“夏の北海道”はなぜ暑い? 札幌では「真夏日」日数が101年ぶり過去最多更新…気象予報士が教える「3つの原因」
夏になると北海道でも気温が30度を超える日があります。北海道でも暑さが厳しくなるのはなぜなのでしょうか。気象予報士に聞きました。
8月下旬になっても全国的に厳しい暑さが続いており、熱中症に注意が必要です。夏は北海道でも、地域によっては最高気温が30度を超える日が続くことがあります。札幌では今年、最高気温が30度以上の「真夏日」を34回観測(8月24日午後1時現在)。年間の真夏日日数としては、これまでの1924年の記録を101年ぶりに更新し、1876年の統計開始以降、過去最多となりました。
夏の北海道の暑さが厳しい点について、ネット上では「北海道はもう避暑地ではない」「北海道が夏涼しいのは過去の話」「『北海道にエアコンは不要』という常識が過去のものになった」「今年は異常に暑い」などの声が上がっています。
夏になると、北海道でも暑さが厳しくなるのはなぜなのでしょうか。熱中症にかかって亡くなってしまう人をゼロにするのを目標とした「熱中症ゼロへ」プロジェクトを推進する日本気象協会の気象予報士、久保智子さんに聞きました。
Q.夏になると、札幌や帯広などで気温が30度以上になる日が続きます。緯度が高いにもかかわらず、北海道で夏に暑さが厳しくなるケースがあるのはなぜなのでしょうか。
久保さん「地球の上空を西から東に向かって吹いている、いわゆる『偏西風』の蛇行が影響しています。偏西風が北に蛇行して、北海道付近に暖かい空気が流れ込みやすくなると、暑さが厳しくなります。また、今年のように湿った東風の影響を受けにくく、晴れる日が多い場合も、厳しい暑さをもたらします。
このほか、湿潤な空気が山を越えて反対側に吹き下りる際は、風下側で乾燥した高温の風が発生し、気温が高くなります。こうした現象は『フェーン現象』と呼ばれています。帯広や北見など、北海道東部の内陸部は、フェーン現象により猛烈な暑さとなる日があります。
今年は北海道でも厳しい暑さが続き、北海道における5月1日から8月17日までの熱中症救急搬送者数は2477人と、昨年の同時期(1403人)の約1.8倍となっています。北海道でも早めの熱中症対策が必要です。暑さに慣れていない地域では、より一層熱中症に注意してください」
Q.北海道は9月になると気温が下がりやすいといわれていますが、本当なのでしょうか。それとも、近年は9月以降も気温が高い傾向にあるのでしょうか。
久保さん「近年、気候変動の影響で、9月でも最高気温が30度以上の真夏日を観測するなど、北海道も気温が高い傾向にあるといえます。ただ、本州と比べると、朝晩は涼しくなります。札幌の9月の最低気温の平年値は上旬で16~17度、中旬で14度前後、下旬で12度前後です。一方、東京の9月の最低気温の平年値は、上旬で21~22度、中旬で20度前後、下旬で17~18度です。北海道に住んでいる人や北海道に旅行に行く人は、朝晩と日中の寒暖差で体調を崩さないようにご注意ください。
日本気象協会が推進する『熱中症ゼロへ』プロジェクトの公式サイトでは、熱中症の予防に必要な取り組みについて紹介しています」
Q.ちなみに、ネット上では「夏は北海道よりも沖縄の方が涼しい」という内容の情報があります。北海道と沖縄とを比べた場合、どちらの方が暑さを感じる傾向にあるのでしょうか。
久保さん「気象庁の公表資料によると、札幌、帯広、那覇の8月の気温の平年値は次の通りです」
■札幌の8月平年値 平均気温22.3度、最高気温26.4度、最低気温19.1度、最高気温30度以上の日数4.5日
■帯広の8月平年値 平均気温20.3度、最高気温25.4度、最低気温16.5度、最高気温30度以上の日数5.3日
■那覇の8月平年値 平均気温29.0度、最高気温31.8度、最低気温26.8度、最高気温30度以上の日数28.6日
札幌、帯広、那覇の平年値を見る限り、札幌や帯広より那覇の方が暑いということになります。暑さの感じ方には個人差があるため、北海道と沖縄ではどちらの方が暑さを感じやすいのかについては、回答が難しいです。
今年の7月のように、フェーン現象などの影響で、帯広や北見などの内陸部では最高気温が40度近くまで上がり、猛烈な暑さになるケースがあります。そのため、北海道の内陸部に住んでいる人が夏に沖縄に行った場合、海風が入る沖縄の方がより涼しいと感じることがあるかもしれません。
(オトナンサー編集部)