クリーンエネルギー業界、今は死んだも同然-ヘッジファンド創設者

再生可能エネルギー投資から今はリターンを得られない。グリーンエネルギー移行に特化したヘッジファンドの創設者が、ファンド立ち上げ1年未満のタイミングでこうした見方を示している。

  ロンドンを拠点とするカノウ・キャピタル創設者兼最高投資責任者(CIO)ニシャント・グプタ氏は、「太陽光や風力、水素、燃料電池などクリーン関連のセクター全体が今は死んだも同然だ」と語った。

  米国での政治的逆風や戦争によって悪化するエネルギー危機、金利高止まりといった逆境に直面し、クリーンエネルギー業界の大部分が失速している。S&Pグローバル・クリーン・エネルギー指数は過去1年で20%下げた。これに対しS&P500種株価指数は16%上昇している。

  トランプ政権下の米国では気候変動関連の政策が後退しており、グリーン重視の投資家の多くが様子見の姿勢だ。

   グプタ氏は、昨年自らのファンドを立ち上げる以前は運用資産約27億ドル(約4000億円)のヘッジファンド、クリーン・エナジー・トランジションで働いていた。「ファンダメンタルズは非常に悪い」と言及した上で、「長期的なことではなく、足元の弱さについて話している」と述べた。 

The fundamentals are currently `very poor' for clean energy

Source: Bloomberg

  その弱さは数年前から徐々に顕在化してきた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後にグリーン関連資産の価値は最初の大きな打撃を受け、投資戦略の売り込みも難しくなった。この機に乗じ米共和党は、環境・社会重視で投資する戦略を禁止したり訴訟の可能性をちらつかせたりした。

  そうした逆風が吹く中でも、クリーンエネルギー移行に向けた長期のニーズは依然存在すると、グプタ氏は指摘。約1億ドルの資産を管理する同氏のヘッジファンドは、需給の力学を通じて必然的に価格が上昇する市場の発掘に集中的に取り組む。

  グプタ氏は「エネルギー移行関連の投資は1兆8000億ドル程度から、2030年までに5兆-6兆ドルに増加する見込みだ」と指摘。「そのうち約3分の1がサプライチェーンに費やされるのを踏まえ、サプライチェーンのボトルネックを中核の投資機会として特定するのに重点を置いている」と話す。

  同氏が注目する投資機会の一例は、ノースカロライナ州に拠点を置くインガソール・ランド。エア・ガスコンプレッサー、真空システムやポンプといったエネルギーフロー制御機器を製造する。

  インガソール・ランド株にはキャピタル・グループバンガード・グループブラックロックなどが投資しており、過去3年間で約80%上昇。今年は7%下げている。

  「コンプレッサーの耐用期間にかかる電気代は購入価格を容易に上回る可能性もあり、効率的な機器や継続的な性能向上への投資が、長期的で大幅な節約につながる可能性がある」とグプタ氏は説明している。

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原題:Hedge Fund Built on Energy Bets Says ‘Clean Is Dead for Now’(抜粋)

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