「お酒を飲まなくなったアメリカ人」が飲んでいるものとは?飲酒人口は過去最低に…アルコール離れはなぜ起きたのか?(Wedge(ウェッジ))
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こうした傾向は、連邦政府の12歳以上を対象とした「アルコール依存症患者」の追跡調査にも表れており、21年当時、国民全体の10.6%だったのが、25年には8.9%に減少していることとも符合している。
「アルコール依存症患者」の「症状」としては、「いつも飲みたがる」「最初意図した時より多量そしてより頻繁に飲む」「酒量の減量を試みても抑制出来ない」など11項目が、医学会の判断基準とされている。その減少については、近年、一部の専門家の間で肥満症治療薬として評判となっている「セマグルチド」の服用との関連性が指摘されていた。しかし、常用者は成人の8人に1人と限られていることなどから、医学上、大勢の見解には至っていない。
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こうしたことから、日本でも古くから言い伝えられてきた『酒は百薬の長』の“神話”は、米国社会に関する限り、すでに崩れ去ってしまったことになる。
「健康意識の歴史的シフト」以外でも、最近顕著になってきた若年層を中心としたカルチャー、ライフ・スタイルの変化も指摘されている。 その一つは、「経済的理由」だ。近年、レストランなどで出されるビール、ワイン、カクテルなどの価格は、他の諸物価以上に高騰してきており、一般消費者が外食の際に少しでも出費を抑えようと、飲み物は注文せず、水だけで済ませる人が目立ってきているといわれる。 例えば、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市では、レストランで普通の食事をする際、ジョッキ1杯のビールを注文するだけでも8~10ドルは普通であり、1回あたりの食費は、チップ代込みで30ドル前後は覚悟しなければならなくなっている。ワイン愛好家の間でさえも、レストランではボトルで注文せず、グラス1〜2杯で済ませる人が増え始めたと伝えられる。 “アルコール離れ”が特に顕著になってきたといわれるのが、90年代半ばから10年代初頭に生まれた“Z世代”や、81年から96年ごろに生まれた“ミレニアム世代”だ。彼らの世代の間では、深酒や泥酔、二日酔いは初めから軽蔑の対象とされ、パーティで仲間たちと会話を楽しむ際も、“シラフ”で通すことが当たり前のようになりつつある。 ビジネス誌「Forbes」最新号によると、1カ月のうち、「数回以上」、外食する人の数自体は、全体の77%と、従来からほとんど変化ないものの、コスト意識もあってレストランで普通に食事する人は49%に減っており、テイクアウトで済ませる人が多くなっている。テイクアウトの場合、アルコールを買う人はまれだ。 食事の際に、何らかのドリンクを注文する人は依然少なくないが、 健康意識の高まりと相まって、価格の安いノン・アルコール類を好む人も増えている。日本でも、普通のビールは200円程度だが、ノンアルコール・ビールは140円前後で販売されている。
実際に酒類業界では、ビール、ウィスキー、バーボンなどの売り上げは年々、下降線をたどってきており、代わって、「アルコール・ゼロ」のビール、スピリッツ類の人気は高まる一方だ。最新のデータでは、米国内での普通のアルコール類の売り上げは、前年比6%減となったのに対し、ノンアルコール類は逆に18%増と急ピッチで伸びている。
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すでに大手ビール業界では、「Guinness 0.0」「Heineken 0.0」などのようにノンアルコール・ビールの方が普通のビールに代わり主流になりつつあるという。 しかし、だからといって、会社の仲間同士が、レストランやバーに集まって語り合い、交流する機会自体が減りつつあるわけではない。このため、飲食店の経営者側も、客によりくつろいで時間を過ごしてもらえるよう、室内デザイン、メニューの改善やサービス向上を迫られている。 最近では、アルコール入りの通常の「cocktail」に代わり、「mocktail」と呼ばれるドリンクが人気を博しつつある。「cocktail」と「mock(疑似)」を合わせた造語で、いわば“カクテルもどき”だが、ジンやウォッカなどのアルコールは一切入っておらず、ライムジュース、トマトジュース、ソーダなどをベースとしており、好みによって、キュウリやレモンのスライスにバジル、パセリなどをミックスしたものが主流となっている。 「mocktail」はすでに、日本の若者向きレストランでも、ドリンク・メニューの中に現れ始めている。 米国では、1920年から33年まで「禁酒法」が施行され、アルコールの製造・販売・運搬・輸出入が全面禁止になった時代があった。21世紀の今日、米国社会が再び「禁酒時代」に逆戻りするとは思われないが、以前に比べ飲酒を控える“sober (シラフ)society”に向かいつつあることだけは確かなようだ。
その波は、早晩、我が国にもやってくるに違いない。