欧州委員会、ウクライナ向けのパトリオットミサイル1000発購入資金を承認

ウクライナのフマラ国防相は9月8日「パトリオット迎撃ミサイルについて約1000発の供給契約を締結している」と言及したが、欧州委員会は今年のウクライナ防衛・軍事援助に割り当てられていた283億ユーロの最終トランシェ=61億ユーロを9月11日に承認し「ウクライナはPAC-3を正式に調達できるようになる」と述べた。

参考:First Board Meeting of the EU-Ukraine Drone Alliance 参考:EU approves funding for Patriot missiles for Ukraine 参考:EU gives final green light to 6 billion euros in defense aid for Ukraine, Patriot missiles purchase 参考:Press Briefing Transcript: Under Secretary of War Michael P. Duffey and Lockheed Martin CEO Jim Taiclet Discuss Landmark Acquisition Transformation Agreement to Accelerate PAC-3® MSE Production 参考:L3Harris Receives Landmark PAC‑3 MSE Propulsion Contract to Power America’s Arsenal of Freedom

ウクライナのイェウヘン・フマラ国防相は8日、ウクライナ国防連絡グループの会合で「パートナー国の支援とEUからの融資資金を活用して約1000発のパトリオット迎撃ミサイルの供給契約を締結している」「この将来調達する改良型ミサイルと引き換えに備蓄分からパトリオット迎撃ミサイルを引き渡してほしい」と要求し、将来調達する改良型ミサイルとは「ウクライナが発注した約1000発の新しく製造されるパトリオット迎撃ミサイル」のことだ。

出典:Defense of Ukraine

ウクライナがパトリオット迎撃ミサイルの供給について正式な契約を締結しているのか、ウクライナが供給契約を締結したというパトリオット迎撃ミサイルはPAC-3 MSEなのか、それともPAC-2 GEM-Tなのか、新しいパトリオット迎撃ミサイルで備蓄を補充するまでにどのくらいかかるのか不明だが、欧州委員会は今年のウクライナ防衛・軍事援助に割り当てられていた283億ユーロの最終トランシェ=61億ユーロを9月11日に承認し、 アンドリウス・クビリウス欧州防衛担当委員は「この決定でウクライナはパトリオットシステム用のPAC-3を正式に調達できるようになる」と述べている。

そのためフマラ国防相が言及したパトリオット迎撃ミサイルの購入は「ロッキード・マーティンが製造しているPAC-3 MSEを約1000発購入する」という意味になり、米陸軍がPAC-3 MSEを調達する価格(FY2026の取得単価は387.1万ドル)で乱暴に計算すると1000発の購入費用は38.71億ドル=33.36億ユーロなので、今回承認された61億ユーロでPAC-3 MSEを1000発購入する費用は十分賄うことが可能だが、問題は今から発注するPAC-3 MSEがいつ届くのかだ。

出典:Lockheed Martin

ロッキード・マーティンは2026年1月「PAC-3 MSEの生産と納入を加速するため国防総省と画期的な枠組み協定を締結した」「7年間の枠組みで年間生産能力を約600発から2,000発に増強する」と発表し、ジム・タイクレット氏は枠組み発表の記者会見で「2025年に620発のPAC-3 MSEを納入した」と述べ、ブルームバーグの記者から「年2,000発への増産ペースについて質問がある。現在の増産ペースだと2027年までに650発から750発に達する見込みのようだが、具体的に何年で年2,000発に到達すると予想しているのか?」と質問され「年2,000発への到達は2030年末までに達成するつもりだ」と述べたことがある。

L3ハリスは年2,000発生産に対応するため2027年の稼働を目指して新しい固体ロケットモーター工場を建設中で、ボーイングも同じようにシーカー増産に取り組んでいるが、この2つの増産が本格的に機能し始めるのは2028年以降になるため、PAC-3 MSEの生産は2027年まで650発から750発の間に留まる見込みになり、2028年から急速に生産が増加して2030年末までに年2,000発の生産率=月166発を達成するというシナリオだ。

出典:Lockheed Martin

ウクライナに新規生産されるPAC-3 MSEを優先的に回せば2028年半ばまでに1000発を納入できるかもしれないが、PAC-3 MSEには納入待ちの長い行列が出来ているため、ウクライナはその最後尾に並ぶことになるのでPAC-3 MSEの納入開始は数年先(早くて2028年頃?)の話になるだろう。

ドイツもウクライナ向けにPAC-2 GEM-Tを600発発注済みなので、ウクライナは今回のPAC-3 MSE発注を合わせると計1,600発のパトリオット迎撃ミサイルを手に入れる格好で、この戦いはまだまだ決着がつきそうにないため「2026年に発注したPAC-3 MSEの引き渡しが始まる」というニュースを数年後に目撃するかもしれない。

関連記事:ウクライナが約1000発のパトリオット迎撃ミサイルを発注、でも届くのは数年後 関連記事:ポーランド、再びウクライナへのパトリオットミサイル供給を検討中 関連記事:ウクライナ軍は弾道ミサイルの迎撃が困難、関連データの公開を停止 関連記事:ロシアは主要ミサイルの生産を増強、弾道ミサイルの備蓄は増加に転じる 関連記事:ウクライナのパトリオット生産、RTXとロッキードは商業的機会の喪失を懸念 関連記事:米陸軍、30年ぶりにパトリオット迎撃ミサイルのPAC-2弾を新規調達 関連記事:ウクライナと欧州が開発する弾道弾迎撃ミサイル、当初はPAC-2の類似品 関連記事:ウクライナでのパトリオットミサイル生産、実現には数年単位の時間が必要 関連記事:ドイツがウクライナにパトリオット迎撃ミサイルを600発以上供給

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

関連記事: