人類が初めて目にする「太陽の南極の鮮明画像」、欧州探査機が撮影に成功(Forbes JAPAN)
太陽の最も近くからクローズアップ画像を撮影することを目指して2020年2月に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)の太陽探査機「ソーラー・オービター」が、人類史上初となる太陽の南極の鮮明な画像の撮影に成功した。 【画像】太陽探査機「ソーラー・オービター」撮影、人類史上初となる太陽の南極の鮮明な画像 ESAの科学局長を務めるキャロル・マンデル教授は「今日、人類が初めて目にする太陽の南極の画像を公開する」と11日に発表。「ソーラー・オービターのミッションから届いたこれらのユニークな最新画像は、太陽科学の新たな時代の幕開けを告げるものだ」と述べた。 一連の画像は、今年3月16~17日に撮影されたもの。ソーラー・オービターが太陽の赤道面から15度傾いた周回軌道に入り、初めて南極をカメラの視野に捉えることに成功した。 使用されたカメラは、可視光で太陽を撮像して太陽表面の磁場をマッピングする偏光測定・日震撮像装置(PHI:Polarimetric and Helioseismic Imager)、紫外線で太陽を撮像してコロナの観測を行う極端紫外線撮像装置(EUI:Extreme Ultraviolet Imager)、太陽表面上の異なる温度の荷電ガスが発する光を捉え、太陽大気の層を明確にするコロナ環境スペクトル撮像装置(SPICE:Spectral Imaging of the Coronal Environment)の3つである。 今回の観測における最初の大きな発見の一つは、太陽の南極の磁場が現在、非常に乱れた状態にあることだ。PHIによる観測データからは、太陽の南極にはN極とS極の両方の磁極が存在していることが明らかになった。 これはまれな状態であり、約11年周期で変動する太陽活動の周期がちょうど最も活発な「極大期」に入っていることと関連している。太陽の磁場は極大期に反転するが、今回の発見は、なぜ反転が起こるのかを解明し、より正確に予測するのに役立つ可能性がある。 ■太陽を新しい角度から見る ソーラー・オービターの画像は、今までにない角度から見た全く新しい太陽の姿だ。これまで撮影された太陽の画像はほぼすべて、地球上または地球近傍からの視点、すなわち太陽系の惑星の公転軌道面である「黄道面」から捉えたものだった。目玉焼きを思い浮かべてみてほしい。太陽が黄身だとすると、地球を含むすべての惑星は白身の中を公転している。 今回、ソーラー・オービターは初めて黄道面から外れた傾斜軌道に入った。2025年3月中に黄道面から17度傾いた軌道に達し、太陽の南極を直接観測できるようになった。「最初の観測でどんなことがわかるのか、正確なところは予測できなかった。太陽の両極は文字通り、未知の領域だ」とPHI観測チームを率いる独マックス・プランク太陽系研究所のサミ・ソランキ教授は語っている。