米下院が予算決議案可決、減税や債務上限引き上げに道-上院案を承認
トランプ米大統領が推進する数兆ドル規模の減税と連邦債務の上限引き上げは、実現に向け前進した。大統領と議会指導部が下院の共和党議員をまとめ、上院が可決した予算決議案を承認した。
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減税と債務上限引き上げの概要を定めた予算決議案は216対214で可決された。この採決は1日延期され、トランプ大統領と共和党の議会指導部は、セーフティーネットプログラムのさらなる削減を強く求める財政タカ派の強硬派グループを説得することができた。
大統領は電話やホワイトハウスでの会議を通じて反対派に働きかけた。ジョンソン下院議長は記者会見を開き、少なくとも1兆5000億ドル(約216兆円)の歳出削減を「確約する」と宣言した。共和党のスーン上院院内総務は議長とともに「多くの」共和党上院議員が同じ目標を共有していると発表したが、確約はしなかった。
これで十分だった。予算案が承認されたことで、今後は歳出削減40億ドルと引き換えに、今後10年間で最大5兆3000億ドルの減税と5兆ドルの債務上限引き上げを行う追加パッケージに道が開かれる。共和党は今後、民主党との交渉を回避し、共和党の票だけでトランプ氏の減税案を可決することができる。
共和党は、第1次トランプ政権の減税措置を個人および非上場企業のオーナーを対象に復活させ、州および地方税控除の拡大やチップ収入への課税撤廃を含む新たな減税措置を導入する計画だ。
下院の保守強硬派は、今後10年間で2兆ドルの歳出削減を最終パッケージに盛り込みたい意向を示している。これは、上院が5日に可決した予算決議案での40億ドルの削減を大幅に上回る額。削減を実現するには、何千万人もの受益者がいるメディケイド(低所得者向け医療保険制度)やフードスタンプ(低所得者向け食料支援)などの社会プログラムを縮小する必要がある。
予算決議案は減税交渉の後に決着をつけるために、多くの難しい決断を先送りしている。そのため、最終段階で上院との対立が生じる可能性がある。上院には、大幅な歳出削減に抵抗する議員が複数いる。
民主党は富裕層に偏った減税だと批判し、その財源を捻出するために、貧困層向けの給付金を削減する計画だと論じた。
民主党下院トップのジェフリーズ院内総務は「共和党は生活費の高騰を抑えるための対策を何も講じていない」と批判。「実際、メディケイドのような米国民にとって重要な給付金や制度を標的にすることで、生活費の高騰という危機を悪化させている」と論じた。
一方で上院共和党ナンバー2のバラソ議員は上下両院の共和党議員について、「米納税者のための非常に深刻な節約」に尽力していると述べた。
ジョンソン議長は5月末までに税制法案を成立させる目標を掲げているが、上院の共和党議員は8月までに手続きを完了できると話している。
こうした自主的な期限は、債務上限という財政上の期限を超える可能性がある。
超党派の米議会予算局(CBO)は、議会が連邦債務上限の引き上げや適用停止を行わない場合、政府は早ければ8月にも全ての支払いを期限通りに履行するための資金が不足する可能性があると警告しているが、税収が低ければ、その期限は5月下旬にも訪れる可能性があるという。
米財務省、早ければ8月にも支払い不能に陥るリスク-議会予算局 (1)
原題:House Passes Budget Outline to Advance Tax Cuts, Debt-Cap Boost(抜粋)