もう遅い?まだ買える?「シリコン・サイクル」理解で半導体株の「買い時」を見極める(窪田真之)
半導体産業は、グローバルな成長産業です。ただし、「安定成長する産業」ではありません。「シリコン・サイクル」といわれる「ブームと不況」を繰り返しながら、成長しています。だから、半導体関連株への投資は面白く、かつ難しいのです。
半導体関連株への投資を考える時、以下三つのポイントを知っていた方が良いと思います。
【1】半導体は成長産業 【2】好不況の波が大きい(「シリコン・サイクル」といわれる)
【3】半導体関連株はシリコン・サイクルを1年近く先取りして動く傾向がある
それでは、一つずつ説明します。
【1】半導体は成長産業
半導体産業は、成長産業です。IT革命→インターネット革命→生成AI革命と呼び名は変わり続け、人類の情報処理技術は急ピッチで進化を遂げていますが、そのインフラ構築に不可欠な基幹部品が「半導体」なので、その需要は拡大し続けています。
半導体の能力は、幾何級数的に拡大しています。半導体回路の線幅は、どんどん縮小して、最先端では2ナノ(1ナノメートル=10億分の1メートル)を切る開発競争となっています。日本の国策半導体企業・ラピダスが、2ナノ半導体の試作品を作り上げたことで注目されています。
半導体は、線幅の縮小だけでなく集積化による能力拡大も進んできました。半導体素子からIC(集積回路)、GPU(画像処理装置)と進化しています。エヌビディア(NVDA)の最新GPU(ブラックウェル)は、スーパーコンピュータ並みの高い能力があります。これからも需要拡大にともない、最先端の半導体は進化を続けると考えられます。
【2】好不況の波が大きい
半導体産業は、1980年代以降、ブームと不況を繰り返してきました。まずは、1998年以降のシリコン・サイクルをご覧ください。
<世界半導体出荷金額(3カ月移動平均):1998年1月~2026年3月>
出所:米国半導体工業会(SIA)より楽天証券経済研究所が作成
ご覧いただくと分かるとおり、世界の半導体産業は右肩上がりの成長産業です。ただし、シリコン・サイクルといわれるブームと不況の大きな波をつくる産業でもあります。
誰もが強気で半導体は絶好調がいつまでも続くと思っているときに突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。もう、半導体産業は永遠に復活しないと思われる半導体不況の大底から、突然、急回復が始まります。
今まさに半導体ブームのさなかにあります。かつて経験したことのない大ブームです。生成AIの普及で、世界中でデータセンターへの投資が急拡大しており、その恩恵が半導体産業に表れています。
GPUだけでなくCPUもDRAMも需給がひっ迫しています。最先端の半導体も前世代の半導体も、幅広く不足する大ブームとなっています。AIデータセンターへの投資拡大が続くため、今回の半導体ブームは、これまでよりも長くなることも考えられます。
ただし、忘れてはならないのは、半導体ブームにはサイクルがあるということです。永遠にブームが続くことはありません。ブームの後には半導体不況が来ます。この特色ゆえ、半導体関連株は、長期的には大きく上昇しているものの、短期的には急落することもあり、激しく乱高下します。それが半導体株投資を面白く、また、難しくもしています。
【3】半導体関連株はシリコン・サイクルを1年近く先取りして動く傾向がある
半導体関連株は不思議なことに、1年近く、シリコン・サイクルを先取りして動く傾向があります。半導体ブームのさなかに、半導体関連株が下げ始めて「変だなぁ」と思っていると、しばらくして急速に業況が悪化して1年後に半導体不況になっていることがあります。
逆に、半導体不況のさなかに半導体関連株が急騰を始めることもあります。半導体は成長産業なので、半導体不況で下がっているうちに買っておこうと考える投資家が多いためだと思います。
過去の半導体関連株の値動きを検証
それでは、このようなシリコン・サイクルを反映しながら、半導体株がどう動いているか、見てみましょう。図表で2012年以降の日本の半導体株価指数と日経平均株価の動きをご覧ください。
<半導体株価指数と日経平均月次推移:2012年1月~2026年5月>
出所:2012年1月末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成
ご覧いただくと分かるとおり、半導体不況が始まる前、まだ半導体ブームが続いているうちに、半導体関連株は急落しています。後から振り返ると、不況を先取りしたことになります。
実際に半導体不況が始まると、もう半導体株は底打ちして急騰し始めていることが分かります。次のブームを見込んで、不況のうちに半導体株を買い始める投資家がいます。
それでは2018~2026年までのシリコン・サイクルと半導体関連株の動きを振り返ります。
【1】ブームの中で半導体関連株が急落した2018年
2018年の初めには、半導体ブームが続いていました。ところが、半導体関連株は、急落しました。2018年の後半に入ると、活況が続いていたフラッシュメモリ(データセンターやスマホの記憶媒体に使われる半導体)やDRAM(一時的なデータ保存に使われる半導体)の需給が緩み、市況が下落し始めました。
さらに、米中ハイテク戦争の影響を受けて、中国での需要鈍化が鮮明になりました。2019年から半導体不況に入りました。日本の半導体関連株は、不況を1年あまり先取りして2018年初めから急落していました。
【2】半導体不況の中で関連株が急騰した2019年
2019年になり半導体不況が始まると、株価は逆に急騰を始めました。次のブームを織り込む動きが始まっていました。2020年後半から半導体ブームとなり、半導体関連株は一段高となりました。
【3】半導体ブームの中で関連株が急落した2022年
2022年はまだブームが続いていましたが、メモリ市況が下落するなどブーム終焉(しゅうえん)を思わせる事象が表れていました。次の不況を織り込んで、株価は急落しました。
【4】半導体不況の中で関連株が上昇し始めている2023年
2022年後半から半導体不況が始まりましたが、半導体関連株はすでに上昇を始めています。2024年からのブーム復活を先取りした動きと考えることができます。生成AI(人工知能)の利用が世界で急拡大したことを受けて、AI半導体がブームをけん引しました。AI半導体以外の半導体は不振が続きました。
【5】2024年から半導体株急落、2025年4月以降反発、2026年はブーム復活で急騰
2023年中は半導体関連株は急騰しましたが2024年に入ると、一転して急落し始めました。これは何を示しているのでしょうか?
過去の経験則だと、2025年から半導体不況が始まるのかと思ってしまいます。実際にはそうなっていません。AI半導体を中心に2025年も順調な成長が続き、2026年にはまた半導体ブームとなり、半導体関連株は急騰しています。
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