イスラエル、ガザ市のアル・シファ病院付近を空爆 アル・ジャジーラ記者4人が殺害される
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カタールの衛星放送局アル・ジャジーラは10日、ガザ市のアル・シファ病院付近でイスラエル軍による攻撃があり、現場で7人が殺害されたと発表した。殺害された中には、同局の記者とカメラマンが計5人含まれるという。
アル・ジャジーラの報道スタッフで死亡したのは、記者のアナス・アル・シャリフ氏、モハメド・クレイケ氏、カメラマンのイブラヒム・ザヘル氏、モハメド・ヌーファル氏、モアメン・アリワ氏。5人は、病院の正門前に設置された報道用テントにいたところを攻撃されたという。
アル・ジャジーラは当初、IDFのこの攻撃で、取材チームの4人が殺害されたと発表していたが、殺害された取材スタッフは5人だと数時間後に修正した。
アル・ジャジーラは声明で、記者とカメラマンを「標的にした暗殺」は「報道の自由をまたしてもあからさまに、かつ事前に計画して攻撃」したものだと非難した。
同局は2週間前に、イスラエル国防軍(IDF)がガザにいる同局の記者を敵対視する「扇動キャンペーン」を展開していると非難していた。
IDFは今回の攻撃後、アナス・アル・シャリフ氏を標的にしたことを認め、「ハマスのテロ細胞の指導者だった」と通信アプリ「テレグラム」で主張した。「ジャーナリストを装い、イスラエルの民間人やIDF兵に対して、ロケット砲攻撃を推進した」とも述べた。
さらに、アル・シャリフ氏が「複数のテロ訓練を受けていた記録」など、軍事的な関係の「情報をすでに開示済みだ」とした。
IDFは、「攻撃前には民間人への被害を軽減するため、精密兵器の使用、空中監視、追加の情報収集などの措置を講じた」としている。
IDFは、同時に殺害した他の記者については言及していない。
アル・ジャジーラのモハメド・モアワド編集長はBBCに対し、アル・シャリフ氏は記者として認証されており、ガザ地区で何が起きているか世界に伝える「唯一の声」だったと語った。
戦争が始まって以来、イスラエルは外国報道機関のガザ入りを認めていない。このため、多くのメディアは現地の記者に依存して報道を続けている。
モアワド編集長は、殺された記者たちは「前線で取材していたわけではなく、テント内で標的にされた」と指摘。「イスラエル政府はガザ内部からの報道を封じようとしている。これは現代史で見たことがない事態だ」とBBCに話した。
28歳のアル・シャリフ記者は、殺害される直前までソーシャルメディア「X」に投稿していた様子で、イスラエルがガザ市内を激しく爆撃していると伝えていた。
その死去が報じられた後に投稿された内容は、事前に準備されたもので、友人が公開したものとみられる。
BBCヴェリファイ(検証チーム)が確認した2本の映像には、犠牲者の遺体を運ぶ男性たちの姿が映っている。クレイケ記者の名前を叫ぶ声や、報道用ベストを着た男性が「これはアナス・アル・シャリフの遺体だ」と語る場面が含まれている。
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報道の自由を守る国際団体「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)は、IDFによる攻撃に衝撃を受けていると述べ、IDFはアル・シャリフ記者に関する自分たちの主張を裏付ける証拠を提示していないと批判した。
「これは今回の戦争だけでなく、これまで何十年にもさかのぼり、イスラエルが繰り返してきた行動パターンだ。イスラエル軍がジャーナリストを殺害すると、イスラエルは後から記者がテロリストだったと主張するものの、その言い分を裏付ける証拠をほとんど示さない」のだと、CPJのジョディー・ギンズバーグCEOはBBCに話した。
アル・ジャジーラは7月、IDFが「ガザ地区におけるアル・ジャジーラの特派員やジャーナリストを標的にした、扇動作戦」を「絶え間なく」継続していると非難する声明を出していた。
同社は、「(IDFによる)この扇動は、現場にいる我々の記者たちを標的にする、その行為の正当化を図る危険」なものだと主張していた。
ガザ地区でIDFがハマス関係者だと主張するアル・ジャジーラ記者を狙い殺害するのは、今回が初めてではない。
昨年8月には、車内に座っていたイスマエル・アル・グール記者とカメラマンのラミ・アル・リフィ氏がIDFの爆撃で殺害された。近くを自転車で通過していた少年も同時に殺害された。ソーシャルメディアで広く拡散された動画には、頭部を切断されたアル・グール記者の遺体が映っていた。
アル・グール記者についてIDFは、ハマスによる2023年10月7日のイスラエル奇襲攻撃に参加したと主張。アル・ジャジーラはIDFのこの主張を強硬に否定している。
「ジャーナリスト保護委員会」によると、2023年10月にイスラエルがガザへの軍事攻勢を開始して以来、これまでに記者186人の殺害が確認されている。
(追加取材:シャヤン・サルダリザデBBCヴェリファイ記者)