2024年、スマホってだいたい同じでしたね
AIがどんなに画期的でも。
残念ながらここ最近のスマホは、AIを取り込むことばかりに必死で、イノベーションが止まってしまいました。SamsungもGoogleもAppleも、2024年のフラッグシップスマホにおけるマーケティングの中心はAIでした。彼らが注力したのは、洗練されたハードウェアでも、日々確実に使えるための性能でもありません。彼らはユーザーをAIの猛攻撃に備えさせ、まわりから遅れまいとスマホをアップデートさせようとしただけでした。
2024年は、ギミック的な機能追加や、「皆について行くためには新しいスマホが必要」という正当化で台無しになりました。その結果デザイン的には、スマホは変わり映えしないものばかりです。Samsung Galaxy S24 UltraはS23 Ultraを少し角ばらせただけだし、iPhone 16 Proも iPhone 15 Proとほとんど見分けがつきません。Google Pixel 9 Proはカメラバーを刷新しましたが、前から見ればほぼiPhoneだし、Pixelが何より中心に置いているのは、彼らのAI、Geminiです。
AIが適切に動いてくれて、仕事中でもぼーっと画面スクロールするときでも助けてくれるというアイデアには大賛成です。でも、AIのパフォーマンスを最優先することの代償は何でしょうか? AIがバッテリーをどんどん使うとなったら、スマホは今の薄さを維持できるでしょうか? バッテリーや余計なパーツを追加することになって、その分妥協する部分はないでしょうか? 2025年が始まる今、そんな疑問が浮かんできます。
AIだらけになった2024年
Samsungは2024年早々にGalaxy AIを打ち上げました。それはGoogle Geminiが予定していた能力と一部かぶっていましたが、新たな機能、かこって検索は画期的でした。それは2024年のAndroid界における最良の出来事で、その時点ではまだAndroid 15がデベロッパープレビューにもなっていませんでした。SamsungとGoogleはGalaxy S24のローンチで協力し、AndroidこそAIが作り出すすべてを体現していく存在だと訴えました。
GoogleはさらにPixel Dropを通じ、かこって検索や通話スクリーニング、そして直近ではGemini拡張機能などを展開していきました。春の開発者向けカンファレンスでは、Googleの主役がもはやAndroidではなく、Geminiであることが明らかでした。
Googleの姿勢を如実に表していたのが、Geminiベータをスマホに入れたとき、それがデフォルトのアシスタントに設定されてしまったことです。ずっとGoogleアシスタントを使ってきた私は、スマホと連携させてきたいくつかのハードウェア、たとえば車でハンズフリー操作するためのRoav Boltなどが突然使えなくなりました。
幸いその後Googleが何らかのアップデートをして再度Roav Boltも使えるようになりましたが、それは半年後、Geminiが完全にロールアウトときのことでした。スマホのプラットフォームが突然方向転換するとこうなるんだと、改めて思い知らされる事件でした。
いろいろとだいたい同じ。(Image: Florence Ion - Gizmodo US)AppleならAIに飛びつかないんじゃないか、そんな期待もありました。通常AppleはGoogleがやることをdisって、それがいかにスマホを破壊するかを説明してきました。でも6月のWWDCでは、しれっとApple Intelligenceが発表されました。そして、いつものAppleらしく、みんながやってることの名前だけ変えて、Apple独自の技術だと標榜したのです。しかもApple Intelligenceは、複雑なコマンドには他人が作ったChatGPTを必要としています。
少なくともAppleは、その点ではいつものAppleです。「Apple Intelligence」という名前のおかげで、「AI(Artificial Intelligence)」という言葉を使いすぎずに済むのが、せめてもの救いです。
画像生成の代わりに失うもの
最新スマホが出そろって数カ月経った今、各社がAI機能の売り込みに躍起になっています。AppleはPlayground、GoogleはPixelStudioと、プラットフォームごとに画像生成アプリも打ち出しています。
楽しい機能をありがとう、と言うべきなんでしょうか。
でも多くの人がスマホの画像関連で求めていたのは、これじゃなかったのではないでしょうか。それより私は、スマホにはもっと良いレンズを付けてほしいと思っているし、画面を大きくするために薄さが犠牲になるならそれでもいいとも思っています。でも今私が手に入れたのは、パロディ画像を作れる生成AI機能です。
Image: Florence Ion - Gizmodo USもちろんスマホのカメラは、今年も一様に少しずつ進化しました。でも今回、SamsungもGoogleもAppleも、写真を作るためのマジックはすべてAIありきに見えます。GoogleのPixelに至っては、カメラ全体が「AIは人間が編集ソフトでやりたいことすべて自動でできる」という前提でできています。AppleはiPhone 16で新たにカメラコントロールボタンを搭載しましたが、やはりアルゴリズムを使って、写真のボケを防いでいます。
ただ、AIを最優先することにはトレードオフがあります。AIはたとえば余計なプロセスを減らしたり画面の内容に応じて設定を変えたりして、バッテリー消費を抑える役にもたっていますが、それでも、画像生成にはスマホの限られたリソースを使うわけです。処理をクラウドで行なっている場合でも、何かしらスマホ側でも動かしているんです。
バッテリーだけじゃなく、AIのタスクにはメモリも使っています。だから最近のスマホのRAMの標準サイズは、16GBに増大しました。こういうハードウェアのせいで製造コストが上がり、それが価格に反映されるんです。最近のスマホの値段の高さは、全体的な物価高のせいだけじゃないのです。
だからって2025年のスマホは、AIのせいで巨大になったり重くなったりはしないと思われます。今まで通りスマートな強化グラスに大きく明るい画面で、リフレッシュレートは高く、色は鮮やかなのでしょう。むしろiPhoneやGalaxy S25 Ultraが薄くなるという噂もあります。Samsungの折りたたみスマホがもっと大きくなって、今までと違うユーザー層をねらうという説もあります。
AppleやGoogleやSamsungが、テック界での競争上必要とする機能と、ユーザーの利便性のバランスをどう取るのか、興味深いところです。どんなにAIがクレバーで素晴らしくても、そのせいで本体が激アツになって1日の途中で力尽きてしまうなら、意味がありません。