糖尿病と肥満症へのより積極的な対策を世界に呼びかけ 肥満は糖尿病に影響 治療は進歩 国際糖尿病連合
158の国と地域が参加している国際糖尿病連合(IDF)は、糖尿病と肥満症に対するより積極的な対策を世界中に求める声明を発表した。
「肥満は、世界全体の2型糖尿病の症例の43%を占める主な原因です。2型糖尿病の小児も増えており、肥満率の上昇が関連しています」と、IDF理事長でドイツ糖尿病研究センター教授のピーター シュワルツ氏は指摘している。
「糖尿病と肥満症という双子のパンデミックに対する緊急かつ協調的な行動が必要です」としている。
肥満症の治療は進歩している
シュワルツ教授は、3月4日の世界肥満デーに中国青海省で開催された肥満症の予防と管理のためのサミットで、オンライン演説を行った。
肥満のある人は、2型糖尿病と心血管疾患の発症リスクが高いことが知られている。体重管理に取り組み、健康的な体重を維持することは、これらのリスクを軽減するのに役立つが、食事や運動などのライフスタイルを改善するだけでは、十分に対策するのが難しい場合もある。
そうした場合に、医師の判断にもとづき、薬物療法も行われている。肥満症の薬物療法は進歩しており、糖尿病治療薬としても利用されているGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬などが使われている。
これらの薬は、血糖管理を改善するのに加えて、食欲を抑制し、満腹感を高めることで体重減少を促す。肥満症の薬物療法は、食事療法や運動療法とあわせて行うことが必要だ。
健康的な体重を維持すれば糖尿病も改善できる
「肥満症の効果的な治療は、もはや単なる補助的なものではなく、糖尿病の管理の重要な部分のひとつと考えられます。15%以上の減量を可能にする新しい治療法も利用可能になっており、2型糖尿病の管理も改善できると期待されています」と、シュワルツ教授は言う。
シュワルツ教授は、国際糖尿病連合(IDF)が策定した、2型糖尿病の管理のための「グローバル臨床実践レコメンデーション(Global Clinical Practice Recommendations)」を紹介した。
このレコメンデーションでは、糖尿病全体の90%以上を占める2型糖尿病の、体重管理に焦点をあてた2段階のケアレベルが解説されている。また予防・改善のために、運動療法、食事療法、糖尿病教育を組み合わせた戦略が重要であることが強調されている。
ここで扱われているトピックは、▼2型糖尿病の疫学、▼血糖管理の目標、▼非インスリン療法とインスリン療法により血糖管理、▼体重管理、▼心臓と腎臓の健康改善、▼代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と脂肪性肝疾患(SLD)が糖尿病に与える影響などだ。
中国は世界トップの糖尿病大国 肥満も社会問題に
日本や中国が含まれる西太平洋(WP)地域は、世界でもっとも糖尿病人口の多い地域で、糖尿病の有病率は12.4%で、2億1,540万人が糖尿病とみられている。
この地域で糖尿病が原因で死亡した人は、2024年には120万人に上ったと推定されており、やはり世界でもっとも多い。
とくに中国で、糖尿病と肥満が急増しており、社会問題になっている。20~79歳の成人の13.8%が糖尿病で、糖尿病人口は1億4,800万人とみられている。
日本の糖尿病の有病者数は約1,000万人で、中国で糖尿病とともに生きる人の数は、その15倍近くに上る。中国の糖尿病と関連する医療費は年間25兆円(1,680億米ドル)に上るとみられている。
また、中国の男性の39%が過体重で8%が肥満、女性の23%が過体重、4%が肥満とみられている。
中国の糖尿病と肥満の増加は都市部で顕著で、食事のカロリー摂取量の増加に加え、交通手段の発達と自動化により、国民の身体活動量が減少していることなどが影響している。
開催された肥満症の予防と管理のためのサミットは、「肥満症の予防と管理、デジタルヘルス:健康格差の解消」をテーマに開催され、世界中の100人超の専門家や関連機関の代表者が参加した。その模様は、人民日報や新浪ニュースなどのプラットフォームを通じて、120万人超の視聴者に届けられた。
A call for a united global response to diabetes and obesity (国際糖尿病連合 2025年7月3日) Global Clinical Practice Recommendations (国際糖尿病連合) Diabetes Data in the Western Pacific Region (IDF糖尿病アトラス) World Obesity Atlas 2023 (世界肥満連合)