「指定席」奪った子育てママの元記者 追い風やんだ国民民主での戦い
追い風は止まった。
それでも、長らく自民党と野党第1党が占めてきた指定席を奪った。
20年近く働いたNHKを辞め、国民民主党から参院選に挑んだ一人の女性。
「無風」だった選挙区にうねりを起こし、トップ当選した。
人々は何を思い、彼女に1票を託したのか。
当選までの道のりに密着した。
声が震えた公示日
女性は、千葉選挙区(改選数3)から立候補した国民民主新人の小林さやか氏(41)。
参院選が公示された3日、真っ白なシャツに千葉の海と「千葉県の花」とされる菜の花をイメージした青と黄のたすきを掛け、JR千葉駅前に立った。
「現役世代から豊かになる社会にするために、この千葉から変えましょう」
両手でマイクを握り締め、慣れない演説に時折声を震わせる。ただ、丁寧に言葉を紡ぐ姿が印象的だった。
NHKの元記者。18年間、医療や介護、福祉の現場を取材してきた。
3児の母であり、自身も仕事と育児の両立に悩み、苦しんできた。
「毎日、ビルから飛び降りたいと思うほどつらかった」
記者5年目で出産。夫が転勤で別居になり、「ワンオペ」で子どもを育てる日々を送った。
朝5時半に起きて夕食の仕込みをし、子どもを保育園に連れて行ってから出社する。夕方のニュースのため同僚は忙しくしているのに、自分は退社して子どもを迎えに行った。
災害や事件などの緊急対応ができず、給料は半分に。家計のやりくりが大変になった。
絶望感に襲われた夜
3人目が生まれた後、子どもが胃腸炎にかかった日のことが忘れられない。
翌日に大事な取材を控えていた。発達障害の子を預ける場所がないと困っている母親への取材だ。
取材を受けることをためらっていた母親を説得し、何カ月もかけて準備していた。報道によって現状を変えられるかもしれないという思い入れもあった。
その日の夜、吐いて泣き続ける我が子を抱きしめながら「もう無理かもしれない」と涙を流した。
翌朝、病児保育を何とか予約し、取材の時間に滑り込めたものの、子育てをしながらキャリアを積む厳しさに直面し、言葉にならない絶望感に襲われた。
決意
転機は、一人の女性政治家との出会いだ。
2025年1月、ある取材で国民民主の伊藤孝恵参院議員(50)に議員会館でヒアリングをしていると、政治家への転身を誘われた。
「社会課題を解決する仕事は、記者も政治家も一緒。政治家に向いている」
そんな趣旨のことを言わ…