約3500万年前の巨大小惑星衝突、長期的な気候に影響なさそう

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小惑星のインパクトは思ったよりディープじゃなかったようで。

これまでに幾度も地球の歴史を根底からひっくり返してきた小惑星や隕石の衝突。種の75%を絶滅させるほどのインパクトぶりを見ると、地球の気候なんて軽く変えちゃうんだろうなと思いますよね。

ところが、約3500万年前に地球に衝突した2つの巨大小惑星は、長期的な気候変動を引き起こさなかったことが最新の研究で明らかになりました。

3500万年前に相次いだ小惑星の衝突

約3500万年前に相次いだ(といっても地質学的な時間なので結構間隔は開いてます)小惑星の衝突によって、ロシアのシベリアに直径約100kmのポピガイ・クレーターと、アメリカのチェサピーク湾に直径40~85kmのクレーターが形成されました。地球の歴史上、4番目と5番目に大きなクレーターなのだとか。

ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、学術誌Communications Earth & Environmentに掲載された新しい学術論文で、衝突後の15万年間に、気候が持続的に変化した証拠は見つからなかったと報告しています。

研究チームは、当時の海洋に生息していた小さな殻を持つ有孔虫の化石に含まれる同位体を分析し、過去の気候を推測したといいます。同位体のパターンは、生物が生きていた当時の海水温を反映しています。

衝突後も気候に大きな変化はなし

共同執筆者であるUCL地球科学部のBridget Wade氏は、小惑星の衝突が気候変動の引き金にならなかったことについて、プレスリリースで次のように述べています。

私たちの研究結果で注目すべきは、衝突後も大きな変化がなかったことです。同位体が海洋の温暖化または寒冷化を示すと予想していましたが、そうはなりませんでした。このような巨大な小惑星の衝突が起こっても、長期的には地球は通常通りに機能していたようです。

ただし、これは採取したサンプルの間隔から、1万1000年ごとのデータ解析に基づいているため、数十年や数百年といった短期間の変化は捉えられなかった可能性があります。そして、短期的な影響についてこうコメントしています。

人類の時間スケールで考えると、これらの小惑星の衝突は大惨事です。大規模な衝撃波と津波が発生し、広範囲で火災が起こり、大量の塵が空気中に放出されて太陽光が遮られたことでしょう。

化石が語る過去の気候

研究チームは、メキシコ湾の海底から採取した岩石コアの中から見つかった、約3550万〜3590万年前のものと推定される有孔虫の化石1,500個以上を分析しました。

有孔虫には、海面近くに生息する浮遊性有孔虫と、海底に生息する底生有孔虫が存在します。今回の研究では、両方の同位体を調べたそうです。

その結果、2つの小惑星衝突の約10万年前に同位体の変化が見られ、表層海洋で約2度の温暖化、深層水で約1度の寒冷化が起こったことを示唆していたといいます。しかし、小惑星の衝突前後には、顕著な変化は見られなかったのだとか。

論文の共同執筆者であるNatalie Cheng氏は、長期的な気候への影響が見られなかったことについて、次のようにコメントしています。

チクシュルーブ隕石の衝突が恐竜の絶滅を引き起こしたことから、始新世に起こったこれらの巨大小惑星の衝突が長期的な気候変動をもたらしたのかどうかを調べたいと思いました。結果として、気候に目立った変化がなかったことに驚きました。

今回の研究は、巨大な小惑星や隕石の衝突が必ずしも長期的な気候変動を引き起こすわけではないことと、地球の気候システムが考えられている以上にレジリエントである(耐性や回復力がある)可能性を示しているといえます。

それにしても、小惑星が2つ衝突しても変化しなかった気候を、たった数百年でこんなに変えちゃう人類のディープインパクトぶりが際立ちますね…。

Source: Wade and Cheng / Nature Communications Earth and Environment, University College London

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