのように凌ぐかが勝敗を大きく左右するのです。

そのため、太刀使いならば当然それらの強力な攻撃のタイミングにあわせて「気刃解放斬り」を決めていきたい。しかし、特殊納刀状態は、1ターンに1段階練気ゲージを消費する仕様であり、練気ゲージが0になると解除されてしまいます。

つまり、仮に練気ゲージを3段階目まで溜めていても、敵の強力な攻撃にあわせて「気刃解放斬り」を放てる猶予は3ターンしかないということで。練気ゲージが1段階の状態で特殊納刀状態に移行してもよいですが、その場合特殊納刀状態は1ターンで終わるため、かならずそのターンに大技が来ると分かっている時以外にこの選択をするのはリスクが高いです。

というように、太刀は“ターン制のパリィ”といえる独特なシステムになっています。準備に時間をかければカウンターに猶予が生まれるというリターンが得られる一方で、敵の攻撃に間に合わないリスクを抱える。準備に時間をかけない場合、今度は敵の攻撃よりも速く特殊納刀状態が終わってしまうというリスクを抱える。このリスクリターンの戦術の中で、相手の攻撃を上手くカウンターできたときの気持ちよさは格別なものとなっています。

細かな描写の数々で輝く魅力的な仲間たち

『モンスターハンターストーリーズ』シリーズは、ターゲットとする年齢層が高くなるにつれ、主人公の年齢もあがってきました。『モンスターハンターストーリーズ3』の主人公は青年~大人といった雰囲気であり、設定的にもすでに熟練したライダーとして登場します。

これまでのシリーズとことなり、本作の主人公は自我を持って喋り、行動します。舞台の一つとなる「アズラル王国」の王子/姫という重役でありながら、「レンジャー隊」の隊長として環境の調査にも赴くという忙しない日々を送っているという設定。

このように今回主人公にキャラクターがあるため、シナリオでも主人公の過去を掘り下げたりと、これまでよりも当事者的な側面が強くなっています。

レンジャー隊の隊長という設定であることからわかるとおり、主人公と冒険を共にする仲間たちはそのレンジャー隊の隊員たちになっています。基本的に皆ライダーであり、それぞれにオトモンを持っており、戦闘に参加させることが可能です。

本作のシナリオの最大の魅力は、そんな隊員たちの掛け合いの豊富さだと感じています。メインストーリー上での活躍はもちろん、彼ら一人一人に存在する「サイドストーリー」、移動中やフィールド上の拠点「キャンプ」で見られる専用のテキストなど、とにかくみんな喋りまくります。

サイドストーリーで仲間キャラを掘り下げるというのはJRPGとしてはベタな手法ですが、その分しっかりと機能しています。遊びやシナリオのトーンもメンバーごとにことなり、起伏に富んでいるのも嬉しい部分です。

メインストーリーやサイドストーリーのテキストは基本フルボイスとなっています。一方で、フィールド上やキャンプ内で発生するテキストについてはボイスはありませんが、その分テキスト量は膨大です。ストーリーの展開やプレイヤーの行動にあわせて逐一会話が用意されているような形で、キャラクターが生き生きとしていることが感じられます。

また、今回は主人公も喋るので、主人公と他キャラクターとの掛け合いも豊富です。優しくニュートラルな印象の主人公なので、個性の強い隊員たちに振り回されるような様子がかわいい。

「環境保護」という主題に対して、葛藤のない直線的なストーリー

加入したオトモンを野にかえし、生態系を維持していく、「里孵し」というシステムも本作の新たなフィーチャーの一つです。

これまでのシリーズと同様、オトモンの入手方法は、「モンスターの巣」に乗り込んで、そのタマゴを確保し、厩舎に持ち帰って孵すというサイクルになっています。「里孵し」とは、簡単に言えばそれらによって入手したオトモンを「にがす」システムなのですが、これまでのようにただいなくなるわけではなく、にがす場所やにがすオトモンによって、その土地の生態系に変化をもたらします。

たとえば、特定のモンスターをその土地に何体も里孵しして生態ランクを上げていくと、突然変異種のモンスターが出現するようになったり、特定のモンスターのタマゴが入手しやすくなったりとやりこみ要素の一種としても機能しているシステムです。

過去作同様、生まれたてのモンスターには子供の姿の専用グラフィックがある

モンスターの巣の内部の構造も、過去作のような道中エリアがなくなり、直接タマゴのあるエリアに入る形に変わっています。そのため、どんどんモンスターを孵して、どんどん逃がしていくというサイクルが生まれやすくなりました。モンスターの強化のために他のモンスターからさまざまな効果を持つ遺伝子を受け継ぐ「伝承の儀」のシステムについても、これまでよりもモンスターを入手する頻度が増えているために強力な遺伝子が入手しやすく、より触れやすいものに変化しています。

この「里孵し」は、設定的にもレンジャー隊の重要な任務の一つとされており、シナリオも「環境保護」をテーマとしています。もともと、『モンスターハンター』シリーズ本編でも、環境保護のために生態系を乱すモンスターを倒すといった展開はおなじみですが、『モンスターハンターストーリーズ』はあくまでモンスターを仲間とする“ライダー”の物語。モンスターと共に歩む者だからこその、ある種内側からのアプローチが描かれるのです。

このテーマはストーリーのはじめから最後まで一貫しており、主人公の行動理念もつねに環境を守る、よりよくすることにあります。シナリオに大きなプロットホールもなく、主人公の行動も一貫しているため、最後まで感情移入して物語を楽しむことができました。また、カットシーンにおけるアニメーション、エフェクト、フェイシャル面も過去作よりもさらにリッチになっており、グッと臨場感が増していることが感じられます。

一方で、全体として目的に対して一直線すぎる、予定調和な内容であるために、ストーリーで驚きや感慨が得られることはありませんでした。主人公の実直な行動理念に対して、その障害となるものが描かれることがなかったのです。

主人公たちレンジャーの環境保護の活動は、人とモンスターが共生するために不可欠なことです。手つかずの自然とは、強者が弱者を淘汰する環境となってしまうのが常であり、人も自然の一部である以上、お互いに住みやすい状態を模索していくことは現実においても必要となってきます。

しかし、自然に人が手を加えるということは、正解ないことに対して人が正解を決定づけなければいけないという危険性をはらんでいることも事実です。ですが、このゲームのシナリオは、“主人公以外の勢力の選択が極端すぎる”ために主人公たちの行動の危険性が矮小化され、ないもののように扱われてしまっています。

主人公が葛藤し、よりよい答えを追求するよりも前に、もっと直接的で喫緊の問題が次々と舞い込んできてしまう。そのために、実態としては主人公の征く道に何も障害がないかのようにストーリーが進んでいってしまうのです。

こういったストーリーに対する違和感は、アートやシナリオ、カットシーンのトーンの面で子供向けな要素を廃し、デフォルメからリアリティへと移行しているからこそより強まっている側面もあるように思えます。ターゲットはどんどんと大人向けに、「よりRPGらしく」をコンセプトにしているにもかかわらず、シナリオは葛藤を伴わない直線的な内容となってしまっているのです。むしろ、純粋に「ライダー」と「ハンター」という本来相容れない存在の対立の構図や、登場人物の未熟さゆえの成長が描けていた過去作よりも、展開の起伏は弱まっているようにも感じられます。

三すくみ以外の選択肢をより優位にし、駆け引きの面白さをより複雑化した戦闘システムは、本作の目指す「よりRPGらしい進化」の確かな成果といえる出来となっています。特に、新武器種「太刀」に象徴されるリスクリターンの楽しさは、スキル使用のための新たなリソース「スタミナ」が実装された恩恵を強く感じられます。

その戦闘システムの複雑化も含め、アートや演出面でもターゲットとする年齢層をより高くしようということが伺える本作。その一方で、シナリオ面は過去作よりも直線的な展開となっており、環境保護という切実なテーマにおいて、本質的に主人公の行動の障害となるものはなにも描かれません。

それでも、魅力的な戦闘システムと個性あるキャラクターたちの細かな描写、より描きこまれたアートなど、『モンスターハンターストーリーズ3』は大作JRPGとして不足のない作品に仕上がっていることは間違いありません。JRPGのストーリーにツイストを求めていないのであれば、モンスターと共に戦う本作ならではの冒険は文句無しの体験となるはずです。

  • 「必ず勝てるじゃんけん」なのに面白い、戦術的な三すくみの戦闘
  • 三すくみ以外の選択肢をより優位に、戦闘を複雑化する「スタミナ」の実装
  • 新武器種「太刀」の爽快なリスクリターンの駆け引き
  • 個性豊かな仲間キャラクターを魅力的に描く要素の数々
  • スキル使用と「絆技」のリソース共有が産んでいたジレンマによる鋭い駆け引きの消失
  • 主人公の選択を阻害するもののない予定調和で直線的なストーリー

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