死球で悶絶も…牧原大成が首脳陣に訴えたこと ベンチ裏の会話、川瀬晃が受け取った"勇気"

 先輩の見せた闘志が乗り移ったかのような横っ飛びだった。アクシデントで途中交代する無念さは、痛いほどわかっているつもりだ。1-0で競り勝った9日のオリックス戦(京セラドーム)。左肘付近に死球を受けた牧原大成内野手が途中交代を余儀なくされた。ベンチ裏で首脳陣と交わしていた会話を聞いていたのが川瀬晃内野手だった。先輩から受け取ったという「熱い思い」とは--。

 まずは牧原大がビッグプレーを見せた。0-0の2回1死一、三塁で福田の放った鋭い打球は一、二塁間へ。完璧なタイミングの横っ飛びでボールをグラブに収めると、素早い送球で打者走者をアウトにした。相手先発はエースの宮城。ロースコアの展開が予想されていたからこそ、先制点は与えたくなかった。その直後、3回の打席に向かった牧原大だったが、2球目の141キロ直球が左肘付近に直撃。思わず苦悶の表情を浮かべた。

 ベンチ裏で治療を受けた背番号8は、グラウンドに再び姿を見せてプレーを続行。野村勇内野手の適時打で先制のホームに滑り込んだが、3回の守備から川瀬と交代することになった。試合後に「大丈夫です!」と3度も連呼した牧原大が、首脳陣とのやり取りを明かした。

 大関友久投手と宮城の投げ合いは、終盤まで1点差で続いていった。迎えた7回無死の守備、中川の打球が一、二塁間に飛んだ。これを川瀬がダイビングキャッチすると、素早く回転してワンバウンドで一塁にボールを送った。「京セラは人工芝ですし。ワンバウンドで送球する方が正確に投げられる。ボールの威力もあまり変わらないですし、そういうところは練習の時から意識していました」。とっさの判断力も光った好プレーだった。

 今季プロ10年目を迎えた背番号0。今宮健太内野手をはじめ、牧原大とも自主トレをともにしてきた経験がある。先輩たちの頼もしい背中を見て、多くのことを学んできたからこそ、途中交代を余儀なくされる気持ちは痛いほど理解できる。緊迫した展開の中で、受け取った勇気だけは絶対に手放さなかった。

「内野手の先輩たち、特に今宮さんやマキさんを見て、僕はここまで野球をやってきたので。7回のプレーも接戦だったので、気持ちの面でビビる部分もあるんですけどね。そういうところも含めて、チームとして攻めた姿勢は見せられたんじゃないかなと思います」

 小久保裕紀監督は牧原大について「明日(10日)、病院に行ってみてですね。レントゲンやCTを取らないと分からないでしょうけど」と今後の見通しを語った。牧原大本人は死球が当たった左腕を見つめ「今はだいぶ(力が)入るようになりました。気合です。気合、気合」と繰り返してバスに乗り込んだ。怪我だけはしてほしくない--。そう願う中でも1つの勝利、ワンプレーに対する執念が伝わってくる一戦だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

関連記事: