コラム:物価高騰に足元すくわれたトランプ氏、関税政策の見直し必至か

写真はトランプ米大統領。ホワイトハウスで18日撮影。REUTERS/Evelyn Hockstein

[ワシントン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の消費者は物価高騰に頭を抱えており、トランプ大統領は「相互関税」という自らまいた種によって足元をすくわれた格好だ。 全国を覆っている生活費不安に対応するため、トランプ政権は今年初めに導入した相互関税の対象から約400億ドル相当、200品目ほどの輸入食品を除外した。問題は、たとえ食料品が値下がりしたとしても、トランプ氏につきまとう経済の不振は残り続けるということだ。

東部バージニア州とニュージャージー州の両知事選などで共和党が予想を上回る敗北を喫したことで、バナナから牛肉に至るあらゆる物価の高騰がトランプ氏の物価対策の最優先課題に急遽、浮上した。輸入関税は「場合によっては」物価上昇につながるというトランプ氏の先週の発言は、関税を負担するのは輸出業者ではなく消費者だと暗に認めたもので、有権者や議員、裁判官からの批判の高まりさらされている不安定な政策の問題点を、トランプ氏が自ら指摘したとも言える。

消費者の景況感は再び悪化している。トランプ氏が「解放の日」と称して輸入品への「相互関税」導入を発表した4月以降、懸念されたような急激な経済危機が起きなかったため、景況感はいったん回復した。しかし注目度の高いミシガン大学消費者信頼感指数は期待指数が再び低下している。

A line chart that shows a consumer confidence index over the past 20 years. In the month of October, the overall index was 53.6, the view of the current economy was 58.6 and expectations for the future were 50.3.
経済運営はこれまでトランプ氏の最も強い分野の一つとされてきたが、世論調査は悲観的な見通しを示している。トランプ氏は17日に行われたマクドナルドのイベントで、家計負担軽減策のアピールに乗り出した。政府は期間50年の住宅ローン導入案を浮上させ、関税収入を財源として低・中所得層向けに2000ドルを支給する可能性も示唆している。
A line chart showing Nate Silver's polling average of Donald Trump's net approval rating on immigration, the economy, trade, and inflation, accounting for each poll's quality, recency, sample size, and partisan lean.

こうしたムードの変化は実際に形を持ち始めている。直近のデータから、民主党が来年11月の中間選挙で有意な議席増を達成できる可能性が高まっていることが読み取れる。例えばバージニア州では民主党が州議会で1989年来最大となる多数議席を占めている。スパンバーガー次期知事の生活費対策のメッセージが功を奏した。

A chart depicting first Virginia House of Delegates election in each of the last two presidential terms.

こうした問題が幅広い共感を得ている以上、関税縮小が第一歩にすぎないのは明白だ。格言には「穴にいるなら、まず掘るのをやめよ(問題に直面した際に、さらに状況を悪化させるような行為はさけるべきだ)」とある。議会共和党も密かに、最高裁がこの政策の法的根拠を無効化する可能性に期待を寄せている。実際にそうなれば、彼らは財政権限奪還の勇気さえ持つかもしれない。しかし、コーヒーとトロピカルフルーツはバリューメニューの軽い前菜に過ぎない。トランプ氏とその一派にここで立ち止まる余裕などない。

Line charts showing how much tariff revenue the US is collecting on different products
●背景となるニュース*米消費者の間で食品価格高騰への不安が広がる中、トランプ大統領は14日、コーヒー、牛肉、バナナ、オレンジジュースなど200品目余りの輸入食品について、相互関税の対象から除外する大統領令に署名した。 もっと見る

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

Gabriel Rubin is a U.S. columnist for Reuters Breakingviews covering business and economics in Washington, DC. He joined Breakingviews in May 2024 after eight years at the Wall Street Journal, where he covered economics, politics, and financial regulation. He holds a bachelor's degree in history and Spanish from Washington University in St. Louis.

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