イエメン沖で移民船が転覆、60人以上が死亡
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イエメン沖のアデン湾で3日、移民約150人を乗せた船が沈没し、60人以上が死亡した。事故当時、周囲は悪天候だった。
移民を乗せた船はイエメン南部アビヤン州沖で転覆し、これまでに68人の遺体が収容されたと、国連の国際移住機関(IOM)イエメン支部の責任者がBBCに明らかにした。12人が救助されたが、数十人が行方不明のままだという。
IOMは、犠牲者の大半はエチオピア国籍のようだとして、「悲痛な」事故だと述べた。
イエメンは、「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部地域から仕事を求めて湾岸諸国へ渡る移民にとっての主要ルート上にある。IOMは、この数カ月間で数百人が船舶事故で死亡または行方不明になっていると推定している。
IOMイエメン支部の責任者アブドゥサットル・エソエフ氏によると、今回転覆した船には157人ほどの移民が乗っていた。当時、人身売買業者が頻繁に利用する、広大な沿岸地域の危険なルートを航行していたという。
イエメンは、より良い機会を求めてサウジアラビアへと北上する移民にとって、人気の経由地となっている。
AP通信によると、イエメン南部ハンファル地区の海岸で54人の遺体が発見された。また、ほかに14人の遺体が、アビヤン州の州都ジンジバルにある病院の遺体安置所に運ばれたという。
アビヤン州の治安当局は、進行中の大規模な捜索・救助活動について声明を発表。海岸線の広範囲で多くの遺体が見つかっていると説明したと、AP通信は報じた。
IOMの報道官は、同機関は「人命が失われたこの悲劇」を「深く悲しんでいる」とした。
「この悲痛な出来事は、危険な移動をする移民を保護するための制度強化が緊急に必要であることを浮き彫りにしている。こうした移動は、移民の必死さやぜい弱性につけ込む悪質な密航業者の支援を受けていることが多い」
IOMイエメン支部の責任者エソエフ氏はまた、移民が密航業者に搾取されるのを防ぐため、法的保護の強化が重要だと強調した。
「我々がすべての加盟国に求めているのは(中略)正規の移動経路の強化だ。そうすることで、移民は合法的手段で移住できるようになり、密航業者に騙されたり、危険なルートを移動したりしなくてすむようになる」
IOMは以前、「アフリカの角」からイエメンへの移動について、「最も混雑し、最も危険な移動ルートの一つ」と呼んでいた。
3月にはイエメン・ドゥバブ地区沖で、180人以上の移民を乗せた2隻の船が悪天候により沈没した。乗組員2人だけが救助され、移民全員が行方不明となった。移民は死亡したとみられる。
IOMの報告によると、イエメンの移民支援拠点に到着した移民は、密航業者が当局のパトロールを回避するために危険な状況下で意図的に船を出発させるなど、より無謀な行動を取るようになっていると証言している。
リスクが伴うにもかかわらず、多くの移民がイエメン経由で移動しようとしている。2024年だけで6万人以上がイエメンに到着している。
過去10年間では、この移動ルート周辺で3400人以上が死亡または行方不明になっていると、IOMの「行方不明移民プロジェクト」は記録している。死者のうち1400人は溺死したという。