【HSCの子育て】感受性が強く、敏感な子どもとどのように向き合う?マイナスに捉えないで!長い目で見ると長所(HugKum)

HSCとはHighly Sensitive Childの略。アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって発表され、生まれつきとても敏感な感覚、感受性をもった子どもを指します。病気や障害ではありません。 全国の教育現場などでHSCについて講演したり、これまで7,800名以上(2025年3月現在)のHSCや大人のHSPの相談を受けてきた株式会社サステナミー代表取締役の皆川公美子さんに、HSCの子育てのポイントや子どもの特徴などを教えてもらいました。 HSCは約5人に1人といわれ、男女比は1:1です。病気や障害ではなく、神経系の特性であり、人に限らず鳥や魚、犬、猫、馬など100種類以上の動物にも「特に敏感な個体」がいます。

HSCは生まれつきもった資質で、早い子では0歳から特徴が見られます。個人差がありますが、HSCに見られる主な特徴は次の通りです。 ●洋服のタグ、縫い合わせなどを嫌がる ●味、匂い、音などに敏感 ●驚きやすい ●大きな声を出されたり、騒々しい場所が苦手だったりする ●静かな場所・遊びを好む子が多い(好奇心旺盛で新しい刺激を求めるHSS型の子もいる) ●寝つきが悪い ●慎重である ●人見知りが強い ●想像力が豊か ●その場の空気を読む ●興味があることはとことん追求する   ●人の気持ちによく気づく   など

「うちの子はHSCかも…」と思うママ・パパは、子どもを否定しないようにしましょう。 たとえば、子どもが「〇〇くんに、嫌なことを言われた」と言ってきたら、まずは「悔しかったね」と子どもの気持ちに共感しながら、「なんで、そんなこと言うのかね?」と理由を聞いてみましょう。「もう小学生なんだから、自分で解決しなさい!」「〇〇くんに、自分からやめて! って言ってごらん」など解決策だけを一方的に伝えたり、突き放したりするような対応をすると、より不安が高まってしまうことがあります。 HSCとは信頼関係を深めて安心感を得ることで、過度な一面が和らいでいきます。


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HSCは、ハードなスケジュールで子どもに無理をさせないことも大切です。なかには習い事や塾などで忙しいと、体調を崩すこともあります。そのため疲れていたり、「習い事を休みたい」と言ったりするとき、無理をさせないようにしましょう。「小学生なんだから、自分で先生に休むことを伝えなさい」などと言うと追い込まれてしまう子もいるので、そこは大目に見て、ママ・パパが休む連絡をしてあげましょう。 子どもとよく話し合って習い事や塾を見直すのも一案です。時間に追われるような生活は勧めません。 またHSCの中には、活発で積極的なタイプがいます。一見、HSCとわからないかもしれません。浮き沈みが激しいので、疲れている様子があるときは、ママ・パパから少しおうちでゆっくりする提案をしてあげてください。

落ち込んでいたり、疲れているときは、頭をなでたり、背中をなでたりしてスキンシップを取りましょう。元気なときは、ハイタッチなどもいいですね。スキンシップは乳幼児だけでなく、小学生になっても大切です。スキンシップを通して、子どもは安心感を得ます。

文部科学省が令和6年10月に発表した「小・中学校における不登校の状況について」では、令和5年度の小学校の不登校児童数は13万370名でした。不登校児童数は11年連続で増加しています。 なかにはHSCの資質によって、不登校になるケースもあります。たとえば音に敏感だと、給食の時間や休み時間が苦痛に感じることもあります。 またHSCの中には共感力が高い子どももいて、友だちが先生に叱られている姿を見るだけで、自分までつらくなり、登校を拒むようになることもあります。 もし気になる様子があるときは「どうしたの?」と聞いて、前述のように気持ちに寄り添ってあげてください。正論で諭そうとするのではなく、まずは子どもの味方になってほしいと思います。 「ママ・パパはわかってくれない」と思うと、「どうせ話しても無駄だから…」と心を閉ざしてしまう子どももいます。


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HSCの特徴をマイナスに捉えるママ・パパもいますが、長い目で見ると長所です。たとえば深く考えることが好き、哲学的に考えることが好きな子どもは、研究者や大学教授、企画・マーケティングの仕事などに向いているかもしれません。 困っている人の気持ちを敏感に察して、共感できる子は、看護師や介護士、カウンセラー、教師、保育者などに向いているかもしれません。 HSCの特徴をマイナスにとらえずに伸ばしてあげてほしいと思います。

HSC(ひといちばい敏感な子)は、生まれつきの気質や遺伝的な要因と、育った環境などの環境的要因が複雑に影響してあらわれます。親がHSP(敏感な大人)である場合、子どももHSCである可能性は高まりますが、必ずしもそうとは限りません。手出しや口出しはできるだけ控えて見守りましょう。HSCの子どもはとても敏感です。ママ・パパが過度に心配すると、子どもは余計に不安になってしまいます。

HSCの子育ては、失敗したときに子ども自身で立ち直れる力をつけていくことも必要です。そのためには失敗したら、自分で原因ややり直す方法を考えて行動できるように導いていきましょう。幼いうちから、自分で立ち直る経験を繰り返すことが大切です。 ママ・パパがよき理解者になって「失敗しても大丈夫だよ」「失敗してもやり直せるよ」と根気よく伝えて、失敗してもめげない心を育てていきましょう。HSCの子どもの成長には、特にママ・パパが見守ってくれる安心感が必要です。 【お話を伺ったのは…】 皆川公美子さん 株式会社サステナミー代表取締役。国家資格キャリアコンサルタント。ギャラップ認定ストレングスコーチ。心理セラピスト。HSP、HSCについて全国で講演会や研修会などを行う。著書に『HSP 強み de ワーキング~洞察系 共感系 感覚系 』(梨の木舎)。HSCの次女は不登校を経験後、韓国の大学に留学・卒業。

取材・構成/麻生珠恵

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