ブラウザ界の実験場、AIブラウザを月額20ドルで提供。尖りすぎ(ギズモード・ジャパン)

OperaはChromeやSafariほどのシェアはありませんが、長年にわたって尖った機能をいち早く試すブラウザとして知られてきました。 広告ブロックの標準搭載や、ブラウザ内で使えるVPN的な通信保護機能など、いまでは当たり前になった要素の一部は、Operaが先に実装してきたものです。そのため、「次に来るブラウザ体験を先取りしたい人」から支持されてきました。 UIはやや独特で好みが分かれますが、軽さや機能性に惹かれて、サブブラウザとして使い続けているユーザーも少なくありません。 今回のNeonは、そんなOperaの性格をかなり極端に押し出した存在だと言えそうです。

Operaがこの価格を正当化する理由は、Neonの中身にあります。 Neonには、Gemini 3 ProやOpenAIのGPT-5.1、Veo 3.1、Nano Banana Proといった高性能AIモデルが組み込まれています。通常なら個別に課金されるクラスのAIを、「エージェント型ワークスペース」としてまとめて使える、というわけ。 Operaは「最新かつ最も強力なAI技術が登場するたびにアクセスできる環境」だとアピールしています。言葉通りなら、Neonは単なるブラウザというより、AIツールの集合体に近い存在です。

Neonが目指しているのは、質問に答えるだけのAIではありません。 業界全体はいま、チャットボット型AIから、実際にウェブを巡回し、調べ、まとめ、作業をこなすエージェント型AIへと移行しつつあります。PerplexityやOpenAIはすでにAIブラウザを展開し、GoogleやMicrosoftもChromeやEdgeにAI機能を組み込んでいます。 Neonは、その流れに本格参入した形です。 Operaによると、Neonには役割の異なる4種類のAIエージェントが搭載されています。チャット用途のものもあれば、調査結果をGoogleドキュメントにまとめてくれるもの、コードや画像、動画を生成するもの、複雑なテーマを構造化したレポートとしてPDFにまとめるものもあります。これらは同時に動かせて、ブラウザのタブ感覚でAIプロジェクトを並行処理できる設計です。


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正直、かなり便利そうです。「一歩先のAI活用」を体現しているようにも見えます。 ただし、調査会社Gartnerは、Neonの公開の1週間前に「企業は従業員によるAIブラウザの使用をブロックすべきだ」と勧告しました。AIブラウザは、表示中のウェブコンテンツや閲覧履歴、開いているタブといった情報を、通常のブラウザ以上に把握できてしまうからです。 特に警戒されているのが、「間接的プロンプトインジェクション」と呼ばれる攻撃手法です。AIエージェントが自律的にウェブを巡回する途中で、悪意のあるページやコードに誘導されると、安全ルールを無視してしまう可能性があります。その結果、機密情報の漏えいや、意図しない操作、金銭取引が行われるリスクもあります。 英国の国家サイバーセキュリティセンターも、「プロンプトインジェクションが完全に解決される可能性は低い」と警告しています。 Opera自身も、Neonが特定の攻撃シナリオに脆弱だったことを認め、すでに修正したとしていますし、GoogleもAIをAIで監視する仕組みを導入するなど対策を進めています。ただ、いずれも発展途上です。

そう考えると、OperaのNeonは確かに前衛的で、最先端好きには刺さる存在です。ただ、AIブラウザはいまのところ、「便利さ」と「危うさ」が同居する段階でもあります。 新しい技術にいち早く触れたい気持ちは理解できますが、月20ドルを払うのは、安全性がもう少し見えてからでも遅くはないかもしれませんね。

中川真知子

ギズモード・ジャパン
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