妊娠9か月の女性はねられ死亡、緊急手術で生まれた長女は意識不明のまま…「なぜ娘が被害者とされないのか」と署名活動

 愛知県一宮市の市道で5月、当時妊娠9か月の女性が車にはねられて死亡した。事故直後の緊急手術で生まれた女児は、意識不明の状態が続く。自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)で起訴された被告の初公判が9月2日、名古屋地裁一宮支部で開かれるのを前に、遺族が女児を負傷させた罪も問うよう求める署名活動を始めた。(大場暁登)

おなかの大きな沙也香さん。事故の4日前に撮影された(家族提供)

 事故が起きたのは、5月21日午後4時前。出産に備えて日課の散歩中だった 研谷(とぎたに) 沙也香さん(31)が、後ろから車にはねられた。頭を強く打ち、懸命の治療もかなわず、2日後に死亡した。

 夫の友太さん(33)によると、事故の約1時間半後、帝王切開で生まれた長女・ 日七未(ひなみ) ちゃんは、酸素が届かない時間が続き脳に重いダメージを負った。人工呼吸器が外せず、医師から「この状況から変わることはないだろう」と言われている。

帝王切開で生まれ、意識不明の状態が続く日七未ちゃん(家族提供)

 名古屋地検一宮支部は6月、研谷さんを死亡させたとして、車を運転していた同市の無職の女(50)を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)で起訴した。

 起訴事実は、あくまで研谷さん1人に対するもの。「母親にも抱かれず、外の世界を見ることもできない。なぜ、娘が被害者とされないのか」。友太さんは今月19日、日七未ちゃんに対する過失運転致傷罪でも被告を起訴するよう名古屋地検に求めるオンラインの署名活動を始めた。

 刑法では、胎児は「人」とはみなされない。ただ、熊本水俣病を巡る1988年の最高裁決定では、母親の胎内で発症し、生まれた後で死亡した事例で、胎児への業務上過失致死罪が成立すると認めた。

 甲南大の園田寿名誉教授(刑法)によると、これを重要な根拠として、鹿児島地裁は2003年、車の衝突事故で妊婦だけでなく、事故当時胎児だった女児も被害者として業務上過失傷害罪が成立すると判断した。

 静岡地裁浜松支部でも06年に、交通事故後に帝王切開で生まれ、約30時間後に死亡した男児についても業務上過失致死罪を適用する判決が出され、いずれも確定している。

 署名は開始から10日間で8万5000筆を超えた。友太さんは「問題提起をすることで妻と娘の命に意味づけができるのではないかと思う」と話している。

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