理不尽な炎に奪われた夫 幼い子どもがつぶやいた、容疑者への一言
夫が事件当日に身につけていた遺品の時計を手にして思い出を語る女性=大阪市北区で2025年12月9日、三村政司撮影
12月が近づくと、胸の奥がざわつく。
静かな冬の朝だった。子煩悩だった夫は、容疑者が放った理不尽な炎に命を奪われた。
女性は突然、犯罪被害者の遺族になった。
当たり前の日常が崩れ落ちた。なぜ私たちが――。社会は不平等だと痛いほど知らされた。
それでも、残された子どもたちのために懸命に生きてきた。
あれから4年。年月の経過は、心を癒やしてはくれない。「この苦しみは死ぬまで続くと思う」
ただ、子どもが漏らした言葉に、思いもしなかった感情も芽生えている。
2021年12月17日、女性は職場でニュースを目にした。大阪・北新地の心療内科クリニックで火災が起きていた。
警察からの電話 どん底に
嫌な予感が頭をよぎった。
夫は正社員として働いていたが、多忙で心身に不調をきたし離職した。社会復帰を目指し、心療内科に通っていた。
通院先の名前まで知らなかったが、「もしかして」と不安が募った。
帰宅後に領収書を確認すると、夫が通っていたのは火災が起きたクリニックだった。
何時間待っても連絡がつかない。
捜しに行きたかったが、目の前には幼い子どもたちがいる。夕食や風呂を済ませた午後9時ごろ、警察からの電話でどん底に突き落とされた。
「旦那さんの身元確認に来てほしい」
患者だった男性容疑者がクリニック内に放火し、夫を含む26人が犠牲になった。
残された日誌に夫の思い
真面目で責任感の強い夫だった。朝から夜遅くまで働き詰めだったのに、いつも家族のことを気にかけてくれていた。無理がたたって体と心が悲鳴を上げたのかもしれない。ただ、離職後の時間は家族にとってかけがえのないものだった。
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