一気に評価アップ! Jリーグ“ブレイク”ランキング11~20位。2024年、市場価値を上げたのは?
2024シーズンの明治安田Jリーグが幕を閉じた。台頭した選手もいれば、大きく成績を落とした選手もいるが、同シーズンに最もブレイクした選手は誰のなのだろうか。今回は、データサイト『transfermarkt』が算出したJリーガーの市場価値上昇額ランキングを紹介する。※2024年1月1日と2025年1月2日時点の市場価格を比較。価格が並んだ場合の順位はサイトに準拠。本文中のスタッツはJリーグ公式サイトを参照
20位:早川友基(鹿島アントラーズ)
【写真:Getty Images】
生年月日:1999年3月3日(25歳) 市場価値の上昇額:50万ユーロ(約8000万円/142.9%UP) 市場価値の変動:35万ユーロ(約5600万円)→85万ユーロ(約1億3600万円)
2024リーグ戦成績:38試合41失点
Jリーグ“ブレイク”ランキングで20位に入ったのは、鹿島アントラーズのゴールマウスを守る早川友基だ。2018シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇以来タイトルから遠ざかっている名門が完全復活を果たすためには、25歳の正守護神の成長が欠かせない。
横浜F・マリノスプライマリー・ジュニアユース出身の早川は、ユースに昇格せず、桐蔭学園高等学校への進学を選択。同校卒業後は明治大学へと進学し、2021シーズンに鹿島へ正式に加入した。
リーグ戦初先発を飾ったのは加入2年目の2022シーズン、9月16日に行われたJ1リーグ第30節のサガン鳥栖戦だ。クォン・スンテや沖悠哉らを抑えてピッチに立つと、1失点こそ喫したものの、チームの勝ち点1獲得に貢献した(試合は1-1で終了)。
その鳥栖戦以降、早川はレギュラーに定着。2024シーズンはリーグ戦38試合に出場した。クリーンシート総数はリーグ2位の「15試合」、セーブ総数は同5位の「96回」と、まさに“守護神”と呼ぶに相応しい活躍ぶりを見せている。
2024シーズンの躍動ぶりに後押しされ、市場価値も高騰。約1年前の金額は35万ユーロ(約5600万円)だったが、現在は85万ユーロ(約1億3600万円)の値を付けている。この1年間の上昇率は142.9%を記録しており、いかに早川が充実したシーズンを過ごしたかがうかがえる。
かつて、鹿島は堅守速攻のスタイルを武器にJリーグの覇者として君臨していたが、近年は守備面の緩さが散見されている。もちろん、堅守はチーム全体のハードワークによって完成するものだが、最後尾に構えるゴールキーパーの安定感は必須の要素だ。今後も早川が進化を止めずに自身の価値を高め続けていければ、鹿島は伝統的なスタイルを取り戻せるかもしれない。
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セレッソ大阪の“ナンバー10”田中駿汰が、Jリーグ“ブレイク”ランキングで19位となった。2023シーズンにはチャンスを構築したパスがリーグ2位の「53.25ポイント」を記録し、良質なパスを供給できるセンターバック(CB)として一躍脚光を浴びる存在に。2024シーズンは主戦場をCBからボランチに移し、より一層プレーの彩度を上げてみせた。
田中がボランチの能力を育んだのは、ガンバ大阪ジュニアユース時代だった。本人は「ポジションは、中1は右サイドハーフ。中2からボランチになって、市丸(瑞希)とダブルボランチを組みました」(C大阪クラブ公式サイト『セレッソ大阪オフィシャルウェブサイト』プロフィールより)と、当時を振り返っている。
履正社高等学校、大阪体育大学を卒業後、田中は2020シーズンより北海道コンサドーレ札幌へと正式加入。2023シーズンには、チームがリーグ12位と低迷したなかでも、前述の通りチャンスを生み出すパスを数多く供給し続けた。
2024シーズンに活躍の場をC大阪に移した田中は、クラブから背番号「10」を託された。ポジション登録もミッドフィルダーに変更され、いよいよCBからボランチへ本格移行。J1リーグで記録した総走行距離は、リーグ2位の「403.3km」に達した。札幌時代に披露したキーパスを繰り出す能力に加え、あらゆる場面に顔を出す並外れた運動量を兼ね備えた万能型ボランチへと変貌を遂げた。
市場における存在感も一段と増しており、田中の市場価値は約1年間で80万ユーロ(約1億2800万円)から130万ユーロ(約2億800万円)まで上昇。62.5%の伸び率を記録した。勝負の加入2年目を迎える今シーズンは、C大阪に何らかのタイトルをもたらすような働きが求められる。桜色の“ナンバー10”が表彰台に登った時、“ブレイク”ランキングのトップ10入りも見えてくるだろう。
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Jリーグ“ブレイク”ランキングで18位に入ったのは、サンフレッチェ広島のゴールにカギをかける大迫敬介だ。もはや貫録すら漂わせている25歳の絶対的守護神は、2024シーズンのJ1リーグで安定した活躍ぶりを披露。市場価値は大台の2億円を超えている。
広島ユース出身の大迫は、2018シーズンにトップチーム昇格。2年目の2019シーズン、正守護神の林卓人が負傷した影響もあって公式戦デビューを飾ると、そのままレギュラーを奪取した。その後は林と熾烈なポジション争いを演じることになったものの、2022シーズンの途中からは第1ゴールキーパーの座を確保。2024シーズンには、引退した林から背番号「1」を受け継いだ。
2024シーズン、大迫は重みのある背番号に恥じないプレーを見せたと言っていいだろう。クリーンシート総数はリーグ5位タイの「12試合」。最終節まで優勝を争い、最終的に2位でシーズンを終えたチームを最後方から支えた。
不動の主力として戦い続けた1年間の努力は、市場価値の上昇という形で結実。約1年前に120万ユーロ(約1億9200万円)だった市場価値は41.7%アップし、170万ユーロ(約2億7200万円)に到達している。
今や、広島のみならず日本サッカー界を代表する選手と言えるまでの存在となった大迫だが、広島で獲得したタイトルは2022シーズンのYBCルヴァンカップのみ。やはり今シーズン最大の目標は、ヴィッセル神戸の3連覇を阻止してのリーグ制覇になるだろうか。
AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)でも当然勝ち残りを目指すはずだが、大迫としてはキャリア初のリーグタイトルを是が非でも獲りたいと思っているだろう。果たして、1年後の“ブレイク”ランキングではより上の位置で大迫の名前を見つけることができるだろうか。
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今シーズンからJリーグに参戦する外国籍選手も、“ブレイク”ランキングに名を連ねている。17位に食い込んできたのは、ヴィッセル神戸が完全移籍で獲得したブラジル人のカエターノ。サッカー王国の名門・コリンチャンスからやって来た25歳のセンターバック(CB)は、リーグ連覇を達成した神戸に何をもたらすのだろうか。
コリンチャンスユースで育成を受けたカエターノは、国内クラブへの度重なる期限付き移籍を繰り返しながら着実に経験を積んだ。カンピオナート・ブラジレイロ・セリエA(ブラジル1部リーグ)では、通算47試合に出場して1得点をマークしている。
だが、2024シーズンのリーグ戦出場は5試合のみ。コリンチャンスでカエターノが重要な役割を担っていたとは言えない成績だ。そのためか、この1年間の市場価値上昇率は33.3%とやや小幅な動き。約1年前の150万ユーロ(約2億4000万円)から200万ユーロ(約3億2000万円)に値を移している。
とはいえ、182cmの左利きCBにかかる期待は大きい。ディフェンスラインから左足でパスを差し込むことができるカエターノがいることで、神戸の縦に早い攻撃スタイルはよりスピード感を増すかもしれない。また、2024シーズンに左サイドバック(SB)のレギュラーとして大車輪の活躍を見せた初瀬亮が海外移籍交渉中で退団する可能性もある。
SBとしてプレーしたこともあるカエターノは、チームの台所事情を救うキーマンとなり得るだろう。「自分を信頼していただけたことに感謝しています」(2025年1月7日公開/神戸クラブ公式サイト『ヴィッセル神戸 | VISSEL KOBE』より)と、新天地デビューを前に意気込みを語ったカエターノの躍動に期待したい。
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Jリーグ“ブレイク”ランキングで16位に入ったのは、2024シーズン途中から清水エスパルスに完全移籍で加入したアブドゥル=アジズ・ヤクブだ。ガーナ出身の長身ストライカーは、少ない出場機会の中でも自身の価値を高めることに成功している。
母国のレッドブル・ガーナをはじめとする複数クラブのユースで育成を受けたアジズ・ヤクブは、2017年にヴィゼラ(ポルトガル)でトップチーム昇格を勝ち取る。その後はポルトガル国内のクラブを転々とするようになり、キャリアが停滞したかに思われたが、2021/22シーズンに期限付き移籍でリオ・アヴェ(ポルトガル)へと加入したあたりから流れが変わる。
同クラブでは公式戦通算73試合に出場して30得点5アシストをマーク。187cmの恵まれた体格を生かしたパワフルなプレーで得点を量産した。そんなアジズ・ヤクブは、2024年7月に清水へと完全移籍。自身のキャリアの中で初となる日本での挑戦がスタートした。
2024シーズンの清水は、圧倒的な強さを誇示してJ2を制覇。3シーズンぶりとなるJ1復帰を果たした。だが、オレンジ軍団が成功に彩られたシーズンを送る一方で、アジズ・ヤクブはなかなか出番をもらえず。J2リーグの出場は6試合に留まった。
ただし、限定的なプレー時間であっても3得点を記録した効率性は流石のもの。市場価値も約1年前の200万ユーロ(約3億2000万円)から25%アップして、現在は250万ユーロ(約4億円)の値を付けている。
今月5日には清水との契約更新が発表(清水クラブ公式サイト『清水エスパルス公式WEBサイト』より)。今シーズン、市場価値がさらに高騰するような活躍をJ1の舞台で披露することができるだろうか。
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Jリーグ“ブレイク”ランキングでトップ10入りした選手並みの市場価値上昇率を叩き出したのが、ガンバ大阪の坂本一彩だ。2024シーズンに大ブレイクを果たした21歳のアタッカーは天井知らずに思える進化の過程をひた走っており、同ランキングで15位に入っている。
G大阪ユース出身の坂本は、2020年9月に2種登録選手としてトップチームに登録。早くから将来を嘱望されるような存在だった。2022シーズンにはトップチームへ正式昇格。4月6日に行われたJ1リーグ第7節の京都サンガF.C.戦で途中出場し、J1デビューを飾った。
2023シーズンに経験したファジアーノ岡山への期限付き移籍でより一層逞しさを増した坂本は、翌2024シーズンにG大阪へ帰還。リーグ開幕スタメンに抜擢されると、そのままレギュラーを奪取した。
173cmと決して恵まれた体格ではないものの、坂本のプレーからハンデのようなものを感じることは全くと言っていいほどない。動き出しの上手さと“ゴールの匂い”を嗅ぎ分ける嗅覚の鋭さは一級品で、2024シーズンはリーグ戦37試合で10得点1アシストをマークしてみせた。市場における存在感も一気に増しており、約1年前に15万ユーロ(約2400万円)だった市場価値は、現在70万ユーロ(約1億1200万円)まで上昇。伸び率は366.7%に達している。
海外のクラブも、坂本の活躍ぶりに目を光らせている。今月6日にはG大阪が「坂本一彩選手が、海外クラブへの移籍を前提とした手続きと準備のため、チームを離脱することとなりましたので、お知らせいたします」と発表(G大阪クラブ公式サイト『ガンバ大阪オフィシャルサイト』より)。2024シーズンの大躍進が夢の海外挑戦に繋がった。
市場価値上昇率が300%を超えた事実を踏まえれば、海外移籍は当然の帰結と言える。わずか2シーズン前にJ2でプレーしていた坂本は今、世界への第一歩を踏み出そうとしている。
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湘南ベルマーレの福田翔生がJリーグ“ブレイク”ランキングで14位に位置している。
福田は、東福岡高等学校卒業後の2019シーズンにFC今治へと加入。だが、当時日本フットボールリーグ(JFL)に所属していた今治では特段目立った活躍ができず。同シーズンは3試合の出場に留まり、得点もアシストも付かなかった。
福田にとって転機となったのは、2023年1月に完全移籍で加入したY.S.C.C.横浜時代。J3リーグで21試合に出場すると11得点をマークし、ストライカーとしての能力を一気に開花させた。
加入から半年後の8月、福田は湘南にステップアップを果たす。オフシーズンから入念な準備をして臨むことができた2024シーズンはさらにプレーに磨きがかかり、リーグ戦34試合で10得点4アシストをマーク。自身初となるJ1の舞台で2桁得点を叩き出した。
この1年間の活躍が実を結び、福田の市場価値上昇率は366.7%を記録。約1年前に15万ユーロ(約2400万円)だった市場価値は、70万ユーロ(約1億1200万円)まで上昇した。わずか2シーズン前にJ3を主戦場としていた男は、残留争いに巻き込まれることが珍しくない湘南を「勝たせる」選手となり、自身の価値を飛躍的に高めたのだった。
今シーズン、福田は今までよりも重い責務を担うだろう。湘南をけん引する攻撃の「軸」としてより一層の得点力アップを期待されるのは必然で、対戦相手の研究を上回るパフォーマンスを披露する必要がある。湘南の1桁順位でのシーズンフィニッシュ、もしくは何かしらのタイトル獲得に貢献するようなことがあれば、1年後の“ブレイク”ランキングでトップ10入りを果たすのも決して夢ではない。